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大人の学びが子どもたちの未来を創る、マイクロソフトが示す「新たな学校」とは

 2022年5月11日(水)~13 日(金)に第13回教育総合展 (EDIX)が開催された。マイクロソフトが展示した「あなたの学びが未来を創る」のブースのようすをレポートする。

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大人の学びが子どもたちの未来を創る、マイクロソフトが示す「新たな学校」とは
  • 大人の学びが子どもたちの未来を創る、マイクロソフトが示す「新たな学校」とは
  • 「新しい学校」をイメージしたマイクロソフトのブース
  • マイクロソフトのフレキシブルワーク
  • ブース内でも働き方改革につながるツールを展示紹介
  • セミナー「電話番撲滅!学校の代表電話がTeamsに」
  • 学校の代表電話をTeamsに割り当てることが可能
  • 手元のPC、タブレットで電話に対応可能
  • 対応時間外の自動応答のイメージ
 第13回教育総合展(以下、EDIX)が、2022年5月11日から3日間にわたって東京ビッグサイトで開催された。今回のEDIXでは、GIGAスクール構想による1人1台端末の整備を超えて、一層の学校デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)と子供たちの学びの進化に多くの期待が寄せられ、さまざまな教育関連企業の取り組みを紹介した会場は賑わいを見せていた。

 「あなたの学びが未来を創る」をテーマにブースを展開していた日本マイクロソフト。「あなた」とは先生や教育関係の人たちといった私たち大人、その大人たちの学びが子供たちの未来を創るというコンセプトだ。また、ICT環境を整えることで、子供たちや先生は教室や自然の中等、どこであっても学びや仕事を続けられる。そうした状況をブース内で表現し、会場の黒板やオンラインセミナーの画面は竹や樹木で囲まれ、自然の中にある「新しい学校」をイメージ。ソーシャル・ディスタンスを確保したオンラインセッションや少人数の個別授業が展開されていた。

「新しい学校」をイメージしたマイクロソフトのブース
「新しい学校」をイメージしたマイクロソフトのブース

 3日間にわたり多様な出演者によって実施された各回15分のセミナーは20種類を超え、マイクロソフトが自ら推進してきた働き方改革の紹介や校務の効率化、新しい学びの実践、セキュリティの構築等と充実していた。また教育用に特化して開発された「Surface Laptop SE」をはじめとしたSurfaceのラインアップが出揃ったコーナーもあり、実機を体験できた。個別授業のコーナーでは、先生役の社員が、先生の働き方や子供たちの学び方等の詳細を解説。子供たちのアクセシビリティやウェルビーイングの観点も盛り込まれていた。なお2022年6月15日(水)~17日(金)にインテックス大阪で開催される「EDIX関西」にもマイクロソフトは出展予定だ。

自ら推進してきた働き方改革は学校現場にも共通する



 マイクロソフト佐藤氏によるセミナー「働き方改革推進企業のマイクロソフトと学校現場の事例」では、まず働き方改革推進企業としてマイクロソフトが目指した「フレキシブルワーク」の根幹となる「いつでも、どこでも、誰とでも、すぐに仕事ができる」という考え方を説明。多様性や共創等が重視されることや、自社での取組みの経緯が紹介された。そして、それらの取組みは学校にも共通した部分が多く、すぐにできる具体的な施策へと話は広がった。

 特に学校ですぐに始められるのはペーパーレスだ。デジタルデータならば再利用も可能で、さまざまな無駄もなくせる。職員会議の資料をデジタルで共有すれば、時間だけでなく会議の質の向上も期待できる。また学校は紙による保護者との連絡も多く、遅刻・欠席連絡や健康観察、面談の予約、各種アンケート等のデジタル化や自動化は焦点のひとつとなっている。

マイクロソフトの「フレキシブルワーク」
マイクロソフトの「フレキシブルワーク」

ブース内でも働き方改革につながるツールを展示紹介
ブース内でも働き方改革につながるツールを展示紹介

 このセミナーでは、Microsoft 365 EducationのPower Automateを用いた事例が紹介された。保護者がMicrosoft Formsに情報を入れれば、該当項目のデータを一定の条件に基づいてMicrosoft Teams内の先生方のチャットへ書き出される。これらの設定はプログラミングを行わなくても可能だ。

