東京都教育委員会は2024年9月19日、2025年度（令和7年度）東京都立高等学校入学者選抜検討委員会報告書を公表した。第一次募集の追検査やインターネットを活用した出願・合否照会などは、2025年度入学者選抜でも継続して実施。通信制課程の選抜日程の分割、不登校経験のある生徒に配慮した調査書の取扱いなどは、引き続き検討を進めるとした。
報告書は、東京都教育委員会が2024年5月に設置した「令和7年度東京都立高等学校入学者選抜検討委員会」が、2024年度（令和6年度）入学者選抜を検証し、2025年度以降のあり方を検討した結果と改善の方向性を取りまとめたもの。
新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行を踏まえたおもな対応として、推薦に基づく選抜の集団討論は、2024年度入学者選抜と同様に必要であると判断した学校が実施できるようにする。文化・スポーツ等特別推薦では、2024年度入学者選抜から受検者同士の接触をともなう実技検査の実施を可能としたことを踏まえ、2025年度入試では「実績等を証明する書類等の写し」の提出を求めない。
追検査は、第一次募集の検査当日に新型コロナウイルス感染症を含むインフルエンザ等学校感染症に罹患した者、学校保健安全法第19条により中学校長が出席停止の措置を行った者、月経随伴症状の者や痴漢被害者、やむを得ない入院等で受検できなかった者などに受検機会を確保するため、2025年度入学者選抜でも継続して実施。追々検査は、前年度に引き続き、2025年度入学者選抜では原則行わない。
インターネットを活用した出願と合否照会は、受検者の利便性が高いことから、システムの利便性の向上に係る改修を実施しつつ、継続して実施する。
2024年度入学者選抜まで用いていた「特別措置」の名称は、「受検上の配慮」に変更。中学校からの申請に基づき、受検者の障害の状況等を踏まえた配慮を引き続き実施する。学力検査におけるICT機器の活用については、実施上の課題を整理したうえで、実施できるよう引き続き検討。学力検査問題におけるUDフォントの導入については、早期に導入する方向で進める。
在京外国人生徒対象の選抜については、日本語指導が必要な日本国籍の生徒の増加が見込まれることから、応募資格では、これまで外国籍を有する者に限定していた国籍要件を撤廃し、日本語指導が必要な日本国籍の者の応募資格を認める。また、「ルビ付問題・辞書持込み」の申請要件は、在京外国人生徒等対象の選抜の応募資格にあわせる方向で進める。
通信制課程については、4月第1週に実施している現行の学力検査等の選抜日程は、都立高校の通信制課程を主体的に選択する生徒にとって必ずしもニーズに合致しているとはいえないことから、前期選抜として4月よりも早い時期に設定し、4月の入学者選抜を後期選抜として定員を一定数確保して実施する方向で検討する。
受検者に複数の受検機会を確保し、都立高校を志望する者へのセーフティネットの役割を果たすために1998年度（平成10年度）入学者選抜から導入している分割募集は、かつての役割はおおむね終えているという実態があることから、全日制高校の分割募集を廃止する方向で検討。一方、昼夜間定時制高校の分割募集は、多様な生徒の受検機会の確保という観点から、継続して実施する方向で検討する。
専門学科の選抜方法については、専門学科への志願者や応募倍率が低迷する中で、入学者選抜でも専門学科としての特色を十分打ち出すことが重要であり、各高校のスクールポリシー（期待する生徒の姿など）に基づく選抜方法の検討が必要であることから、一律5教科ではなく、各高校の特色やスクールポリシーに応じて学力検査を実施する教科を設定できるようにする方向で引き続き検討を進める。
入学者選抜における調査書の取扱いについては、不登校経験のある生徒等が心理的負担を感じることなく都立高校を受検しやすくするため、全日制の普通科等の入学者選抜でも、学力検査の得点と調査書点の比率を7対3としている現行の比率についての取扱いや、比率を変更する場合の募集人員の設定・規模等について引き続き検討を進める。
報告を踏まえ、2025年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目において詳細を定めた。通信制課程の選抜日程、分割募集のあり方、専門学科の選抜方法、入学者選抜における調査書の取扱いについては、引き続き検討を進めていくとしている。
