旺文社教育情報センターは2025年11月11日、次期学習指導要領の改訂に向けた「論点整理」のポイントをまとめた資料を公表した。「主体性」の観点別評価の廃止など、高校現場にとって重要な改訂個所を整理している。
次期学習指導要領の改訂に関する議論は、中教審の教育課程企画特別部会で行われ、9月に全体的な改訂の方向性を示す「論点整理」が取りまとめられた。旺文社教育情報センターは、この中から特に高校現場にとって重要な個所をピックアップし、PDF資料「次期学習指導要領『論点整理』公表! 全体的な改訂の方向性が明らかに!」として公表した。
改訂の内容を集約すると「わかりやすい指導要領」「多様な子供たちの包摂」「情報活用能力の抜本的向上」「教師の負担の軽減、余白の創出、裁量拡大」の4つに大別。特に「わかりやすさ」は最重視され、従来の理念的・抽象的表現を整理し、学校現場での運用を意識した構成となった。
最重要ワードの1つは、「中核的な概念等」の明確化だという。これは各科目の学習内容を再整理し、学習の本質的理解を重視するもので、従来の単元ごとの知識や技能を超えた「各単元等の学びの深まり(ゴール)」を示す概念と位置付けられる。たとえば日本史の鎌倉時代を学ぶ際には、個別の出来事や用語の理解だけでなく、「武家政権の成立」という本質的な理解が求められるようになる。
「学びに向かう力・人間性」の育成に関しては、「定義がわからない」「評価が困難」という学校現場が抱える2大課題が見直される。現状「主体性」は観点別で評価する一方、「感性」や「思いやり」といった側面は文書で総合所見欄に記入する方式で、客観的評価が難しいという問題点があった。論点整理では、これらの評価を一本化し、観点別評価を廃止。総合所見欄に文章で記録する方針とした。ただし、特に優れた点がある場合には「思考・判断・表現」の観点に○を付記できる仕組みを残し、学習評価の柔軟性を確保している。
9月25日に論点整理が公表されて以降、各教科のワーキンググループ(WG)がすでに始動している。各WGでは、「目標」「見方・考え方」「中核的な概念等」といった教科の本質的な部分を中心に議論が進められており、学習内容の精選や教育段階間の連携見直しに発展する可能性がある。教科によっては学習項目の変更や移動も想定される。
加えて、教師と生徒の「余白」を生み出す観点から、「分厚い教科書をすべて教えることからの脱却」も議論されている。「中核的な概念等」を軸に学校ごとに単元の学びに強弱をつけられるようになった場合、入試の出題範囲がどのように設定されるかは現時点で不明であり、今後の議論が注目される。
次期学習指導要領の改訂は、今回の「論点整理」もとに議論が進められ、2026年度に審議の取りまとめが行われる予定。これを受け、中教審は同年度内に答申を行い、2027年度中には新たな学習指導要領が告示される見通し。前回改訂時のスケジュールを踏まえると、高校での新指導要領の年次進行による実施は2032年度(令和14年度)から始まるとみられる。
PDF資料「次期学習指導要領『論点整理』公表! 全体的な改訂の方向性が明らかに!」は、旺文社教育情報センターのWebサイトから全文を閲覧できる。









