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「青森県内すべての児童生徒により良い教育を」次世代校務DXをMicrosoft 365で実現

 青森県では市町村立および県立の学校にMicrosoft 365を導入し、校務DXを推進している。青森県教育庁学校施設課教育情報化推進室の指導主事川口肇大氏と、同、村上咲子氏によるセミナーをレポートする。

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「青森県におけるMicrosoft365を活用した次世代校務DX環境への取組」のようす
  • 「青森県におけるMicrosoft365を活用した次世代校務DX環境への取組」のようす
  • 青森県におけるMicrosoft365を活用した次世代校務DX環境への取組
  • 青森県教育庁学校施設課教育情報化推進室 指導主事 村上咲子氏
  • 整備率の低さが課題だった
  • 特にB地区・C地区・D地区での整備率の低さが顕著
  • 2029年度には全40市町村での導入を目指す
  • 青森県教育庁学校施設課教育情報化推進室 指導主事 川口肇大氏
  • Microsoft 365の導入後の変化

 青森県では「県内すべての児童生徒にとってより良い教育へつなげる」というビジョンのもと、市町村立および県立の学校にMicrosoft 365を導入し、校務DXを推進している。EDIX東京2026のマイクロソフトブースにて開催された、青森県教育庁学校施設課教育情報化推進室指導主事の川口肇大氏と、同、村上咲子氏によるセミナーをレポートする。

市町村立学校の取組みについて

 青森県には40の市町村(10市・22町・8村)があり、6つの地区のまとまりに分かれている。教職員はそれぞれの地区内での異動が主となるため、地区ごとのDX環境整備の格差が生じやすい構造にある。「この地理的・行政的な特性が、後述する校務支援システムの整備遅れの背景ともなっている」と村上氏は語る。

青森県教育庁学校施設課教育情報化推進室 指導主事 村上咲子氏

 「市町村のDX環境における最大の課題は、統合型校務支援システムの整備率の著しい低さだった。2023年度(令和5年度)の文部科学省調査では、全国平均が86.8%であるのに対し、青森県の整備率は54.8%(全国46位)という厳しい状況にあり、2024年度調査においても整備率64.3%・全国47位と、依然として最低水準にとどまっていた。特にB地区・C地区・D地区での整備率の低さが顕著であり、地区間の格差が県全体のDX推進の足かせとなっていた」(村上氏)。

整備率の低さが課題だった
特にB地区・C地区・D地区での整備率の低さが顕著

 こうした状況を打開するきっかけとなったのが、2023年に発足した青森県GIGAスクール推進協議会の担当者会議である。各市町村の担当者が現状を情報交換し課題を把握する中で、整備率がもっとも低かった地区の担当者から「何とかして整備したい」「県で統一したシステムを導入したい」「県で主導してほしい」という声があがり、校務支援システムの県統一への取組みが始まったのだ。村上氏はこの点について「整備率が低かったからこそ、担当者たちの切実で熱い思いが整備率の上昇へつながっていると実感している」と述べ、現場担当者の熱意が原動力となったことが示された。

 具体的な取組みは、2023年度から段階的に進められた。同年には文部科学省委託事業「次世代の校務デジタル化推進実証事業」に参画し、青森県域のロードマップを作成。翌2024年度には企画提案協議を実施し、青森県GIGAスクール推進協議会推奨の統合型校務支援システムを導入した。2025年度には環境構築・運用保守業務のプロポーザルを開始し、今年度から運用が開始された。

 県統一システム導入への参加状況は、2025年度に県の23%にあたる9市町村が参画し、今年度中に11市町村が追加参加して累計50%に達する見込みだ。また、2029年度までには全40市町村での導入を目指している。

