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【クレーム対応Q&A】前の学校のことばかり言わないでほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第125回のテーマは「前の学校のことばかり言わないでほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第125回のテーマは「前の学校のことばかり言わないでほしい」。

教員にとって異動は最大の研修

 教員は一定の年数をその学校で教えると、異動することが一般的です。例外としては私立学校などです。私が勤めていた横浜市では、その当時は、初任者はその学校にいることができる年数が3年から6年と決まっていました。2校目以降は最大が10年となっていました。私の場合、初任校に6年、2校目に8年、3校目に8年という感じでした。

 異動が一般的である教員の仕事において注意すべきことが「前の学校のこと」です。異動にはプラスの面がたくさんあります。「教員にとって異動は最大の研修」とも言われます。環境が変わることで、それまでの自分の教育実践などを振り返る良い機会となります。

 学校を異動すると、さまざまな発見があります。学校という基本的な仕組みは同じなのですが、細部が色々と違っています。同じ行事をする際もそれまでの流れなどが違うことはよくあることです。同じ役割の仕事であっても、呼び方が違っており、戸惑うこともよくあります。

 私は2校目から3校目に移る際、県をまたいだ異動となりました。神奈川県横浜市から埼玉県深谷市への異動です。家族で転居する都合があったので、採用試験を受け直しての異動でした。隣の市に移るだけでも色々な違いがあるのですから、県をまたいでの異動は変化も大きかったです。

つい口に出してしまう「前の学校は…」

 こういった異動の際、教員がつい口に出してしまうフレーズが「前の学校は…」です。新しい学校と前の学校の違いがよく見え、もっと合理的なやり方があるのにという思いからの発言です。多くの教員は前任校に思い入れがあります。思い入れが強くなかったとしても、慣れているという事実があります。そういった状況において「前の学校は…」というフレーズが出てきます。

 この言葉は、そのまま受け取れば「もっと良いやり方があるのに…」というものです。ただ裏側を考えると「この学校のやり方は良くない」という少し批判的なものとなります。新しい学校の中で仲間もあまりおらず、仕組みなどにも慣れていない中でそういった想いが募って出てきた言葉になります。

 先ほども書いたように教員が動くことは変化を生じさせます。他の学校での良い実践をその学校に持ち込むという意味でも良いことです。ただ、そういったものが行き過ぎとなり「前の学校では…」という言葉が周りから苦々しく思われるようであれば、それはマイナスでしょう。

前の学校・クラスと比較することの弊害も

 教員間ではこういった言葉をあまり言わないように注意していても、つい油断をしてしまうのが子供達に対してです。多くの授業で教師は1人です。他の教員がいないこともあり、子供を叱咤激励しようとして「前の学校では…」という言葉を使いがちです。言われている子供は、何度もそういったフレーズが出てくると「またかぁ…」という思いが強くなります。本来、教師が伝えたいものが伝わりにくくなってしまいます

 異動した教員以外でも似たようなことで注意した方が良いフレーズがあります。それは「前のクラスでは…」というものです。3月までに担当していたクラスの子供達と比べての発言です。それも叱咤激励の気持ちからであることが多いのですが、言われる子供はそうとは受け取らないことも多いです。注意が必要でしょう。

本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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