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あえて何も言わない「不作為の嘘」子供も大人も寛容に…神戸大

 大人だけでなく小学生においても、あえて何も言わない「不作為の嘘」は偽の情報を伝える「作為の嘘」よりも道徳的に甘く判断してしまう傾向が強いことが、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の林創教授らの研究により明らかになった。

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Figure1 4つの場面の構造
  • Figure1 4つの場面の構造
  • Figure2 「利己的状況」かつ「意図的悪事」の場面の例
  • Figure3 「他者をかばう状況」かつ「偶発的悪事」の場面の例
  • Figure4 善悪の評価の結果
  • Figure5 バイアス値の結果
  • 神戸大学
 大人だけでなく小学生においても、あえて何も言わない「不作為の嘘」は偽の情報を伝える「作為の嘘」よりも道徳的に甘く判断してしまう傾向が強いことが、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の林創教授らの研究により明らかになった。今後、子供の道徳性を高める指導において注意すべき点になるという。

 嘘は行為の形態によって、「事実と違うことを相手に伝える」ことで欺く「作為による嘘」と、事実を知っているのに「あえて何も言わない」ことで欺く「不作為の嘘」の2つのタイプにわけられる。人が物事を判断するとき、作為による悪いことを、不作為による悪いことよりもネガティブに判断する(不作為のほうが気にならない)傾向があり、これを「不作為バイアス」と呼ぶことが、すでに「行動の有無」に焦点をあてた研究から明らかになっている。

 今回の研究では、「発言の有無」に焦点をあて、作為の嘘と不作為の嘘の道徳的判断においても不作為バイアスが生じるのかどうか、さらに年齢や状況によって、バイアスの程度に差があるのかを検討した。参加者は小学3年生(8~9歳)78人、6年生(11~12歳)76人、大人80人。

 2つの類似した4場面を用意し、4場面のうち2場面は「利己的状況(主人公が自分を守るために先生を欺く)」で、主人公がわざわざ悪いことをする「意図的悪事」(例:ゴミ箱に投げ入れて遊んでゴミを散らかした)と、主人公がうっかり悪いことをしてしまう「偶発的悪事」(例:うっかりゴミ箱をひっくり返してゴミを散らかした)の2場面を用意。残りの2場面は「他者をかばう状況」で、同級生がわざわざ悪いことをする「意図的悪事」を主人公が目撃する場面と、同級生がうっかり悪いことをしてしまう「偶発的悪事」を主人公が目撃する場面を用意し、それぞれについて「とても良い」から「とても悪い」まで、7段階で「善悪の評価」を回答してもらい集計した。

 結果、年齢にかからわず4場面すべてで、作為による嘘を不作為による嘘よりも悪いと判断する結果が得られ、大人だけでなく子供でも、嘘の道徳的判断において不作為バイアスが生じていることが明らかになった。

 各場面の2つのストーリーで、主人公の「意図」と「結果」は完全に同一で、違いは主人公の嘘が「作為」によるもの(偽の情報を伝える)か、「不作為」によるもの(何も言わない)かだけだったが、得られた結果が同一であることに関係なく、また年齢や状況の違いを問わず、不作為バイアス(不作為のほうが気にならない)が生じることが確認された。

 バイアスの強さは年齢によって違いがあり、小学3年生と6年生では4場面の間で差はなかったのに対して、大人は利己的状況のほうが他者をかばう状況よりもバイアスが大きく、また意図的悪事を隠すほうが偶発的悪事を隠す場合よりバイアスが大きいという結果に。子供は大人と違って、状況に左右されず不作為バイアスが同程度に生じる傾向がみられた。

 研究結果から、子供の嘘に対する道徳的判断は、幼いころから長い時間をかけて変化していくことが示唆される。教育にも重要な意味をもち、不作為バイアスが無意識に働くことで「嘘をついていないから問題ない」と考えてしまう場面については、「真実を何も言わない(不作為の嘘)」ことは、「虚偽の情報を提供する(作為の嘘)」ことと同じ結果を生み出すことがあると子供たちに認識させ、指導すべき場合もあると指摘している。

 一方で、子供たちよりも大人のほうが嘘の道徳的判断において不作為バイアスが強く働く結果が出ていることから、指導すべき大人自身が「不作為による嘘に対して、甘く判断しがちになる傾向」をよく認識することで、子供の嘘にかかわる道徳性を高めていくことに生かしていけると考えられる。

 なお、研究成果は、2021年11月22日(現地時間)に、国際学術雑誌「Journal of Experimental Child Psychology」に掲載されており、Webサイトからも見ることができる。
《畑山望》

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