 昨年3月に大阪府堺市の中学校をパイロット校とし、電話業務改善の取組みが実施された。毎朝15件ほどかかってきていた家庭からの電話連絡のほぼすべてが、今ではFormsでの連絡に置き換わっている。現在、この取組みは堺市の全小中学校135校に展開されているため、そのまま計算すると年間で10,000時間以上削減されていることになるという。実際は電話を受けるだけではなく、そこから担任の先生に伝えたり、職員室の遅刻・欠席連絡板に転記したりといった作業もあるため、さらに時間削減効果は大きいと見込まれる。

 他にも先生の働き方改革には多くの提案があった。Microsoft 365 Educationで必要なライセンスを用意すれば、クラウドサービスの機能を使ってセキュリティが高められる。学校現場ではUSBによる個人情報の紛失も未だにあるが、自分の端末からクラウドにあるファイルにアクセスすればダウンロードしなくても編集が可能だ。

 また、先生方の勤務時間も可視化することができる。多くの学校が勤怠管理を実施しているものの、そのデータは有効活用されていないという。教員の属性や校務分掌、部活や担任業務の有無等と出退勤データを分析すれば、先生自身の振り返りをはじめ、管理職が先生たちの残業時間を網羅的に把握し、先生間の業務量の調整も可能になる。また教育委員会は地域の学校を横串で比較でき、施策の効果を検討する等、データに基づく「攻めの働き方改革」が見えてくる。

 セミナー後に働き方改革のコーナーで佐藤氏に話を聞いたところ、学校では本当に紙が多い、ペーパーレスをきっかけにすれば、マイクロソフトが自社で進めた働き方改革は、学校現場においても同様に効果的であるだろうとのことだった。現在、さまざまな校務の効率化に資するテンプレートがマイクロソフトのサイトで公開されている。それらをベースに自治体ごとにカスタマイズする事例も増えているという。「教育データの活用や見える化の動きは、これからさまざまなところで増えるでしょう。ただ、データそのものをどのように見るのか、また見るだけでなく実践的に利用しないと意味がありません。FormsやExcel等を用いて、毎日データを集めて可視化し、分析を可能にするPower BIのような仕組みで気付きを得て業務の効率化に進めば、さらに先生方の働き方改革は進むと思います」と語った。

Teamsで電話当番が不要に



 セミナーでは校務の効率化に有用なものが多く散見されたが、その中でもマイクロソフトの廣瀬氏と服部氏による「電話番撲滅!学校の代表電話がTeamsに」は、先生方の日常業務の負担軽減にとても役立つものになると思われた。

 先生方の朝の時間は多忙を極め、早く来ている方も多いと聞く。次から次に電話が鳴り、職員室の電話もふさがって順番待ちになる。行事の中止や延期といった連絡も対応に慌ただしく、他の先生が外出や出張の時にはつなぐことも難しくなる。そして夜間や休日の電話対応は困難だ。こうした課題をTeamsの電話システムならば解決できるという。

セミナー「電話番撲滅!学校の代表電話がTeamsに」
セミナー「電話番撲滅!学校の代表電話がTeamsに」

 パソコンやタブレット、スマートフォンのTeamsアプリでは通話が可能。教職員はアプリを通して個別に電話を受けたり、かけたりできる機能だ。そしてこれまで利用していた学校の代表電話番号もTeamsに割り当てられる。そうすることで、代表電話にかかってくると事務の方たち全員のTeamsアプリが同時に鳴る、あるいはひとりひとり順番に鳴るように設定ができる。

