2024年、東北大学が「国際卓越研究大学」の第1号に認定された。これは、世界トップレベルの研究大学を目指す国の方針のもと、集中的な支援を受けて日本の研究力強化を牽引する役割を期待されるものである。東北大学の冨永悌二総長は2025年6月5日、「東北大学の挑戦 国際卓越研究大学第1号の認定を受けて」と題しNEW EDUCATION EXPOで基調講演を行った。本記事では、講演内容をもとに、東北大学が描く未来像と戦略をレポートする。
東北大学のDNA「研究第一、門戸開放、実学尊重」
講演の冒頭、冨永総長は東北大学の成り立ちと基本理念に触れた。1907年(明治40年)に設立された東北大学は、「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」という3つの理念を掲げ、1世紀以上にわたり日本の学術研究と人材育成をリードしてきた。
「研究第一」は、東北大学の代名詞とも言える理念だ。常に世界水準の研究成果を追求し続けてきた結果、今回の国際卓越研究大学認定1号に至ったと言える。

「門戸開放」の理念は、1913年(大正2年)に日本で初めて女子学生(黒田チカ、丹下ウメ、牧田らくの3名)の入学を許可したことに端的に表れている。これは、当時の文部省との折衝を経た上での画期的な決定であり、他の帝国大学が女子学生を受け入れるようになる1946年よりも30年以上早い。また、創設初期から多くの留学生を受け入れており、現在では1万7千人の学生のうち約3千人が留学生という国際色豊かな学府となっている。「東北地方というと閉鎖的なイメージがあるかもしれないが、非常にオープンマインドな大学だ」と冨永総長は強調した。