当日は、文部科学省 初等中等教育局長の伯井美徳氏のあいさつから始まり、本会議設置の趣旨について説明された。GIGAスクール構想において児童生徒の1人1台端末の整備が進み、それにともない学校内のデジタル化も進んだ昨今。授業や学習におけるデジタル化だけではなく、事務作業を効率化させるために校務支援システムの導入も進んでいる。しかしながらデジタルとアナログの混在や、学習用と校務用で使用するネットワークが異なることから教員使用の端末が複数台必要になること等、解決すべき点がいくつもあるのが現状だ。そこで本会議では、GIGAスクール構想が進展するにあたっての校務の情報化の在り方、システムのデータ連携の可能性、今後の方向性を検討することを目的とし、第1回目の今回は、現状と学校関係者からのヒアリングを行うとした。
全国公立学校教頭会からの現状報告
続いて全国公立学校教頭会 会長、そして千葉県船橋市立葛飾中学校 教頭でもある長谷川右氏による「校務の多忙化と情報化の現状」の事例が報告された。
まず、学校内でもっとも忙しいとされている副校長や教頭の状況が共有された。通常日の勤務時間が10時以上と回答した割合が全体の94.1%、12時間以上と回答した割合は60.3%だった。過去2年と比較しても長くなっているのが現状だ。そして月の休暇取得日数については1日以上5日未満と回答した割合がもっとも多く50.8%だった。理由のひとつにコロナ対応があげられ、現場対応の大変さが数字から読み取れた。時間と労力を費やしていると感じる職務については全体の93.4%が文書処理業務をあげ、費やす時間も労力も多いと感じていた。疲労やストレスを感じる職務についても70.8%が文書処理業務をあげており、もっとも時間と労力とストレスを感じる職務と言えるのではないだろうか。
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校務の情報化の現状については、授業等で使用する教育用と校務用のパソコンを分けている学校がもっとも多く69.2%。また校務用パソコンについては85.2%がインターネットへ接続をして使用していると回答したが、11.1%がインターネット接続不可の状況で使用しているとの調査結果が紹介された。校務支援システムの導入については進んでいるが、デジタルとアナログの両方を使いながらの作業となるため完全に効率化されたとは言い難い。
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しかし、校務支援システムの導入により、ペーパーレスや教員同士の情報共有、成績管理等には一定の効果があり、働き方改革全般に少しずつ近づいているとした。次のステップへ上がるため、今後の解決すべき課題として教員ごとの意識やスキルの違いがまずあげられ、環境整備だけではなく、ICT支援員の配置を積極的に行う必要があるとした。また、提出や保存は紙媒体で行うといったデジタルとアナログの共存について、そして校務用のパソコンが足りていない学校があることや、セキュリティの観点でいくつもパソコンを分けて使用する必要がある学校もあるという事例も報告された。それに加え自治体間でのルールや温度感も異なることから、全体で統一された情報システムの構築が求められた。
さらに、教頭は副校長と異なり、授業をもっていることから、校務の負担がこのままでは授業研究も十分に行えず、若年層に寄り添う時間も取れず人材育成にまで手が回らない。そして集金業務等においては、電子決済化がなかなか進まないという現状もある。人的配置の増員、環境整備、そして校務のスリム化を求める声が聞こえた。
学校における業務改善は進んでいない
次に全国公立小中学校事務職員研究会 前田雄仁氏より、「校務の情報化の在り方について」として事務職員へ行った調査結果が報告された。
事務職員を対象に2021年12月に行った調査によると、校務の情報化がされていないことにより多忙化を招いている業務があると回答した方が全体の66.2%。具体的な業務としては電話での欠席連絡対応、紙でのおたより配布、現金での評者への支払い等があげられた。ここでも校務系システムと学習系システムの連携、電子決算やペーパーレス化の未整備が要因として提示された。一方で、情報化により負担が軽減されたものもあり、例として成績処置、指導要領や通知票などの作成業務、学校日誌の電子化があげられていた。また、教材やデータの共有ができることで、教育活動や学校経営の質向上に繋がったという声も紹介された。
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次に、校務の情報化における課題として、ここでも教職員の知識や意欲不足やICT支援員の不足、学校内でのシステム連携、自治体での違いや、セキュリティや個人情報の管理強化が提示された。環境の面においては校務系と学習系システムの一体化、教職員の面においては必要性をそれぞれが認識する必要があるとし、事務員の負担軽減のひとつとして共同事務室の活用等があげられた。
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また、学校徴収金における課題として、学校以外で担うべきものであるにも関わらず、学校内で事務職員が担当していることが提示された。学校徴収金は給食費だけではなく、私費会計も含まれていることから、自治体全体での管理システムがあることが望ましい。鳥取市のある自治体では、統一されたものがあるとのことだが、開発に時間がかかることからなかなか進んでいないのが現状だ。また、手数料を誰が負担するのかという点も問題となっていることから、オンライン化への進みは遅いとも言えそうだ。校務の情報化によって業務が効率化されることで生み出される時間で、新たな働きができることを望んでいると締めくくった。
国レベルでの改善を
本会議中、学校徴収金については、学校とオンラインで繋ぐことは考えていないという企業もあることから、学校や自治体独自ではなく国として環境を変える必要があるとの声があがった。また、校務支援システムを導入しても、従来の紙でのルールはそのままであることから、デジタル化を進めるのであれば全体的なルール改善も行うべきだとの意見も。それに加え個人情報の管理についても明確にルールを定めることが求められており、どこまでの範囲をクラウド活用するのかという線引きで迷っている学校も多いようだ。
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また、学校の移動が多い子供に対する話もあがった。転校する子がいるとすると、旧学校から転入先学校への手続きが発生する。指導要領は写しを提出すれば良いが、健康診断表は原本である必要がある。電子データは何が原本なのか、という問題も出てくることから、法律も変えることが求められるともされた。全体的に電子化をするのであれば、使用する場面を想定して、教育委員や自治体レベルではなく国レベルで変えていかなければならないという意見があがった。
実態調査を増やし、どの業務が負担で非効率であるのかをしっかり理解してから議論を進め、現場からのアイディアを今以上に集めることで、よりよい学校環境を作っていける、と学校現場の環境改善に携わる委員は語った。授業が終わってからの時間で行う校務作業。パソコンを開いて作業する時間が少しでも短くなることで、授業準備にあてることができる。そして情報が連携することで教育の質も上がる。学校のICT環境の改善だけではなく、それをとりまく広い範囲での改善を続けていくことが求められるだろう。