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“守る”から変える学びの現場、日本の細やかさに寄り添うSTM

 日本市場参入からわずか2年足らずで、GIGA市場での存在感を高めているSTM goods。EDIX東京2026の会場で、最高執行責任者のファルクナー氏、製品責任者のジェイコブス氏に、ブランドの原点と日本の教育現場にかける思いを聞いた。

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STMの代表シリーズ「Dux(ダックス)」は、オーストラリアで“優等生”を意味する言葉。「Ducks(アヒルの複数形)」とかけて、創業者らをモチーフにしたアヒルのビジュアルが来場者の目を引いていた
  • STMの代表シリーズ「Dux(ダックス)」は、オーストラリアで“優等生”を意味する言葉。「Ducks(アヒルの複数形)」とかけて、創業者らをモチーフにしたアヒルのビジュアルが来場者の目を引いていた
  • STM最高執行責任者のウェイン・ファルクナー氏(Wayne Faulkner/COO)
  • STM共同創設者で製品責任者のアディーナ・ジェイコブス氏(Adina Jacobs/Co-founder, head of product)
  • STMのiPad専用キーボード付きケースは、着脱も簡単
  • 「Inside out design」の設計思想はSTM製品すべてにおいて重視されている
  • EDIXでは、STMの原点でもあるバックパック製品も展示
  • STM創業当時に作られたPC用バッグ

 大人から子供までデバイスを持ち運ぶのが当たり前になった昨今。「端末を守る」だけでなく、教育現場での使われ方から運用まで含めて製品設計を行うブランドが、オーストラリア発のデバイスアクセサリブランド「STM goods(以下、STM)」だ。

 日本市場参入からわずか2年足らずにもかかわらず、GIGAスクール市場において確かな存在感を示している同社。その背景にある哲学とは何か。

 今回、初出展となったEDIX東京2026の会場で、STM最高執行責任者のウェイン・ファルクナー氏(Wayne Faulkner/COO)と、共同創設者で製品責任者のアディーナ・ジェイコブス氏(Adina Jacobs/Co-founder, head of product)に話を聞いた。

STMの代表シリーズ「Dux(ダックス)」は、オーストラリアで“優等生”を意味する言葉。「Ducks(アヒルの複数形)」とかけて、創業者らをモチーフにしたアヒルのビジュアルが来場者の目を引いていた

「プチプチで包んでPCを運んでいた」ことから始まったSTMの原点

--STM創業の背景について教えてください。

ファルクナー氏:1998年当時、ノートPCを持ち運ぶ人は増え始めていましたが、安全に持ち運べるおしゃれなバッグはありませんでした。創業者のイーサン・ナイホルム(Ethan Nyholm)自身も、緩衝材のプチプチにPCを包んでバッグに入れ持ち歩いていました。

 それなら「PCをしっかり保護できて、かつ毎日持ち歩きたくなるようなバッグを自分たちで作ろう」という発想がSTMの出発点です。

ジェイコブス氏:当時は、PC用バッグといえば黒いブリーフケースが中心で、選択肢が非常に限られていました。私はファッション業界出身ですが、日常生活に自然に溶け込むデザインと高い保護性能を両立する製品には大きな可能性があると感じました。STMはこの考えを早くから形にしたブランドだと思います。

Inside out designと信頼性で実現するSTMの設計思想

--創業以来、大切にしている考え方は何でしょうか。

ファルクナー氏:私たちの核にあるのは「Inside out design」です。これは、製品の使われ方やユーザー体験を細部まで深く理解し尽くしたうえで設計するという考え方で、創業時からずっと大切にしています。見た目やスペックから出発するのではなく、「実際にどう使われるのか」を徹底的に把握することが重要だと考えています。

 そのために、ユーザーだけでなく、販売店や製造ラインの工場を含めた自社チームの声にも耳を傾けています。STMの由来は「Smarter Than Most」。私たちは常に、「よりスマートに賢く、問題解決できる製品」を考え続けているのです。

STM創業当時に作られたPC用バッグ

 加えて重視しているのが信頼性です。新しいパーツを採用する際は、耐久試験や落下試験、温度試験などを徹底し、本当に長く安心して使えるかを確認します。進化も重要ですが、それ以上に信頼性は絶対に妥協しません。

-- 「Inside out design」という思想は、製品設計やデザインにどのように現れているのでしょうか。

ジェイコブス氏:デザインは外観だけではありません。製品を“どう使うか”まで含めて設計すること。それがSTMの考えるデザインです。そのために、子供たちや先生方が実際にどう使うかを徹底的に観察します。

 たとえば、教育市場では、「落としても壊れない」だけでは不十分です。充電保管庫に収まるサイズか、管理番号は見やすいかなど、運用まで含めて考える必要があります。さらに、学校現場では大量の端末を扱うため、ケースの着脱に時間がかからないことも重要です。簡単かつスピーディに着脱できることは、運用面で大きなメリットであり、STMではそうした現場の負担軽減にも配慮した設計を行っています。こうした設計の背景には、製品が先生の負担を増やしていないか、日々の学びを妨げていないかという視点があります。 

 また、カラーや見た目も重要な要素ですが、流行をそのまま取り入れるのではなく、長く使えること、誰にでも自然にフィットすることを優先しています。デバイスが生活に溶け込む今、機能性と同じくらい「持ち歩きたくなるデザイン」が重要になっています。

ファルクナー氏:私たちは、製品の開封から装着、日々の使用、保管や管理まで、製品に関わるすべての体験がスムーズであることを重視しています。その全体設計こそがSTMの価値です。

