「EDU-Portニッポン」とは、官民協働のオールジャパンで取り組む「日本型教育の海外展開事業」。文部科学省は、2016年から「日本型教育の海外展開官民協働プラットフォーム(EDU-Portニッポン)」を運営し、有望な海外展開案件をパイロット事業として支援している。
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「EDU-Portシンポジウム EDU-Portニッポンのこれまでとこれからと―5年間の成果と日本型教育の海外展開の未来を探る―」は、これまで5年間の成果を振り返り、2021年度からの「コロナ禍を踏まえた新たな日本型教育の戦略的海外展開に関する調査研究事業(EDU-Portニッポン2.0)」の方向性について広く議論し共有するために企画された。
さらに発展させ「EDU-Portニッポン2.0」へ
最初に文部科学省大臣官房国際課長の氷見谷直紀氏が「EDU-Portニッポン2.0に向けて」と題して、これまでの実績や成果を紹介。次期事業「EDU-Portニッポン2.0」については、「過去5年間で実施してきたEDU-Portニッポンをさらに発展させることを考えている」などと語った。
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続いて、京都大学大学院教育学研究科教授の高山敬太氏が、文部科学省国際課元職員らへの聞き取り調査や論文から得たメッセージ、研究成果を披露。「国際教育協力は、倫理的な問題を避けて通ることができない」など、EDU-Portの課題や可能性を解説した。
EDU-Portパイロット事業の活動紹介には、福井大学、ヤマハ、特定非営利活動法人MIYAZAKI C-DANCE CENTERが登場。福井大学連合教職開発研究科講師の高阪将人氏は福井型教育を世界へ展開する教員研修のシステム化、ヤマハAP営業統括部戦略推進グループ主事の清田章史氏はベトナムとエジプトへのリコーダーを用いた楽器教育の普及活動、MIYAZAKI C-DANCE CENTER副代表理事の豊福彬文氏はインクルーシブ教育を推進する表現運動の海外輸出について、映像などを交えて実践事例を紹介した。
「EDU-Port」の意義とは
「EDU-Portニッポンのこれまでとこれからと」と題したパネルディスカッションには6人が登壇。内田洋行代表取締役社長の大久保昇氏は民間の立場から「何のためにと言ったら日本のため。何かでつながっているというのは必ず力、仲間になる。直接のビジネスでなくとも、全部回り回ってビジネスになる」、国際協力機構(JICA)人間開発部長の佐久間潤氏は官の立場から「いろいろなアクターの方がEDU-Portを通じて、国際協力に参加したことは非常に意義のあること」などと語った。
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海外展開「ポイントはエビデンス」
公文教育研究会取締役経営統括管掌の井上勝之氏は、さまざまな国で展開する際の苦労をもとに「ポイントになったのはエビデンス」と指摘。JICAの協力準備調査(BOPビジネス連携促進)に応募し、公文式教育の学習効果を学術的に測定してもらった経験を踏まえ、「リソースに一民間企業がアクセスすることはとても大変なこと。EDU-Portのプラットフォームのステージが上がっていくのだとすると、民間と学術機関のマッチングが可能になれば本当に素晴らしい」と話した。
社会全体の理解やコンセンサスを
東京大学教授、慶應義塾大学教授の鈴木寛氏は、教育コミュニティーだけでなく、社会全体の理解やコンセンサスを得る必要性に触れ、「世界にも心を通わせられる、本当に信頼し合える真のパートナーがいるということ自体が極めて社会関係資本が充実している状態であるという価値観をどうやって共有していくかがEDU-Portニッポン2.0の非常に重要な課題ではないか」と述べた。
研究報告でも登壇した京都大学大学院教育学研究科教授の高山敬太氏は、「文科省がこの事業をやる意義とは何なのか」と語り、「EDU-Portニッポン2.0」を学びのプロジェクトとして明確に位置付けてはどうかと問いかけた。
最後は、進行役を務めた東京大学大学院教育学研究科准教授の北村友人氏が、「EDU-Portニッポン2.0」に向けた提言を発表。それまでの議論を振り返り、「構築されたプラットフォームの横展開と深化」などを提言した。パネルディスカッション終了後には、2019年度と2020年度のパイロット事業実施機関によるポスターセッションも行われた。