文部科学大臣は2024年12月25日、学習指導要領の改訂について中央教育審議会に諮問した。少子化・高齢化、生成AIなどのデジタル技術の発展を背景に、教育課程の見直しが求められている。
この諮問は、社会や経済の不確実性が増す中で、子供たちが将来にわたって主体的に学び続ける力を身に付けることの重要性が高まっていることを受けたものだ。特に、異なる価値観を持つ多様な他者と対話し、問題を発見・解決できる「持続可能な社会の創り手」を育てる必要性が強調されている。
生成AIなどのデジタル技術は、個人や社会に困難をもたらす一方で、多様な個人の思いや願いを具現化するチャンスも生み出している。生産年齢人口が急減する中、テクノロジーを含むあらゆる資源を総動員し、すべての子供が多様で豊かな可能性を開花できるようにすることが求められている。
また、芸術やスポーツを通じた豊かな心身の育成を含め、地域や社会全体で幸せや豊かさを享受できるよう、教育を通じてウェルビーイングの向上を図ることも重要視されている。
現行の学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」を理念に掲げ、すべての教科を「知識および技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3つの資質・能力の柱で整理している。しかし、学ぶ意義を見いだせず、主体的に学びに向かうことができていない子供が多いことが課題としてあげている。
さらに、GIGAスクール構想による1人1台端末やクラウド環境等のデジタル学習基盤の効果的な活用も緒に就いたばかりであり、デジタル人材育成の強化が喫緊の課題となっている。
このような背景を踏まえ、中央教育審議会では、より質の高い学びを実現し、資質・能力の育成につながる学習指導要領の在り方や、多様な個性や特性を持つ子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方について議論が行われる予定だ。
また、生成AIをはじめとするデジタル技術の発展に伴い、小中高等学校を通じた情報活用能力の向上や、探究的な学びの充実、外国語教育の在り方などについても検討が進められる。
教育課程の実施に伴う教師の負担軽減や、教育DXの推進を含む教育委員会への支援強化も重要な課題として取り上げられている。これらの議論を通じて、初等中等教育の基準等の在り方が見直しが期待される。