日本の細部へのこだわりと響きあう、STMのものづくり

--日本市場参入のきっかけと、実際に参入してみて感じた日本の教育現場の印象を教えてください。

ファルクナー氏:GIGAスクール構想が始まって、日本でも多くの児童生徒がiPadを使用していると知りました。Appleから「日本市場を見てみないか」という提案もあり、実際にEDIXを訪れたことが大きな転機となりました。そこで目にした日本市場は、細部へのこだわりという点でSTMと非常に親和性が高いと感じました。

ジェイコブス氏:日本では、素材、耐久性、使用条件など非常に細かい部分まで検証が求められます。もともと私たちは耐久試験データを保有していましたが、他国で細かいデータを求められることは多くありませんでした。日本市場への展開にあたり、それらのデータを社外向けに整理したことで、現在では他国でも活用されています。

 また、日本の教育現場からの具体的なフィードバッグも製品改善に大きく貢献しています。たとえば、イヤホンプラグの仕様差への対応や、多様なペンに対応できるホルダー設計などです。

--単なるローカライズに留まらず、日本の教育現場での学びをすべての製品に還元しているのですね。そうした真摯な姿勢が、日本での普及のスピードにつながっているのでしょうか。

ファルクナー氏:はい。どの国においてもフィードバックは不可欠ですが、日本は特にフィードバックに対する感度が高いと感じています。それは製品開発の現場に限った話ではなく、私自身が日本へ来るたびに、日常生活のあらゆる場面において「ここまで考えるのか」と驚かされることが多いのです。

ジェイコブス氏:日本の製品やパッケージは、本当に細かなところまで配慮されていますよね。「使う人がどう感じるか」を非常に丁寧に考えていて、その感覚は私たちの考え方に似ています。私たちはビジネスにおいて、常に学び、常に向上心をもって、日々小さな改善を積み重ねていきたいと考えており、日本の「KAIZEN(改善)」の考え方に強く共感しています。

ファルクナー氏:STMはグローバル全体で、100万台以上のケース関連商品を展開しています。日本のGIGAスクール市場では参入から2年足らず、しかもキーボードケース単体で28万台を突破しました。

 このスピードには私たちも大変驚いています。決して簡単な市場ではありませんが、日本の教育市場が求めている品質や機能と、私たちのものづくりに対する思想が、非常に高いレベルでマッチした結果だと捉えています。

 日本市場において、STMはまだ始まったばかりのブランドです。だからこそ、表面的なイメージを先行させるのではなく、実際に製品を使っていただいた先生や子供たちの声によって、確かな信頼を積み重ねていきたいと思っています。

“プロテクション”で示すSTMの価値とこれからの展開

--今回のEDIXに初出展されましたが、来場者の反応はいかがでしたか。

ファルクナー氏:今回の展示では、多くの来場者の方から「操作性と安心感が両立している」という評価をいただきました。実際に製品に触れていただくだけでなく、落下や負荷を想定したデモンストレーションも交えて紹介することで、日常の中でも安心して使えることを実感していただけたのではないかと思います。

 “毎日ストレスなく使える”という体験こそ、教育現場において重要な価値だと考えています。子供たちは日々端末を使う中で、時には落としたり、思いがけない扱い方をしてしまうこともあります。そうした場面でも、先生方がその都度対応に追われることなく、安心して使い続けられることが大切です。

 STMは創業以来、“プロテクション”を軸にしたものづくりを行ってきました。ただ頑丈であるだけでなく、日常の中でストレスなく使えること、そして長く安心して使い続けられること。その両立こそが、私たちが大切にしている価値です。

ジェイコブス氏:今回のEDIXでは、STMの原点でもあるバックパック製品も展示しました。日本の教育現場で働く方々に、STMのバックパックを紹介できたことを大変嬉しく思っています。

EDIXでは、STMの原点でもあるバックパック製品も展示

 シルエットも含めて、いわゆるPCバッグらしさを抑えながら高い保護性能を備えている点が特徴で、STMらしさを感じていただけたのではないかと思います。実際に手に取った方からは「見た目からは想像できないほど本格的な保護性能で驚いた」といった声もいただきました。

 創業当時にイーサンが抱いた「PCをしっかり保護しながら、毎日持ち歩きたくなるバックパックを作る」という思いは、今も変わらずSTM製品に受け継がれています。デザインと使いやすさを高いレベルで両立していることが、STM製品の価値だと考えています。

--今後、日本の教育市場でSTMはどのような存在を目指していきますか。

ファルクナー氏: 教育市場は、非常に厳しく、高い信頼性が求められる市場のひとつです。だからこそ、実際に使っていただいた方々の声を積み重ねながら、信頼を築いていきたいと考えています。

 GIGAスクール構想によって、日本でも端末は日常の学びのツールになりました。その中で、私たちは「安心して長く使える製品」を提供することが重要です。今後も“プロテクション”を軸に、日本の教育市場に寄り添った製品づくりを続け、「信頼と安心のブランド」として長く愛される存在を目指していきたいです。


 今回の取材で印象的だったのは、「プロテクション(保護)」と「Inside out design」という2つのキーワードだ。STMは単に壊れにくい製品を作るのではなく、ユーザーの使い方や現場での運用を深く理解し尽くしたうえで設計を行っている。子供たちが日常の中で安心して使えること、先生が負担なく運用できることまで見据えたものづくりが特徴だ。

 GIGAスクール構想によって、端末が毎日使う学びのツールとなった今、求められているのはスペックや価格だけでなく、「安心して長く使えるか」という視点だろう。STMの思想は、これからの教育環境において、ますます存在感を高めていきそうだ。

STM Dux guard キーボード一体型ケース USB-C トラックパッドモデル
(iPad A16/第10世代iPad用)日本語配列
《畑山望》

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