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避難訓練をアップデート…全国展開に向け4団体が協力

 NPO法人減災教育普及協会は2025年1月14日、日本大学危機管理学部、神奈川歯科大学歯学部総合歯学教育学講座、一般社団法人AR防災と共に、「避難訓練をアップデートする!」事業を開始した。4者は包括連携協定を締結し、全国の教育・保育施設における避難訓練の抜本的な改革に乗り出す。

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(左から)AR防災代表理事の板宮晶大氏、減災教育普及協会理事長の江夏猛史氏、日本大学危機管理学部学部長の福田充氏、神奈川歯科大学歯学部総合歯学教育学講座教育学分野長の板宮朋基氏
  • (左から)AR防災代表理事の板宮晶大氏、減災教育普及協会理事長の江夏猛史氏、日本大学危機管理学部学部長の福田充氏、神奈川歯科大学歯学部総合歯学教育学講座教育学分野長の板宮朋基氏
  • こども園でのYURETAを使った減災教育
  • 東日本大震災・気仙沼市天井崩落(出典:宮城県総務部管財課)

 NPO法人減災教育普及協会は2025年1月14日、日本大学危機管理学部、神奈川歯科大学歯学部総合歯学教育学講座、一般社団法人AR防災と共に、「避難訓練をアップデートする!」事業を開始した。4者は包括連携協定を締結し、全国の教育・保育施設における避難訓練の抜本的な改革に乗り出す。

 この事業は、災害の実態にあわせたツールを活用し、日本大学附属施設をモデルとして、避難訓練法や指導方法の教育効果についてのエビデンスを蓄積することを目的としている。指導者向けの指導マニュアルなども整備し、全国に普及展開するための基盤づくりを進める。学生や生徒を指導者として育成し、大学と地域、中学・高等学校と保育園・幼稚園・小学校の学びの地域内循環を構築することを目指す。

 この取組みの背景には、1995年の阪神・淡路大震災以降、わが国が地震活動期に入ったとされることや、地球規模の気候変動による水害の激甚化・頻発化が予測されることがある。こうした災害多発時代を生き抜くために、教育・保育施設で実施されている避難訓練を見直し、災害の実態に即した訓練を行うことが求められている。

 避難訓練は、幼児期から繰り返し経験する体験型の防災教育であり、日本人の多くが避難訓練を通して災害のイメージを形成している。この初期の経験が、いざというときの行動に大きな影響を与えるため、避難訓練をアップデートすることは、国民全体の防災意識を底上げし、より効果的な防災教育へとつながる。

 しかし、教育・保育施設の現場は大変忙しく、新しい取組みを取り入れることが簡単ではない。それでも、避難訓練はどこの施設でも必ず行われており、最低でも年に3回程度、多いところでは毎月訓練が行われている。全国の教育・保育施設の避難訓練を実践的で効果的な内容にアップデートすることができれば、大きな被害軽減につながると考えられている。

 大きな災害ほど発生頻度が低いため、経験を通して学習することが困難である。そのため、災害を疑似体験できるツールが重要となる。減災教育普及協会が開発した避難訓練に特化した紙芝居「がたぐら」やどこでも地震体験マット「YURETA(ユレタ)」、神奈川歯科大学板宮朋基教授が開発したAR・VRアプリ「Disaster Scope」は、リアリティをともなった災害疑似体験が可能である。

 2025年度は、日本大学認定こども園において、幼児期の子供たちへの避難訓練の提供を行うとともに、佐野日本大学高等学校の全教員を対象に、これまでの避難訓練の意識を変えるための研修を実施する。幼児期の子供たちへは、継続的な避難訓練の実施およびデータの蓄積や教育効果などの検証・改善を行うこととし、小学校高学年から高校生までは教員への研修を重ねるとともに、生徒を対象とした避難訓練を実施できるよう4者が連携協力しながら事業を展開する。

 減災教育普及協会は、これらのモデル事業を通じて得られたエビデンスと知見をもとに、全国の教育・保育施設向けの標準的な避難訓練法を確立し、普及させていく予定である。この取組みにより、従来の形骸化した避難訓練を刷新し、災害多発時代を生き抜く力を子供たちに育むとともに、日本の防災教育全体の底上げを目指す。減災教育普及協会は、より安全で災害に強い社会の実現に向けて大きく前進する。

《神林七巳》

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