学校の代表電話をTeamsに割り当てることが可能
学校の代表電話をTeamsに割り当てることが可能

手元のPC、タブレットで電話に対応可能
手元のPC、タブレットで電話に対応可能

 この設定は先生の場合でも同様で、転送することも可能だ。たとえば、ある学年の先生全員へ電話を転送する場合、Teamsの予定表に基づいて授業中や会議中に電話が鳴らないようにも設定ができる。夜間や緊急時には自動応答に切り替えることはもちろん、留守番電話もあり、Teamsで複数の職員が留守番電話の情報が共有できるので必ず誰かが気づき、さらに録音した内容は自動的に文字起こしされて確認できるという。業者の方に頼まなくてもこれらをWEB画面から簡単に設定できるのが魅力だ。

対応時間外の自動応答のイメージ
対応時間外の自動応答のイメージ

通話フローの設定画面
通話フローの設定画面

 TeamsにはチャットやWEB会議といった便利なコミュニケーション機能もあり一般にも広く利用されているが、そこにこうした高度な機能を持った「電話システム」が導入できるなら、先生方の電話に関連する業務の効率化はさらに進み、時間はもっと生まれるのではないだろうか。

子供たちの誰もが公正に教育を受け、さらに能力を伸ばすために



 先生の時間が生まれれば、子供たちへの学び方や先生の教え方の変革にも、その時間は還元されていく。学習コーナーでは、元教員の経歴をもつマイクロソフトの栗原氏に、注目の機能を説明していただいた。

ブース内の学習コーナー
ブース内の学習コーナー

 マイクロソフトでは今、公正な教育と子供の能力をさらに伸ばすための機能を提案している。特にコミュニケーションの基盤であるTeams上で、Forms等によるアンケート集計や、他アプリの利用から子供たちがどういう言葉をたくさん使ったかをリアルタイムにAIが分析して振り返りを得る、といった新しい学び方が人気化しているという。

 特に音読をベースにしたAIによる発音判定機能「Reading Progress」には期待が高まった。これまでの英語教育ではスピーキングとライティングの2技能に課題があると指摘されてきたが、このReading Progressでは、先生がWordやPDF等の音読素材を設定すると自動的に教材ができあがる。それを子供が音読すると、発音の間違いが文章中にハイライト表示され自動採点が行われる。どれくらい正確に音読できたかが、子供も先生もひと目でわかる仕組みだ。間違えた個所をクリックすれば、その該当部分の発音のようすが動画で再生され、先生は子供の動画すべてを確認する必要がなく、個々にあわせたアドバイスが可能になるという。

AIによる発音判定機能「Reading Progress」
AIによる発音判定機能「Reading Progress」

 なおReading ProgressはTeamsの無償の機能として提供され、日本語にも対応している。日本の学校現場で増えている外国籍の子供たちが自分でひらがな等の日本語テキストを音読してチェックができるので、保護者や教員が付きっきりで学習を見る時間は軽減される可能性がある。まさに公正な教育と個々の能力の引き上げという双方の実現が期待できる。

 そして今後は、子供たちの小さな変化を可視化することで、心の揺らぎやSOSに気づき、きめ細やかなケアに結びつける「リフレクト」といったウェルビーイングを意識した機能にも注目が集まるだろう。

子供たちの笑顔につながる教育DX



 渋谷区教育委員会 事務局教育指導課 指導主事の柳田氏によるセッション「子どもたちを笑顔にするDX」では、自治体による教育DXの取り組みの一環として、子供たちが主体となって取り組む「特別活動」と、それを支える「デジタル・シティズンシップ教育」が紹介された。

 渋谷区の「特別活動」では、生徒会や委員会活動、異学年活動、保幼小の交流等がデジタルツールで活性化したという。生徒会活動はオンラインによる演説動画の視聴やオンライン投票を実施。小学校の委員会活動ではTeamsでの情報共有やコミュニケーションが活発に行われ、中学校の図書委員が制作した本の紹介動画によって読書が盛んになっているという。異学年活動では6年生を送る会をはじめとした動画編集等にTeamsやStream等が積極的に活用され、コロナ禍であってもオンラインで保育園、幼稚園、小学校の交流が実現した。

