学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第149回のテーマは「運動会で自分の子供の演技が見えなかった」。
すべての意見を受け入れていくことが大切なのではない
学校では行事が行われた後には保護者を対象としてアンケートを取ることが多いです。良い形に改善していくために保護者の視点からの意見を聞くことはとても意味のあることだと思います。多面的に物事を見ることは、改善において重要なことです。
そういったアンケートにおいて、保護者の自己中心的な意見が書かれてくることがあります。今回のテーマである「運動会で自分の子供の演技が見えなかった」などはそれに近いものでしょう。ある子供だけ観客から見えにくいということはほとんどの場合ありません。保護者が見ている場所と子供の演技する場所の関係から見えにくかったということはあり得ます。それは、親が自分の子供に演技の場所を聞いておき、適した場所から見ていれば問題はないことがほとんどです。
学校では保護者からの意見があるとそれに対して対応、改善しようと努力をします。たとえば、「運動会で自分の子供の踊る姿が見えなかった。来年から踊りは無くしてほしい。」という意見があったら、その意見に対して色々と検討します。ただ、私は学校のそういった丁寧な取組みのすべてが良い訳ではないのだと思います。かつて私も公立小学校の現場にいました。保護者や地域からの意見を丁寧に扱うことの必要性や大切さは理解しているつもりです。そういった状況において、学校はすべての意見を受け入れていくことが大切なのではないということをきちんと意識すべきだと思います。一部であれ保護者や地域の人の意見に対して、反対(否定的)の見解を伝えることはエネルギーを要することです。
多くの場合、その取組みに賛成(肯定的)だった人の意見は表立って見えてこないことが多いです。少数の反対の意見などが目立つことが多いです。数百人いる保護者の中のごくわずかの人の意見を取り入れることは、多くの人が考えていることと違う方向に向かってしまうこともあります。少数の意見でも大切にすべきだという考え方は確かに必要です。ただ学校の方向性を決めるようなこと(行事のあり方など)において、場合によって(内容によって)は丁寧な説明のうえで対応しないということも必要だと思います。
学校として言うべきことはきちんと言う
これまでの学校は、保護者や地域の意見に丁寧に対応しすぎていた面もあったのだと思います。「子供のために…」という言葉は、学校ではさまざまな形で使われます。学校で行われることはほとんどの場面でその言葉を使うことができます。そうなると盲目的に進んでいくような状況にもなり兼ねません。現在の学校の状況は残念ながら危機的な状況です。さまざまな指標がそれを表しています。そういった状況においては、これまで通りのやり方を踏襲していくのではなく「できるものはできる、できないものはできない」ということをもっと真剣に考えていくべきでしょう。
これまで、学校は保護者や地域との関わりを荒立てなくないがために、言われたことをそのまま受け入れることが多かったと感じます。学校は、もっと冷静に、ドライに、判断していくことが必要でしょう。保護者に対しても、地域に対しても、学校として言うべきことはきちんと言っていくという態度が必要でしょう。
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