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【クレーム対応Q&A】花粉症に配慮してほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第170回のテーマは「花粉症に配慮してほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第170回のテーマは「花粉症に配慮してほしい」。

10代の半数がスギ花粉症

 花粉症に関する調査(日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)によると日本の全国民の約40%が花粉症を含むアレルギー性鼻炎にかかっているそうです。継続的な調査では、10年で10ポイント程度ずつ増加をしている状況にあるといいます。子供に関するものでは2020年の厚労省の発表(鼻アレルギー診療ガイドライン)では、5~9歳の30.1%、10~19歳の49.5%がスギ花粉症とされています。福井大学の研究チームの調査では、5~11歳のスギ花粉症の発症率は成人の6.7倍高いという報告もあります。大人はもちろん、子供にとっても大きな影響のある花粉症です。

 花粉症について、人体や社会への影響についていくつもの調査がされています。花粉症の症状がある場合、仕事への集中度が低くなるなどのマイナス面があるとされています。2020年にパナソニックが実施した「社会人の花粉症に関する調査」では、花粉症による労働力低下の経済損失額は1日あたり約2,215億円にも及ぶとされています。

 子供の場合、花粉症が学校生活の質を下げる原因の1つとなります。主症状である「目のかゆみ」「鼻水」「体のだるさ」などにより集中度が下がる可能性があります。学習においては、集中度が下がることにより、理解度が低くなります。また、体調が悪いことなどが影響し、人間関係が円滑でなくなる可能性も出てきます。

学校ができる対応

 そういった状況において学校ができる対応として、親への情報の提供があります。特に「親は花粉症ではなく、子供は花粉症」という家庭では、ケア(理解)の質が低くなりがちです。そういった家庭があることを意識したうえで情報発信をしていくことが望まれます。各種の便り(学校だより、保健だよりなど)や会合(PTA総会、保護者会など)などを上手に活用していくことが良いでしょう。状況に応じて、親に担任や養護教諭から直接コンタクトを取ることも良いでしょう。

 また、教室などに空気清浄機を入れることも良いでしょう。空気清浄機に関しては、新型コロナウイルスが流行した際、対策の1つとして導入した学校(自治体)がありました。2024年2月現在、日本の学校では新型コロナウイルスの大流行は収まりましたが、それでも散発的に発生が報告されています。また、インフルエンザの流行はコロナの流行前から毎年冬になると見られていたものです。そういったことを考えると、ウイルス除去や花粉除去機能を持った空気清浄機を教室に入れることも良いのではと思います。さらに加湿機能が付いているものであれば、より良いでしょう。

 さらに、学習の一部として取り入れることも良いでしょう。多様な人がいることの理解などをテーマにする時に、花粉症も扱うというものです。多様な人の理解は一般的に障害者、性的マイノリティー、肌の色などを扱うことがあります。そういった取組みの中に花粉症を少しだけ取り上げます。他の人にはわかりにくい状況を共有することは意味のあることだと思います。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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