2029年度には全40市町村での導入を目指す

 ライセンスについては、当初、ID管理・認証機能であるMicrosoft Entra ID P1の検討から始まった。しかし現場から「業務でWord/Excelを頻繁に使う」「セキュリティを強化したい」「校外勤務・在宅対応を実現したい」「教職員の業務DX化を図りたい」といった要望があがり、2025年度に構築参加の市町村担当者との協議を経て、教育機関向けの総合ライセンスであるMicrosoft 365を基本とする青森県の方針が決定された。ただし、すでにMicrosoft 365ライセンスをもつ市町村については更新時期にあわせて県域テナントへ乗り換えるなど、各市町村の実情に即した柔軟な対応がとられている。

 こうした取組みに対し市町村教育委員会からは、「専門的な仕様書の作成を県が主導して行ってくれるため、学校側の事務負担を軽減できる」「教職員の異動があっても覚え直しが不要」「サポート体制が整っている」といった声が届いているという。一方で、「事務調整、研修会等の際に市町村や学校で単独・独自に動けない」「費用がかかる」といった課題も共有されている。村上氏は「メリットだけでなく、デメリットについても正直に伝えながら、検討を一緒に進めていきたい」と語り、透明性を重視した推進姿勢が垣間見えた。

 今後は随時、Microsoft 365で実現できるセキュリティの構築を推進し、「業務の標準化・効率化」「市町村の連携・平準化」「セキュリティ水準の均一化」を3本柱に据え、2029年度までに全市町村が統一の校務支援システムを導入することを目標としている。

県立学校の取組みについて

 それでは、県立学校での取組みについてはどうだろうか。

 青森県の県立学校は、高等学校46校・特別支援学校20校・県附属中学校1校の計67校で構成される。川口氏によれば、2024年10月に全教職員・児童生徒(教職員約3,700人、児童生徒約2万2,000人)へMicrosoft 365 A3ライセンスを導入した。2024年度当時、青森県のDX環境は全国でも最低水準であったが、A3契約後はクラウド型教育プラットフォームとのシングルサインオン(SSO)開始など、活用が急速に進展したという。

青森県教育庁学校施設課教育情報化推進室 指導主事 川口肇大氏

 たとえば、2025年5月にはフルクラウド型校務支援システムのプロポーザルを実施し、サービス提供企業を選定。同年10月にはMicrosoft 365 A5へのステップアップライセンスに移行した。2026年2月にはWindowsドメインを廃止してEntra IDへ完全移行。3月に統合型校務支援システムのフルクラウド化が完成し、4月にはデジタル採点システムとのSSO開始および、統合型校務支援システムとのSSO・データ連携が開始された。

 特筆すべきはデジタル採点システムと統合型校務支援システムとのデータ連携だ。統合型校務支援システムに登録された学籍・教職員情報は、デジタル採点システムと自動連携されるため、教員が個別に設定をする必要もない。川口氏は「採点したデータをそのままダウンロードして無加工で統合型校務支援システムに取り込むことができる試みが、現場で好評を博している」と述べた。

 このように、Microsoft 365の導入は、学校現場に多方面にわたる変化をもたらしている。常に最新のOfficeアプリが使用できること、Teamsでのコミュニケーション向上により出張がほとんどなくなりWeb会議が当たり前になったこと、レコーディングや文字起こし機能の活用も進んでいる。

 さらに、オンプレのWindowsドメインからEntra IDへの移行によって、Autopilot効果で設定作業が大幅激減したほか、オンプレメールサーバーの廃止によるExchange OnlineやSharePoint Onlineへの移行、WSUS(Windows Server Update Services)からIntune管理への移行(Windowsアップデートのリング化によるトラフィック軽減)などのさまざまな施策により効率化が進み、作業負担の軽減という効果が現れている。

Microsoft 365の導入後の変化

 中でも「職員間や学年単位、部活動など、多様な組織単位でチームを作りTeamsが活用されるようになった。この点は特筆すべき変化だ」と川口氏は指摘する。

 また、Copilot Chatについても、探究授業での具体的な活用例をあげながら、情報の精度や詳細さの違いを説明した。さらに、「テナント内でデータが保護されているという安心感が、Copilot Chatの積極活用を後押ししている」と述べた。

