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【クレーム対応Q&A】運動会を時間短縮してほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第152回のテーマは「運動会を半日に短縮してほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第152回のテーマは「運動会を半日に短縮してほしい」。

学校行事が新型コロナを機に
変化

 新型コロナウイルスは人々の暮らしに大きな影響を与えました。働き方においてはそれまでは決して一般的ではなかった在宅でのテレワークなどが多くの企業で普通に行われるようになりました。学校にも大きな影響がありました。2020年の春から夏にかけて登校が制限されたことなどと関係し、一気にGIGA端末の配置が進みました。一人一台のGIGA端末があることによって学びのスタイルが大きく変わりました。それまで、日本の学校では、明治以来ずっと教科書、ノート、黒板などを使った教師主導の学びが取り組まれてきました。一人一台のGIGA端末により個別最適な学びに取り組みやすくなりました。

 そういった学校の変化の中でも大きな変化の1つが「学校行事」です。それまで何十年もずっと続けてきたさまざまな学校行事が一部は中止に、一部は形を変えて簡略化された形での取組みとなりました。特に人と人の関わりが多い体育的行事は大きく変化があったものの1つです。

 2020年度については、運動会を中止にした学校もありましたが、多くの学校は短縮した形での実施でした。午前中のみの半日開催という形がもっとも多かったです。内容としては、全校競技やPTA種目などを省き、各学年の競技・演技を1つ減らすなどのやり方でした。保護者の参観に関しても人数の制限(1家族1人)やネットでの配信が行われました。ネット配信は、それまで見ることができなかった遠隔地の人が参観可能となりました。遠くに住んでいる祖父母が孫のようすを見ることができるようになったなどの変化がありました。

 2022年度、2023年度になり、コロナの扱いに変化が生じたこともあり、学校でのさまざまな活動にも変化がありました。運動会に関しては、コロナ以前の形(午前・午後の実施)に戻す学校もありました。私はコロナがある程度落ち着いてきたという理由で、何でも元の形に戻すことには反対です。コロナ前の形が理想的(良い)な形であり、コロナによって制限を受けたものを戻すのであれば、まだ良いと思います。たとえば、給食の食べ方などはそれに当たります。感染予防の観点から全員が机を前に向けた形で、黙食をするというものは自然な形ではありません。4人などのグループで机を合わせ、色々と話をしながら食べる形の方が自然です。給食の形を元に戻していくことは良いことでしょう。

学校で大事にしたいものは何かを考える

 逆にコロナ以前の形が理想的な形であったのか、わからないようなものを何も考えずに元に戻してしまうことに私は反対です。運動会はその典型です。運動会という行事は学校教育活動の中でもかなりの負荷がかかっているものです。練習や準備に相当な時間をかけて取り組んでいます。そういった取組みが育ちにつながる子供もいるのですが、逆にネガティブな思い(運動・体を動かすことが嫌、学校が嫌)を抱く子供も一定数いることは事実です。

 「半日の運動会」という形は、現在の学校の状況において、子供の学びや育ち、その他の学校教育活動とのバランス、保護者の思いなどを踏まえるとちょうど良い形なのではと私は思います。「持続可能であること」は現在の学校において、とても重要なことだと思います。コロナを経て、改めてその学校において大事にしたいものは何なのかということをきちんと考えていくことが大切でしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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