科学技術振興機構(JST)は2025年5月27日、「次世代科学技術チャレンジプログラム(STELLAプログラム)」の2025年度採択機関を発表した。小中型に同志社、高校型に埼玉大学、小中高型に神戸大学の計3件を採択した。
次世代科学技術チャレンジプログラムは、グローバルサイエンスキャンパス(おもに高校生が対象、2014年度開始)とジュニアドクター育成塾(小中学生が対象、2017年度開始)を発展的に統合し、2023年度より新たに開始した事業。科学技術・イノベーションをけん引する次世代の傑出した人材を育成するため、初等中等教育段階(小学校高学年~高校生)において理数系に優れた意欲・能力をもつ児童生徒を対象に、その能力などのさらなる伸長を図ることを目的とする。
探究活動、STEAM教育、アントレプレナーシップ教育、国際性の付与などの高度で実践的な取組みをはじめとした、実施機関や地域などの特徴を生かした多様で挑戦的な取組みを支援する。支援期間は最長5年間、支援金額(上限)は1年あたり1,000万円~4,000万円。
2025年度の募集は、2025年1月22日から2月27日の期間に行い、対象とする児童生徒の学年段階により小中型、高校型、小中高型の3つの申請タイプに分けて募集し、計19件(小中型5件、高校型8件、小中高型6件)の応募があった。その後、外部有識者で構成される委員会にて審査し、その結果をもとに同志社、埼玉大学、神戸大学の計3件(小中型1件、高校型1件、小中高型1件)の採択機関を決定した。
同志社は「同志社ジュニア・クリエイティブ科学アカデミー~創造の丘から世界へ~」という企画で、小中型として採択された。この企画は、独創的な科学技術を生み出すだけでなく、豊かな国際社会の実現に向けて挑戦する倜儻不羈(てきとうふき:才気に優れ、独立心旺盛、常識にとらわれない)なる人物の育成を目的とする。第1段階では、企業と協働して世の中のさまざまな科学と文化のつながりを知り、第2段階では自ら選んだ分野で「失敗や間違いを恐れずに」大学や企業で研究を行う。学生サポートスタッフや他の受講者、企業研究者との交流を通して「科学の世界のコミュニケーション」も経験し、将来、自立してグローバルに活躍できる「尖った研究者」のタマゴを養成する。
埼玉大学は、高校型「ハイグレード理工系(高校生)グローバル人材育成プログラム」として採択された。このプログラムは、理工系分野に強い好奇心と学習意欲をもつ高校生を発掘し、独創的発想力、国際的視野、高い情報発信力をもつ人材へと育てることを目的とする。1年目にベーシックコースとして40名の受講生を選抜のうえ受け入れ、毎月1回の講義・実習、留学生とのワークショップ、研究立案研修などを実施し、レポート作成や討論会、発表会を通し情報発信力を育てる。2年目にアドバンストコースとして10名を選抜し、同大教員を指導者とし課題研究を行う。さらに、海外短期研修の機会を通じて研究者の国際的多様性や科学のグローバル性の視点を養う。留学生との討論や研究発表の機会も設け、能力に応じて英語での口頭発表や論文作成の過程も修得する。
神戸大学(共同機関:兵庫県立大学、関西学院大学、甲南大学、神戸薬科大学)は、小中高型「科学技術みらい開拓人材育成プログラム:Nurturing Future Innovators in Hyogo」として採択された。このプログラムは、豊かな自然と先端的研究機関や企業が集積する兵庫県の環境を生かし、将来、科学技術で革新を生み、人類社会の未来を開拓してゆける人材の育成を目指す。育成プログラムは小中学生対象のJunior Stage(JS)と、高校生等対象のSenior Stage(SS)から成り、JSでは創造性、論理的思考力、表現力、SSでは課題設定力、科学的探究力、国際性を含むコミュニケーション力、また両者を通じてアントレプレナーシップなどを育む。プログラム前半は講義、実習、フィールドワーク、研究機関の見学・訪問などを行い、後半では大学教員の助言などを受けながら、受講生が自ら設定した課題の探究や研究に取り組む。
JSTは、科学技術・イノベーション政策推進の中核的な役割を担う国立研究開発法人であり、次世代科学技術チャレンジプログラムを通じて、科学技術を支え、未来へつなぐための人材育成に取り組んでいる。