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岩手県、第3期県立高再編計画を修正…地域の実情踏まえ時期見直し

 岩手県教育委員会は2025年11月17日、「第3期県立高等学校再編計画」の修正案を公表した。8月に示した当初案に対し、県内各地で実施した地域検討会議やパブリック・コメント、子供たちからの意見聴取を経て見直しを加えたもの。再編や募集停止時期を後ろ倒しするといった方向性が示された。

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第3期県立高等学校再編計画(修正案)の概要[令和7年11月17日]
  • 第3期県立高等学校再編計画(修正案)の概要[令和7年11月17日]

 岩手県教育委員会は2025年11月17日、「第3期県立高等学校再編計画」の修正案を公表した。8月に示した当初案に対し、県内各地で実施した地域検討会議やパブリック・コメント、子供たちからの意見聴取を経て見直しを加えたもの。今回の修正では、地域の実情や志願動向を踏まえ、再編や募集停止の時期を段階的に後ろ倒しするなど、より現実的な再編の方向性が示された。


 「第3期県立高等学校再編計画」は、2026年度から2035年度(令和8年度から令和17年度)までの10年間を見通した計画で、県立高校の規模適正化と魅力化の両立を目的としている。県内の中学校卒業予定者は2025年度の9,715人から2035年度には6,839人にまで減少する見通しであり、限られた生徒数の中でも多様な学びを確保することが大きな課題となっている。岩手県教委は、地域ごとの教育需要や産業構造の変化を見据えた再編により、学びの質を維持しながら持続可能な高校配置を目指すとしている。

 全日制課程の県立高校について、現在の59校・213学級体制から、2030年度には54~57校・190~201学級へ、2035年度には44~48校・142~163学級へと段階的に再編を進める計画だという。学校の統合や学科改編を進め、2035年度末までに県立高校を現在の59校から44~48校体制とする。

 今回示された修正案の中では、複数の学校で学科の募集停止や統合時期の見直しが行われた。県南の大東高校では、当初2027年度に予定していた情報ビジネス(商業)科の募集停止を2029年度へと2年延期した。沿岸南部の大船渡東高校では、食物文化(家庭)科の募集停止時期を2028年度から2030年度に変更し、家庭科の学びの一部を農芸科学科のコース内で維持する方針を示した。宮古地区の宮古商工高校と宮古水産高校については、校舎および施設等を同一校地内に集約し一体的に整備する計画を、当初の2027年度から2028年度に後ろ倒しした。

 また、県立高校の水産および調理師養成施設の学びを宮古水産高校に集約する計画については、集約期間を2028年度から2030年度にかけて段階的に実施するよう修正された。さらに、志願者の動向を踏まえたうえで寮の整備を検討する方針が新たに示された。さらに県北地区の久慈翔北高校では、水産および調理師養成施設の学びを宮古水産高校に集約する方針のもと、2028年度に総合学科を1学級減として調理師養成施設を廃止し、さらに2030年度に海洋科学(水産)系列の募集を停止する。

 教育内容の面でも、当初案に比べて方針がより明確化された。岩手県教委が策定した「いわての高校教育魅力化グランドデザイン for 2031」に基づき、普通科改革や探究活動の充実、遠隔教育や単位制の導入などを通じて、地域の特色を生かした教育展開を進める。また、生徒の主体的な探究活動を支援するため、他校との交流を促す「探究共創交流会」を設け、魅力化アドバイザーの支援を強化する方針も加えられた。加えて、県外生の受け入れを推進する「いわて留学」では、市町村連携コーディネーターの配置促進や先進事例共有セミナーの開催など、地域と連携した支援体制の整備が明記された。

 今後は、改めて各地区での地域検討会議や意見交換会を開催し、最終的な再編計画の策定を進める。岩手県教委は、東日本大震災の教訓を踏まえ、「いわての復興教育」の取組みを推進するとともに、生徒が「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」を総合的に兼ね備え、未来の岩手を持続可能なものに創造していく「生きる力」を身に付けることができる学びの実現に向けて取り組んでいくとしている。

《畑山望》

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