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AI利用は当たり前、教員から始める仙台育英のMicrosoft 365 Copilot活用

 仙台育英学園では「まずは教員が体験し、生徒たちに将来の可能性を示したい」との考えのもと、生成AIの利活用に取り組んでいる。同学園常務理事で仙台育英学園沖縄高校の校長でもある加藤聖一氏、仙台育英学園沖縄高校教頭の庄司昌弘先生、日本マイクロソフトの青木氏による鼎談を行った。

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左から仙台育英学園常務理事で仙台育英沖縄高等学校校長の加藤聖一氏、日本マイクロソフトの青木智寛氏、仙台育英沖縄高等学校教頭の庄司昌弘氏
  • 左から仙台育英学園常務理事で仙台育英沖縄高等学校校長の加藤聖一氏、日本マイクロソフトの青木智寛氏、仙台育英沖縄高等学校教頭の庄司昌弘氏
  • AI利用は当たり前、教員から始める仙台育英のMicrosoft 365 Copilot活用
  • AI利用は当たり前、教員から始める仙台育英のMicrosoft 365 Copilot活用
  • 仙台育英学園高等学校 宮城野校舎 情報科学コースの日野彰先生(左)、特別進学コースの安部宏紀先生(中)、高橋秀樹先生(右)
  • 仙台育英学園高等学校 多賀城校舎 英進進学コースの五十嵐春祐先生(左)、吉野裕貴先生(右)
  • 左から仙台育英沖縄高等学校教頭の庄司昌弘氏、仙台育英学園常務理事で仙台育英沖縄高等学校校長の加藤聖一氏

 教育現場でのAI利用に関して、多くの議論とともに導入と検証が始まり、校務の効率化への期待が高まっている。そんな中、仙台育英学園では「まずは教員が体験し、生徒たちに将来の可能性を示したい」との考えのもと、生成AIの利活用に取り組んでいる。生成AIアシスタントツール「Microsoft 365 Copilot」の導入経緯や利用状況、今後の期待などをテーマに、同学園常務理事で仙台育英学園沖縄高校の校長でもある加藤聖一氏、仙台育英学園沖縄高校教頭の庄司昌弘氏、日本マイクロソフト パブリックセクター事業本部 教育戦略本部ソリューションスペシャリストの青木智寛氏による鼎談を行った。

 なお、現場の先生方の具体的な活用については、仙台育英学園高等学校 宮城野校舎 特別進学コースの高橋秀樹先生、安部宏紀先生、情報科学コースの日野彰先生、多賀城校舎 英進進学コースの五十嵐春祐先生、吉野裕貴先生にご協力いただき、事前にお話しいただいた内容を、加藤先生より紹介いただいた。

仙台育英学園

 仙台育英学園は1905年に創立された私立の学校法人で、宮城県内に秀光中学校、全日制の仙台育英学園高等学校、宮城県・青森県・沖縄県に拠点をもつ広域通信制のILC(Ikuei Learning Center)、2023年に設立された全日制の仙台育英学園沖縄高等学校を有し、全校の在籍生徒数は4,000名を超える。同学園は「至誠、質実剛健、自治進取」の建学精神を共通の理念として、大学進学やIT分野の技能習得、アントレプレナーシップ、国際バカロレアをはじめとする国際教育、野球などのスポーツを軸とした文武両道を目指すコースなど、まさに社会全体を対象とした教育活動を行っている。

 

Microsoft 365 Copilot

 仙台育英学園が導入したMicrosoft 365 Copilotは、Microsoft 365と統合された生成AIアシスタントツール。WordやExcel、PowerPoint、Outlook、TeamsなどのMicrosoft 365アプリで、資料の要約や下書き、データ分析、画像の生成などの日々の業務に使用できる。またユーザーと組織のデータを保護する機能を備えており、入力した情報は保存されず、AIモデルの学習に利用されることもない。

教員が最先端のものに触れる意味

青木氏:本日は仙台育英学園におけるCopilotの導入の背景や実際の活用についてお話を伺います。よろしくお願いします。

加藤先生:どうぞよろしくお願いします。本日は、学校法人仙台育英学園の常務理事という立場から、学園全体のお話を中心にさせていただきます。

青木氏:まずは、仙台育英学園のICT環境について教えてください。

加藤先生:仙台育英学園では学校やコースによる異なる教育目標や教育内容にあわせて、生徒用のデバイスやソフトウェアを選定しています。教職員のICT環境は、校務を円滑にするうえで欠かせないマイクロソフト製品が軸となっています。

