学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第106回のテーマは「答えが合っていても教師が教えたやり方でないと不正解になった」
漢字の書き順等は柔軟に対応
テストの採点において、答は合っているのにやり方等が間違っていることで不正解になるということがあります。もちろん、いい加減なやり方や勘でやったら合っていたというようなものは不正解でもよいと思います。難しいのが授業でやったやり方の一部を省略した場合や教師が教えたやり方とは違うけれどもそれなりに合理的なやり方の場合等です。
たとえば、漢字に関すること等が時折問題とされます。漢字テスト等で細かい部分の正誤に関する問題です。文科省のWebサイト等を見ると、漢字の書き順等については、柔軟に対応するようにと示されています。現在の国語の教科書で示されている漢字の書き順は「書き順が複数存在するもの」や「時代等によって変化しているもの」もあります。そういったことを考えると、書き順は「必ずそのやり方でなければならない」ということではなくなってきます。学習指導要領においては、小学校の低学年においては「筆順」という用語が出てきますが、中学年、高学年では「筆順」という言葉は記されていません。
また、漢字の書き順と似たものに「とめ」「はね」「はらい」等があります。これらも漢字の筆順と同じような扱いです。文化庁の「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」によると「長短、方向、接触の有無、はらうか、とめるか等の違いはあっても、骨組みは共通しているため、いずれも同じ漢字として認められる。…字形の違いが字体の違いにまで及ばない限り、特定の字形だけが正しく、他は誤りであると判定することはできない。」とあります。「はねているか」「はらっているか」だけで正誤を判断するのではなく、全体を見て判断すべきだということです。
算数の「掛け算の順番」問題
算数の「掛け算の順番」もその扱いが揉める場合があります。たとえば「8人にりんごをあげます。1人に6個あげます。全部でりんごは何個になるでしょう?」という問題についてです。この場合、「8×6」なのか「6×8」なのかというものです。「掛ける数」と「掛けられる数」の関係から順番が決まってくるという考え方があります。ただ「8×6=6×8」ということも正しいこととして教科書に載っています。そういったことを踏まえると明確な答えが出しにくくなります。
「柔軟に対応」と「ルールに則って対応」を分けて考える
ただ、決められたやり方でないと成り立たないものがあることも事実です。小学校の教科では「算数」「理科」等の自然科学系のものは、一定のルールに従っているものが多いです。子供が育つ中では、そういった合理的な方法を学ぶ必要もあります。教える立場の教師としては「柔軟性を持って対応すべき内容」と「一定のルールに従って対応すべき内容」を分けて考えることが大切でしょう。頑なに一つのやり方の固執するのではなく、バランス感覚を意識しながら取り組んでいくことが求められるでしょう。
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