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【クレーム対応Q&A】学校を休校にしないでほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第144回のテーマは「学校を休校にしないでほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまなクレームや相談。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第144回のテーマは「学校を休校にしないでほしい」。

北海道の学校が高温で休校に

 2023年の夏は暑い夏になりました。全国的に暑かったのですが、8月下旬になり北日本、特に北海道でも35度以上の酷暑日を記録するような状況です。そういった中、夏休み明けの授業が始まり出していた北海道の学校が高温のために「休校」となったところがあります。

 北海道では夏も冷涼であることからエアコンが要らないとされていました。2021年の調査では家庭でのエアコンの設置率は42%とされています。文科省の調査によると、北海道内の小中学校のエアコンの設置率は2020年9月1日時点で4.3%、2022年9月1日時点で16.5%とされています。暑さに慣れていない状況で異常な温度となったことで、子供の安全を考え、休校としたということです。

 私がそのニュースを聞き感じたことが「なぜ、GIGA端末を使ったオンライン授業にしないのだろうか?」ということです。GIGAスクール構想により日本中の小中学校には1人1台のGIGA端末が配布されています。日々の教育活動でも重用されています。文科省はGIGA端末の持ち帰りを推奨しており、家庭でGIGA端末を使って宿題などに取り組むことを想定しています。

GIGA端末活用で変わる休校の概念

 このようにGIGA端末を日常的に家庭でも活用することができていれば学校における「休校」という概念が変わってきます。冒頭に話題にした北海道の高温も、休校にする必要はなく、「通常授業(通学)」から「オンライン授業」へ変更すれば済むことです。同様に考えると、コロナやインフルエンザなどの病気への対応、台風・大雪・高温などの気象への対応による「休校」というものをなくしていくことができます。これまで、学校の授業時数は「休校」などに備えて、多めの設定としていました。何かあったとしてもオンラインで対応し、授業とすることができるようにすれば、予備の時数は不要となります。年間を通じて、時数を少し減らすことにつながり、色々な面でプラスとなります。

GIGA端末をもっと有効活用しよう

 色々な自治体を見ていると、現時点でもGIGA端末の持ち帰りを実施していない自治体・学校があります。ただ、日本中の多くの自治体・学校で実施しているということを考えると、実施しないことには無理があります。まだ持ち帰りなどをしていない自治体・学校の関係者はしっかりと他の自治体・学校の例を学んでほしいと思います。

 GIGAスクール構想における端末の整備には2019年度および2020年度の予算で約4,600億円が使われています。これはおもにスタート時における端末や環境の整備にかかったお金です。その後、毎年、破損の修理や維持のためのお金もかかります。また、端末は一定期間で交換する必要が出てきます。学校の用具については、たとえば、体育で使用する跳び箱の場合、一度購入をすれば、維持費や交換の費用はほとんどかかりません。跳び箱の場合、15~20年位は使用することができると思われます。その点でGIGA端末はまったく状況が違います。端末に不具合が生じることはよくありますし、一定期間での買い替えが必要になります。数年に一度の買い替えのタイミングでは先に書いたような数千億円規模の費用が必要となります。

 GIGAスクール構想は、これだけ多額の税金を投入している(今後していく)事業です。もっともっと使い倒していくくらいの感じでやっていくべきだと思います。持ち帰りをせず、緊急時のオンライン授業ができていないような状況では、まったく元は取れていないと思われます。コロナによって学校も含め、社会の仕組みが色々と変わってきました。GIGA端末を有効に使い、新しい形の学校を作っていくことができればと思います。学校の状況が少しずつでも良い形に変わっていくことを願っています。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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