多くの大学がDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を重要課題として掲げる中、桜美林大学は、情報システムを根底から覆すような大規模な刷新に頼るのではなく、各部署で運用されてきた既存のシステムを最大限に生かしつつ、それらを「統合データ基盤」で有機的に連携させるという、柔軟かつ実践的なアプローチでDXを推進している。同大学のDXに関するおもな取組みについて、学長室係長の寺澤武氏、入学部(アドミッションズオフィス)部長・学長補佐の高原幸治氏、学務部教務課長の寺田洋一氏、キャリア開発センターの泉毅氏と洞上千明氏に聞いた。
データ活用による学生支援への挑戦
桜美林大学のDX戦略は、多くの組織が目指す「システムの一本化」とは一線を画す。むしろ、各部門で培われてきた専門性と、それに最適化された多様なシステムを尊重し、それらのデータを「統合データ基盤」というハブに集約・連携させる点に最大の特色がある。これにより、各部門は自律性を保ちながら業務を遂行でき、大学全体としては一貫性のあるデータ活用が可能となる。
大学DXの全体像について、寺澤氏は次のように語る。「本学のDXは、データを一元化し、システムを一本化するという一般的なアプローチとは異なります。既存のシステムを生かしながら、データを受け渡すための統合データ基盤を整備することに注力しました。これにより、出願から卒業に至るまで、学生に関するあらゆるデータを一貫して捉え、教学IR(※)の観点から学生ひとりひとりの成長の軌跡を可視化し、支援していくことを目指しています」。※ 大学における教育活動や学生の学習状況に関するデータを収集・分析し、大学の経営改善や学生支援、教育の質向上に関する改善を支援する活動のこと。