 渋谷区教育委員会では子供たちが安心して挑戦できる環境を整えている。子供たち自身がSOSを出せる場所として、タブレット端末のデスクトップ上に「相談」というハートマークのアイコンを用意。クリックすると相談先の一覧が表示され、直接相談できるフォームが開く仕組みとなっている。また先生たちはTeamsを活用して、不登校傾向の児童・生徒の居場所づくりも行っている。柳田氏は「安心・安全な環境整備やSNSの利用も、決まりやルールを子供たちに強要することはありません。子供たちがどうしたらより良くツールを活用できるか、お互いに気持ち良く過ごせるか、子供たち自らが知恵を出しあって議論し、必要に応じて決まりを考える取り組みが見られました」と振り返った。

 同時に渋谷区では、デジタル・シティズンシップを重視した教育活動を進めている。デジタル・シティズンシップ教育のキーワードは「自分で考えることを大切にする」「~しない、といった禁止ではなくICTの利活用を促進して、より良い活用を実践していく」という2点だと柳田氏は話す。従来の情報モラル教育では、危険事例を伝えてルールを子供たちに守らせるものが多かった。しかしデジタル・シティズンシップ教育では、デジタル社会の市民として、子供たちが自分たちの住む社会の担い手としての実践者になることを目標とし、市民教育の実現を目指しているという。

 このデジタル・シティズンシップ教育の実践例では、まず児童・生徒による動画編集や情報発信が紹介された。子供たちが情報の受け手の立場に立って、どうすればより良く伝わるか、どうすれば表現がより良いものになるかを考えて工夫をし、これまでより子供たちの考えが深まったという。また渋谷区の全校で展開されている教育版マインクラフトでは、ゲームに熱中しすぎると一律で禁止するのではなく、利用時間を子供たちが自分でコントロールし、目的をしっかりと持った創造活動という視点で、学校が教育版マインクラフトの教育的な意義について保護者に説明できるよう支援したという。

 こうした渋谷区の取り組みではコミュニケーションの基盤であるTeamsが大きな役割を果たしている。またGIGAスクール構想による1人1台端末は、先生の教える道具にとどまらず、時間や場所を問わず「文具」として日常的に使われていることも印象的だった。これからも渋谷区の意欲的な取り組みは続くだろう。

 EDIX2022でマイクロソフトが示した「新たな学校」とは、どんな個性を持った子供たちでも学ぶ機会が得られ、その子供ひとりひとりの可能性を最大限に引き出す場であるのだと感じた。先生たち自らが実際に企業や社会で利用されているICTをフルに活用することで、校務を効率化して時間を生み出す、それがまずやるべきことだ。マイクロソフトが有する教育事業での豊富な知見や教育データを活用した支援は、これからも現場の先生方と歩みながら、日本の教育を子供たち中心に変えていくことだろう。

次世代の学びを「EDIX関西」でも出展



 多様な個性をもった子供たちが、いつでもどこでも、さまざまな形で学びを進めていくことができる環境。そんな「ポストGIGA」「ポストコロナ」時代の学びは、これまでのEDIXや、EDIX2022の他社のブースでもなかなか見られなかったものだが、マイクロソフトのブースでは来場者が実際にそれを体験できるような配慮が施されていた。

 2022年6月15日(水)から17日(金)にインテックス大阪で開催される「EDIX関西」でもマイクロソフトは同内容を出展する。関西方面の先生方や教育委員会等の教育関係者の方々には、ぜひブースに足を運んでいただいて「新たな学校」を体感してほしい。

 なお、下記のボタンから東京会場限定の来場者特典e-bookをダウンロードすることが可能だ。「学習」「セキュリティ」「校務DX」の3つの観点で、Microsoft 365 Education活用のアドバイスが詰まっている。関西会場限定の内容と合わせて、ぜひ明日からの課題解決に役立てていただきたい。

下記のボタンから、東京会場限定の来場者特典E-bookをダウンロードすることが可能だ
下記のボタンから、東京会場限定の来場者特典E-bookをダウンロードすることが可能だ

東京会場限定の来場者特典e-book ダウンロードはこちら
《佐久間武》
佐久間武

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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