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【クレーム対応Q&A】学校が忙しい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第162回のテーマは「学校が忙しい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第162回のテーマは「学校が忙しい」。

子供も教員も忙しい

 今の学校は忙しいと言われます。確かに私が大学を出て小学校に採用された約30年前と今の学校の状況を比べると、今の方がさまざまな面で忙しいという印象を受けます。ところで「学校は忙しい」と言った場合、2つの意味があります。1つは「子供が忙しい」です。もう1つは「教員が忙しい」というものです。ただ「子供だけが忙しい学校」「教員だけが忙しい学校」というものはあまり存在しないでしょう。「学校が忙しい」を考える時は、一般的に「子供も教員も忙しい」ということでしょう。

学校の仕組みを変えるチャンス

 学校の忙しさを考える際、今のタイミングはチャンスだと私は思っています。新型コロナウイルスというインパクトのある出来事の後、否応なく学校の仕組みは変化しました。教員の多忙化などもニュースになることがあります。このタイミングで学校の仕組みを変えていくことは無理なく取り組むことができます

 学校のさまざまな仕組みを変えていく際、それらの多くの部分は「学校裁量」で変えることができます。公立学校の場合、その学校がある自治体(市区町村)の規則や条例などに従う必要はありますが、それらは多くはありません。学校において存在感の大きなもの、たとえば「運動会」や「通知表」は、学校の判断で無くしても基本的には問題がありません。実際、コロナ禍の2020年度には「運動会」を実施しない学校は多数ありました。運動会を半日開催にして、それが定着した学校もたくさんあります。また、家庭向けの「通知表」が無い学校もあります。

 これまで学校(特に公立学校)は、横並び意識が強い組織でした。公立学校の場合、近隣の学校と足並みを揃えるが重要であるという考えが一般的でした。公立小学校の場合、その1校だけ特異な取組みをすると、卒業生が中学校に上がった時に苦労をする可能性があるなどの理由がよく聞かれます。そういった「できない理由」「やらない理由」を必死に探しているようではこれからの学校はより良い教育をしていくことはできないのではと私は考えます。

 「足並みを揃えること」などは、日本の高度経済成長の時代(昭和のころ)には適した学校システムであったと思います。優秀な工場スタッフを育成するイメージです。流れに乗って自分の役割を果たすことで高品質の商品を効率よく作り上げることにつながります。現在の日本の社会は、以前よりもさまざまな部分で工夫が必要とされています。「人口減少」「少子高齢化社会」「AIなどの発展」「世界における経済的地位の低下」などの変化を踏まえると昭和のころに取り組んでいた仕組みのままでうまくいくとは思えません。変化する社会状況に対し、学校もその変化に対応して変わっていくことが求められます。「足並みを揃えて・・・」などのことを意識していては、社会の変化からどんどん遅れをとっていきます。

 忙しさに関して学校の仕組みを柔軟に変化させていくことは「子供」にとっても「教師」にとっても有意義なこととなるはずです。先ほど「運動会」や「通知表」を例に挙げましたが、それ以外にも小さなものから大きなものまで学校の忙しさを変えていくきっかけとなるものはたくさんあります。これまで取り組んできたものを当たり前として見るのではなく、変えることができるものとして見直してみると良いでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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