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【クレーム対応Q&A】給食時間が短すぎる

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第153回のテーマは「給食時間が短すぎる」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第153回のテーマは「給食時間が短すぎる」。

学校での1日のスケジュールが多忙に

 新型コロナウイルスによって学校での活動のやり方が変わったものがいくつもあります。そういったものの1つに「給食」があります。2020年、2021年には、感染予防の観点から黙食が推奨されました。その後、コロナの社会的な位置付けが変わり、学校での給食のようすにまた変化が生じてきています。そういった中で話題になっているものが「給食の時間が短い」というものです。

 学校は取り組む内容が多くなり、色々な部分でバランスが崩れてしまっているように見えます。給食もそういったものの1つと言えるのかも知れません。学校の一日のスケジュールを見直した時、授業時間などを確保するために削る候補として挙げられることが多いものは「給食時間」「休み時間」です。昭和のころの学校と比べると学校が全体的に忙しくなっており、そういったことも関連し、給食の時間が短くなってしまっているのが現状です。

給食時間が短いことで食べ残しも

 給食の時間については色々なところが調査や研究をしています。広島県三原市教育委員会が中学生に行った給食に関するアンケートでは、47%の生徒が「全部食べられていない(食べ残しがある)」としており、その理由を尋ねると28%が「食べる時間がない」と回答しています。また、埼玉県加須市における小学生、中学生を対象とした調査では、「時々残すことがある(27%)」、「いつも残している(13%)」となっており、残し理由について聞いた所、1位は「苦手な食べ物があるから」、2位は「量が多い」、3位は「食べる時間が短いから」となっています。

給食の時間をしっかりと確保することは大切

 アメリカのイリノイ大学の研究では「実験では給食時に着席時間を20分間確保することで、子供たちの野菜と果物の摂取量が増え、残量が減った。20分間の着席を遵守することによって、子供たちの食事の質が向上する可能性がある」とされています。アメリカの小児科学会と疾病対策センターは子供の給食に最低でも20分充てることを推奨しています。

 国内外の色々な調査や研究にもあるように給食の時間をしっかりと確保することは大切です。栄養摂取の面からは、残量が減ることは良いことです。学校給食実施基準は、子供が給食をすべて食べる(完食する)という前提で算出されているものであり、実際の栄養の接種状況には残食量が大きく関連しています。

 給食時間の確保は、学校全体のスケジュールとも関係のある問題です。給食の時間を増やすことは、どこかの時間を削るか、もしくは下校時間を遅くする(登校時間を早くする)ことになります。しっかりと食べる時間を確保するためには、学校全体(保護者も含め)でその重要性を意識していく必要があります。

 そこで、学校でこれまで当たり前に取り組んでいたものを変えていくというやり方をしても良いのではと私は考えます。たとえば、私は「掃除時間」を大幅に減らし、その分の時間を給食の時間や休み時間に振り分けるのはどうかと思います。私が勤めていた小学校では掃除時間は15分から20分でした。多くの学校が似たようなものだと思います。その時間を「5分」などに変更し、その時間でできる掃除のやり方に変えるのです。浮いた15分を有効に活用することができます。週に一度は「ロング清掃タイム」などの名称で20分程度の掃除をするということを加えることで、全体としての清潔さは保てるのではと思います。

 学校で取り組まれるものはどれも「大事」で、「子供のためになる」ものです。そういったものの中で「より重要なものは何か」という「優先度」を考えることが必要でしょう。肥大(ビルド アンド ビルド)した学校教育活動を少しスマートにしていく必要があります。そのためにはこれまでの考えを踏襲するだけでなく、まったく違った考え方も必要でしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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