 以前、私は仙台育英学園のICT担当として、東京にある複数の先進的な学校を訪問し、ICT環境整備についてさまざまなお話を伺いました。その際に先生方がデバイスを自然に使いこなして情報共有している姿を目の当たりにし、ICT環境の必要性を痛感しました。そして、Microsoft 365と最新のSurfaceを導入すれば、私どもも同様の利活用を実現できると考えたのです。

 私たち教員は、生徒に憧れを抱かせる存在であるべきだと考えています。先生自身が古いPCを使っていては当然、生徒は憧れをもちません。だからこそ、まず教員が最先端のものを使える環境を整備し、生徒たちのモチベーションにつなげたい。そしてそれが先生方の働くモチベーションにもつながると期待しています。

青木氏:今回、仙台育英学園が有償版Copilotを導入した背景をお聞かせください。

加藤先生:今の生徒たちが社会に出て働くころには、生成AIは日常的に活用されているでしょう。だからこそ教員自身がまず生成AIを駆使して、どのような活用法や効果があるのかを理解することで生徒への具体的な支援に結び付けたいと考えています。こうした理由から本学園では教員のICT環境の整備を最優先に進めてきました。そのうえで、データ保護機能を備え、安心して利用できるMicrosoft 365 Copilotの導入を検討しました。生成AIをどのように活用して、その効果をいかに生み出すかを教員が体験する。そして生徒たちに将来の可能性を示したいと考えています。

青木氏:文部科学省からも生成AIの利用についてのガイドラインが出ましたが、仙台育英学園では独自にガイドラインを設定されているのでしょうか。

加藤先生:現在のところ、独自のガイドラインは定めずに2023年7月に発表された「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を参考としています。まずはガイドラインで示された留意点をしっかりと理解したうえで、チャレンジしていきたいと考えています。活用を進める中で、良い面を探りながら、自分たちのガイドラインを作っていきたいですね。

Copilotはバディ

青木氏:加藤先生ご自身もCopilotを利用されていますか。

加藤先生:はい。教員は常に学び続ける必要がありますが、その中でCopilotはバディとして役立つと思います。私も校長になった当初は、行政への要望書などの書き方がわからず苦労しましたが、Copilotを利用すれば自分の立場、文脈、送る相手に応じた文章の書き方や論点を教えてくれるので、たいへん便利です。もちろん本学園の理事長先生にもTeamsのチャット等でご相談できますが、Copilotを使えば、ある程度自分で解決することができます。今後、学校のあらゆるところで、こうしたことが起きれば良いですね。

 たとえば、Teamsで会議するときに、Copilotにスクリプトを要約してもらっています。やむを得ず遅れて参加する会議もありますが、それまでの会議の内容を教えてもらうのも申し訳ないですし、時間も労力ももったいない。そこでCopilotに要約してもらって、前段で何を話していたかをキャッチアップしています。お互いに時間も節約できて、ポイントもつかめるので役立っています。

 PowerPointで学校説明の資料などを作成する際には、Copilotにコンテンツを起こしてもらってから編集しています。学内向けにはあらかじめ情報共有されていて細かい説明が不要なことも多いので、Copilotで作成した資料を、ほぼそのまま使うことが増えています。

 また、私は常務理事の立場上、経理関係でExcelのCopilotを活用して分析することがあります。以前はExcelのピボットテーブルを利用していましたが、Copilotに分析を指示すると、チャートなどで表示されて便利です。先日は学園の印刷費が年間どれぐらい発生しているかが、すぐにわかりました。

青木氏:加藤先生ご自身、かなりご活用されているのですね。現場の先生方は、Copilotを校務のどのような場面で利用していますか。

庄司先生:私は沖縄高校で教頭だけでなく広報も担当しており、中学校の先生方に向けて、学校の取組みや入試システムを知ってもらうためにマンスリーレターを発行しています。その記事作成の際にCopilotを使用して、文章校正を行っています。また、文化祭の振り返りの際には、Formsでのアンケート作成や結果の要約にも利用しました。

