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理系の5割超、博士課程進学を断念…待遇やキャリアプラン不安

 理系人材の5割以上が「待遇」や「キャリアプラン」に対する不安から、博士課程を選択しなかったことが2024年6月20日、CoA Nexus(コアネクサス)が公開した「博士課程のキャリアパスに関する調査」の結果から明らかとなった。

事例 その他
博士課程を選択しない理由
  • 博士課程を選択しない理由
  • どのような条件を満たせば博士課程に進学していたか
  • 条件を満たした場合の博士課程への志望度
  • 博士課程の学生を増やすための施策
  • 博士取得者のキャリアイメージ(ポジティブな意見)
  • 博士取得者のキャリアイメージ(ネガティブな意見)
  • 博士取得者が活躍するための施策

 理系人材の5割以上が「待遇」や「キャリアプラン」に対する不安から、博士課程を選択しなかったことが2024年6月20日、CoA Nexus(コアネクサス)が公開した「博士課程のキャリアパスに関する調査」の結果から明らかとなった。

 「博士課程のキャリアパスに関する調査」は2024年5月23日~24日、博士課程へ進学しなかった理系大学卒の男女371人を対象にWeb調査で実施した。

 博士課程を選択しなかった理由は、「博士課程を取得することで、良い仕事や収入が期待できなかった」16.1%がもっとも多く、博士人材のキャリアパスの不透明さや不安定さへのイメージが紐づいていることがわかった。

 次に、どのような条件を満たせば、博士課程に進学していたかを尋ねると、「卒業後の良い人材や収入の保証」が27.8%を占め、キャリアパスや未来への不安が先行していることがわかった。また、「博士後期課程での給与支給」20.7%、「国や自治体からの金銭的な助成/サポート」15.8%と続くことから、合計6割以上は、先行きな不透明な時代において、「学生として過ごすキャリア」に関して、投資を行うリスクを感じていることがうかがえる。

 続いて、前問で選択した事項を満たした場合の博士課程への志望度を尋ねたところ、95%が前向きに進学を検討していると回答。この結果から、博士課程に投じる金銭とキャリア形成に関してのバランスを見ていることがわかった。

 博士課程を選択する学生を増やすための施策については、「若手研究者の研究環境改善」「産業界における博士取得者に対する給与等の処遇改善」「博士後期課程での給与支給」といった意見が多く、若手のころからの活躍と研究に打ち込める環境の提供を求めていることがわかった。

 博士取得者のキャリアに関するイメージ調査では、ポジティブな理由1位「高い給与が得られる」に対して、ネガティブな理由1位は「キャリアパスが不透明」に。ポジティブな理由の上位には、研究者だからこそ得られる遠い将来的なポジションへのイメージが顕著にみられた。一方、ネガティブな理由では、就職への不安や若手時代への苦労へのイメージが先行していることが明らかとなった。

 理系学部出身者が考える、博士取得者が活躍するために必要な条件は「キャリアの選択肢の拡充と可視化」「若手の登用を促進する」「就職情報を公開、拡充する」がトップ3に。この結果から、博士取得者が活躍できる環境やポストに関する情報に辿りづけない人が多い、もしくはイメージが定着していることがうかがえる。

 博士人材の人材不足解消には、「研究をすることの利点」にフォーカスした情報発信が必要不可欠であり、そのうえで研究者としての金銭的な支援を行う必要がある。また研究者や博士の入り口となる就職や給与に関する環境整備や、産学連携でのキャリア情報やポストの情報公開など、「透明性があり、魅力的なキャリアパス」を周知する活動が必要といえるだろう。

《川端珠紀》

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