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【クレーム対応Q&A】授業中GIGA端末で遊んでいる

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第168回のテーマは「授業中、GIGA端末で遊んでいる子がいて授業に集中できない」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第168回のテーマは「授業中、GIGA端末で遊んでいる子がいて授業に集中できない」。

GIGA端末の課題は、時と共に変化

 新型コロナウイルスの流行から4年が経ちます。日本中の学校が突如、休校になり、大慌てだった日々は遥か彼方にあるように感じます。コロナはさまざまなことを社会に突きつけました。学校もまたさまざまな変化を求められ、良いか悪いかは別として変化してきました。

 さまざまな変化の中で私はGIGA端末の配備に関しては、非常に良かったと感じています。GIGAスクール構想は、コロナの流行前から進められていた政策でした。コロナの流行によって一気に進みました。コロナの流行がなかったら、現在でも一人一台端末という環境は十分に整っていなかったのではと想像します。

 GIGA端末の導入において、課題は時と共に変化していました。初期の段階では、機器の配置などの関すること、接続(無線)に関することなどが課題でした。そういったものが一段落して、現在は、適切な使い方、機材の故障(破損)、機材の更新などが課題とされています。使い方に関しては、SNSでのいじめ、不適切なサイトの視聴などです。今回のテーマである「授業中、GIGA端末で遊んでいる子がいる」というものもそういったものの1つでしょう。

 今回のようなことが話題となると「デジタル機器は良くない、やはり従来の学び方が良い」という主張をする人が一定数います。変化を良しとせず、現状を維持しようとする人たちです。GIGA端末を教師の管理下に置き、使用方法の制限や使用時間の制限することなどもそういった考えの1つでしょう。

 そのような考え方は間違っていると私は思っています。確かに子供とGIGA端末の関わりに制限をかければ、その状況でのトラブルはなくなる(減る)こととなります。ただ、それは学校という閉鎖的な環境においてのみです。子供は学校から出て、家に帰れば、スマホやタブレット、通信機能のあるゲーム機などを持っています。そういったものが子供の身の回りにあるのが現実です。興味本位から不適切なサイトを見たり、オンラインゲームで課金をしたりというトラブルが小学生でも起こっているのが現状です。

これから必要な学びに取り組むことが大切

 私はもっとデジタル機器(GIGA端末、スマホ、タブレットなど)の適切な使い方について学ぶ時間を取っていくべきだと思っています。先ほども書いたように子供の生活もデジタル機器とは切り離せません。もちろん、彼らが大人になり仕事をする際、ほとんどの仕事でデジタル機器を使うはずです。生きていくうえで必須の道具の使い方について、適切な年齢でしっかりと学ぶことが大切だと思います。

 そういったことを考えると学校で取り組むことの整理が必要でしょう。その際「学校だけでできないこと」と「学校でできること」に分かれます。学習指導要領で規定されているものなどは学校独自で変えることが難しいものです。たとえば、小学校の算数では「そろばん」に取り組みます。もちろん、そろばんは大事なのですが、今の時代、そろばんよりもデジタル機器との関わり方のほうが子供にとっては重要です。そろばんの使い方で人生における重大なトラブルになることは限りなく小さいですが、デジタル機器のトラブルは多くの人で起こり得ます。そろばんの取組みは学習指導要領に記されています。取り組まないと「未履修」で問題となってしまいます。学習指導要領は約10年で改訂されています。今の学習指導要領はコロナ前に作られたものです。学習指導要領はある部分で時代の変化に追いついていないというのが現状でしょう。

 学校独自で取り組むことであれば、何も問題はありません。余剰時数をやりくりすることや総合的な学習の時間を使うことなどです。こういったことは校長の裁量で十分取り組むことが可能なものです。外部の講師を呼ぶこととも良いでしょう。そうやって今の時代に生きる子供達に必要な学びにきちんと取り組んでいくことがこれからの学校においては大切になってくるのだと思います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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