 なお、セキュリティ面では、Microsoft 365 A5を基盤とした多層防御体制が構築されている。文部科学省『教育情報セキュリティポリシーハンドブック(令和7年3月版)』に基づく必須要件技術の大半はA3で対応可能だが、リスクベース認証やEDR(Endpoint Detection and Response)など、導入が望ましい高度な要素技術についてはA5の導入により実現している。A3と他社製品との組みあわせかA5単独での対応にするかについては、コスト面と専門性の両面から慎重に比較検討した結果、A5をベースにすることを決定したという。

 さらに、インターネット通信を検査・制御するセキュアWebゲートウェイ(SWG)として「Microsoft Entra Internet Access」を別途契約し、条件付きアクセスをネットワーク層まで拡張している。

 川口氏は、端末の紛失により第三者に渡り不正使用されるという現実的なリスクを例にあげ、「教職員のMicrosoft 365アカウントであること(ID)、県が教職員に配布したIntune登録端末であること(デバイス)、学校のIPアドレスからのアクセスであること(ネットワーク)に加え、SWGであるEntra Internet Accessを経由した通信であるという3つを必須とし、ID・デバイス・ネットワークの複数条件を掛けあわせることで、たとえ端末が外部へ流出しても容易にはアクセスできない、多層的なアクセス制御を実現している」と説明した。

Microsoft 365 A5のセキュリティ機能の使用

 県立校では、2026年度中に新たに約1,800台のWindows端末を更新し、Windows Hello(顔認証)対応を進めている。川口氏は「Windows Helloによる顔認証でのログインが今後の主流になっていく」と語っており、生体認証との連携によるさらなるセキュリティ強化が見込まれる。

 Microsoft 365の運用における今後の課題としては、SharePointの自動設定などの秘密度ラベルの運用、OneNoteの利用促進、Copilot Chatの利用促進と実践事例の収集、教職員アカウント管理の効率化、校外からの利用時の制度整備があげられた。特に校外からのアクセス環境が整ったことで、川口氏は「コロナ禍のようなことがまたあったときに、自宅から仕事ができる環境を整えていきたい」と語り、教育現場においても在宅・遠隔対応の整備が今後の重要テーマとなっていることを示唆した。

 運用体制について川口氏は、「当初は担当1人でテナント設定からアカウント管理まですべてを行っていたが、Microsoft 365への全面移行を機に外部委託の体制を構築した。現在は、アカウント管理、Intune設定、条件付きアクセス設定、SharePoint設定に加え、ヘルプデスク体制も整備している。またSOC(Security Operations Center)サービスも契約し、Microsoft Defender XDRのアラートを専門業者が監視・対応する体制を整えている」と説明した。さらに、「本格稼働直後からセキュリティ監視の実効性が確認されている」と現在の状況を述べ、セミナーを終了した。


 青森県教育庁による本発表は、統合型校務支援システムの整備率が全国最低水準という深刻な課題を抱える中で、GIGAスクール推進協議会という「場」を活用し、現場担当者の切実な声を起点に解決へと動き出した事例である。具体的には、県主導の共同調達と統一ロードマップの策定により市町村側の整備を推進するとともに、県立学校ではMicrosoft 365をA3からA5へステップアップし、フルクラウド型校務システムの実現、Entra IDへの完全移行、条件付きアクセスによる多層的なセキュリティ構築を短期間で達成している。これにより、市町村・県立双方における包括的なDX転換の実態を示した、きわめて示唆に富む事例であった。

 両氏の発表に共通するのは「コストやデメリットも正直に伝えながら進める」という誠実な姿勢と、「青森県内すべての児童生徒にとってより良い教育へつなげる」という一貫した目的意識である。ICT整備や業務効率化・セキュリティ強化という手段が、最終的に教育の質向上に結び付くという視点は、全国の教育DX推進に対して重要な示唆を与えるものといえる。


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