加藤先生:今回取材いただいた英語科教員のように、ライティングのテストを採点する際に、文法を体系的に書けているかをCopilotでチェックしている事例もあります。また、対面で実施している会議にTeamsを利用し、文字起こしをして、WordのCopilotで要約している教員もいます。内容の精度がとても高いと言っていました。

青木氏:入試に関連したお仕事での利用はありますか。

加藤先生:こちらも今回取材いただいた教員(高校3年生の担任)のように、年内入試(学校推薦型選抜・総合型選抜)の対応に活用している事例もあります。個々の生徒に関する情報をCopilotに読み込ませることはしておりませんが、Copilotにベースとなる構成を作成してもらって下書きを作り、さらにCopilotを利用して推敲や校正をすることで、ほかの先生の手を借りずに最初の文案作成を進められるメリットが大きいと思います。Microsoft 365 Copilotなら、データ保護により個人情報が学習されないため、こういった校務をCopilotで行う際の安心にもつながっています。

子供たちに生成AIを使わせたい…保護者の声

青木氏:保護者向けに生成AIの研修をされたそうですね。

加藤先生:宮城県県南のPTA支部から生成AI研修の依頼があり、今回取材いただいた教員の発案により、生成AIの概要と、テキスト生成、音声検索、画像生成などの実習を中心とした1時間の研修会を10月初旬に実施しました。

仙台育英学園高等学校 宮城野校舎 情報科学コースの日野彰先生(左)、特別進学コースの安部宏紀先生(中)、高橋秀樹先生(右)
仙台育英学園高等学校 多賀城校舎 英進進学コースの五十嵐春祐先生(左)、吉野裕貴先生(右)

校務を効率化するMicrosoft 365 Copilotの新機能

青木氏:Microsoft 365 Copilotはリリースされてから1年ほど経ちますが、お客様からの声をお聞きしながら内容をアップデートして、日々進化しています。ここでは新機能を2つご紹介します。

 まずは、ファイルを探す際に、似たようなファイルが複数あると、ひとつひとつ開いて確認するなど探すのに時間を要することがあると思います。Copilotの新しい機能では、ファイルを開かなくても、内容を把握できるようになりました。たとえば、年度ごとに作成しているファイルがある場合、2019年度版、2020年度版、…と複数のファイルを選択して「比較する」を押すと、表形式で相違点を表示してくれます。

庄司先生:保護者宛てのお知らせをWordで作成していますが、そうした文書は年度ごとに改訂が必要ですので、年度ごとに比較ができるのは便利ですね。教材作成で一部を変更する際にも、ひとつひとつファイルを開いて比較しなくて済むのは業務効率化につながると思います。PowerPointでの利用も、すごく便利そうです。

青木氏:ありがとうございます。もうひとつ、学校の知識を有効活用するための便利な新機能ですが、SharePointの共有フォルダにある校務や教務のファイルの情報をもとに、質問したら回答してくれるチャットボットが簡単に作成できるようになりました。たとえば、情報源となるファイルをまとめて選択してからCopilotボタンの「チャットボットを作る」を選択し、Teams上に設置します。Teamsのチャット欄を入り口に質問をすると、選択したファイルの中身を参照してチャットボットが回答を返してくれるので、業務の効率化に役立つと思います。さらに、情報源のファイルも示してくれます。

加藤先生:学校現場ではICT機器関連のトラブルが多発しています。マニュアルなどでも情報発信はしていますが、どうしても困ったことがあれば、ICTに詳しい先生に聞くことが多いと思います。それを、このチャットボットによって解消できればとても良いですね。

青木氏:ありがとうございます。Microsoft 365 Copilotは進化し続けていきますので、今後も先生方の業務効率化や子供たちのより良い教育に向けて情報をお届けしたいと思います。

仙台育英沖縄高等学校教頭の庄司昌弘氏(左)と仙台育英学園常務理事で仙台育英沖縄高等学校校長の加藤聖一氏(右)

 「教員は、生徒に憧れを抱かせる存在であるべき」との考えのもと、先生方が率先して開始した仙台育英学園の生成AI活用。先生方のお話からは、その活用範囲が徐々に広がり、教育現場ならではの活用のアイデアを生んで、浸透させていこうとしているようすが伝わってきた。意欲的に生成AIを活用している仙台育英学園のチャレンジに今後も注目したい。

Microsoftの生成AI 明日から使えるCopilot依頼文(プロンプト)10
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《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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