情報セキュリティメーカーのデジタルアーツは、GIGAスクール構想における1人1台端末の有償フィルタリング導入状況を調査した結果を発表した。端末更新タイミングでフィルタリング導入が進み、有償フィルタリング導入率は前年度から約5ポイント増の79.7%となった。
文部科学省が発表した「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によれば、小・中・高校で認知されたネットいじめの件数は2万4,678件に上り、過去最多を更新している。また、総務省の「我が国における青少年のインターネット利用にかかる調査」によると、インターネット利用においてトラブルに遭遇した青少年は46%に達している。これらの背景から、フィルタリングソフトを含むセキュリティ対策の重要性が高まっている。
デジタルアーツが2024年9月に実施した1,741教育委員会へのヒアリングでは、GIGAスクール構想の1人1台端末にフィルタリングを導入している教育委員会は97.9%、有償フィルタリングを導入している教育委員会は79.7%に上昇したことがわかった。無償フィルタリングの導入は18.2%、フィルタリング未導入は2.1%であり、前年度と比較してフィルタリング未導入の教育委員会が何らかのフィルタリングを導入したことがうかがえる。
生徒数が3,000人を超える651教育委員会へのヒアリングでは、有償フィルタリングの導入は86.0%、無償フィルタリングの導入は13.1%、フィルタリング未導入は0.9%となった。無償フィルタリングの増加率は低く、有償フィルタリングの増加率が高いことがわかる。
フィルタリング導入増加の要因として、「GIGAスクール構想の実現 学習者用コンピュータの調達等ガイドライン」でフィルタリング機能が必要と明記され、補助金要件となったこと、GIGAスクール構想第2期の端末更新が始まったこと、ネットいじめやネットトラブルに対する意識向上があげられる。フィルタリングソフトの導入は端末更新時に行うことが多く、2024年度が更新タイミングとなった教育委員会が無償または有償のフィルタリングを導入した可能性が高い。
無償フィルタリングと有償フィルタリングの機能差異と課題について、無償フィルタリングはおもにOSに搭載されているフィルタリングを指し、アダルトコンテンツのブロックを目的としているが、ほかの有害情報のブロックには手作業が必要で運用負担が大きい。有償フィルタリングにはDNSフィルタリングも含まれ、Webサイトのすべてのページをアクセス許可するかブロックするかの制限があるため、柔軟な閲覧設定が難しい。
デジタルアーツが提供する「i-FILTER」は、ネットいじめ対策機能や細かな設定ができるフィルタリング製品であり、有償フィルタリング導入済みの教育委員会の中で53%のシェアを獲得している。GIGAスクール構想第2期による端末更新が進む中、さらに有償フィルタリングの導入が期待されている。デジタルアーツは、安全かつ効果的に学習用途として端末を活用できる環境を整えることをセキュリティメーカーとしての責務と捉え、教育現場の現状や課題に向きあっていくとしている。