多くの大学がDXの推進に力を入れる中、京都先端科学大学は「学生満足度」を羅針盤に据え、独自の進化を続けている。同大学のDXは、単なるシステムの導入や業務効率化に留まらず、教育の本質と学生体験そのものを豊かに変革することを目指す。その最前線で指揮を執る情報センター部長の中村稔典氏に、これまでの軌跡と未来への展望を聞いた。
課題と挑戦
京都先端科学大学のこれまでのDXの道のりは「地道な課題解決の連続であった」と中村氏は語る。DX推進の初期段階を中村氏は「3つのStep」というフレームワークで振り返る。
「DXというと3つのStepがあると言われています。最初はアナログ作業や情報をデジタル化する『デジタイゼーション』、次にデジタル化の付加価値を向上する『デジタライゼーション』、そして最後に『DX:デジタルトランスフォーメーション』―すなわちイノベーションを起こしていくという3Stepです」。
この変革は、同大学理事長の永守重信氏が創業し現在代表取締役グローバルグループ代表を務めるニデックとの連携から始まった。「私は元々ニデックの社員で、7年ほど前から大学の手伝いをしています。企業での経験が今の大学DXにも生きています」と、産業界で培った知見が大学改革の礎となったことを明かす。
しかし、DX推進の現場は困難の連続だった。「当初は、システムは入っているが使われていない、データも最低限しか入っていないという状況でした」。この言葉からは、DX以前の大学が抱えていた構造的な課題が透けて見える。