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【相談対応Q&A】マスク着用の方針を学校で統一してほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第119回のテーマは「マスク着用の方針を学校で統一してほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第119回のテーマは「マスク着用の方針を学校で統一してほしい」。

マスクを外す・着用を強制することは難しい

 卒業式の季節が近づいてきました。卒業式について、2月10日に文部科学大臣から「卒業式ではマスクを外すことを基本とする」という発表がありました。そういったことと関連し、学校に「マスク着用の方針を学校で統一してほしい」と連絡がある場合があります。学校としては色々と悩むところです。ただ「マスクを外すこと」も「マスクを着用すること」もどちらも全員に強制することは難しいことです。

 約3年前に一斉休校になり、その後、学校が再開される中で「マスクの着用」を強く求めました。マスクを着用することには合理的な理由があり、リスクはほとんどありませんでした。しかし、マスクを外すことについては、リスクが考えられます。自分自身がコロナに罹患したくない、家族にも移したくないという思いが強い子供もいます。ニュースでも、マスクを外すことに抵抗感を抱く子供が一定数いることを報じています。

 「子供がマスクをしているのはかわいそうだ」という主張をする人がいます。ただこの主張はすべてが正しい訳ではないでしょう。先ほども触れたように一定数の子供がマスクを外すことに抵抗を感じています。感染のリスクに関することだけでなく、マスクをしている生活が当たり前になった状況をあえて変えることに抵抗を感じている子供もいるのでしょう。

 はじめに書いたように「卒業式ではマスクを外すことを基本とする」というやり方で卒業式等を行う際、いくつかの配慮が必要になってきます。その1つはマスクを着用している子供がいじめられたりすることがないような配慮です。

家庭で親と子供が相談のうえ決めていく

 学校が家庭へ出す卒業式に関する通知では、文科大臣の発言等を踏まえ、「卒業式ではマスクを外すことを基本とします。家庭で判断し、対応してください。」という形になると思われます。学校の役割や家庭の役割を考える良いチャンスになると思います。「家庭に高齢者が同居をしており、感染のリスクを下げたいからマスクを着用する」という家庭の判断もありますし、「もうマスクは外して良い」という家庭もあると思います。そういったことを家庭で親と子供の相談のうえ、決めていくことになるでしょう。

 これまでの日本の学校では「一律に決めていく」ということが多かったです。昨今話題になっている「校則」はその象徴です。昭和の時代には、工場等で働くことを想定し、皆が同じリズムで揃って取り組むこと等が求められ、学校のそういったものの影響を強く受けていました。学校がルールを定め、それに従うことが良い子供とされていました。

 現在は色々な点で社会状況が変化してきています。多様性を認め合う社会でもあります。一律に決めるのではなく、個人の判断等が以前よりも重視されるようになっています。今回のマスクの件も、学校としては「外すこと」も「着用すること」も強制ができない状況です。それぞれの家庭でしっかりと考えていくことです。

 マスクと関連し「学校に行かない」選択をする子供の可能性も考えておく必要があります。これは今の時期になって急に出てきた問題ではなく、以前からもあったものです。コロナへの感染が不安で学校へ行くことができないというものです。学校がマスクを外す方向へ舵を切ったことで、これまでとは違った形で学校への抵抗感を抱く子供が出てくる可能性があります。そういったことへの配慮も忘れずにいたいです。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談の他、保護者が学校へ伝えた相談等、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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