学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からの相談に先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第141回のテーマは「転校した際にGIGA端末のデータが引き継げない」。
一人一台端末が日常に
GIGAスクール構想によって子供が一人一台端末を使った学習をしていくことが今の学校の日常になっています。夏休みなどの長期休業においても積極的に活用している学校が多いです。普段の学習からGIGA端末を効果的に活用している学校はたくさんあります。個別最適な学びとの相性も良く、それぞれの子供の状況に対応した学びが進めやすいです。
そういった中で問題となるものが「データの引き継ぎ」です。GIGA端末を用いた学びは、それぞれの子供の学びを蓄積し、それを上手に活用していくことでより良い学びにつながります。たとえば、学習アプリでは、正解した問題と間違えた問題を踏まえ、次の時には間違えた問題を高頻度で出題するようなことが行われます。そういったことが繰り返される中でその子供の学びが効率的に積み上げられていきます。
GIGA端末のデータ引継ぎが課題に
個別最適な学びにおいてそれまで取り組んできた学びの軌跡(データ)はとても大事なものです。しかし、そのデータの引き継ぎにおいて問題が生じることがあります。現在、GIGA端末は市区町村単位で機種が決められています。また、インストールするアプリなども同様です。子供が転居などにより転校をすることになった場合、そういったことが問題となることがあります。GIGA端末は自治体から子供に貸与されています。それなので、機器は返却します。その際、自治体をまたぐ転校などの場合、先ほど大切であると指摘した「学びの軌跡(データ)」の引き継ぎができない可能性があります。
転校などの際、指導要録などの学籍データは引き継がれていきます。国で書式が示されていることで、自治体や公立私立の関係なく、データの引き継ぎができます。現在、取組みが進んでいるデジタル分野に関しては、そういったことができないことがほとんどです。今回のGIGAスクール構想は、コロナにより必要に迫られて一気に取り組みが進んだという面があります。そういったこともあり、仕組みが十分出来上がっていないものもあります。これは各学校では対応できないことも多いので、国としてデジタルデータの引き継ぎに関してのルールができてくることが望まれます。
転校以外にも似たような問題としては、学校が変わる時です。具体的には、小学校から中学校へ進学した時などです。本来はそれまでの学習に関するデータなどを引き継ぐことで、学びの質を高めることがつながります。しかし、小学校と中学校の段差においてそれがうまく引き継がれず、効果的な学びにつなげられないということがあります。自治体によっては、小学校ではiPad、中学校はChromebookとしています。小中と違う機種に触れることで色々な機種へ対応できる力を育もうというねらいです。ただそういったことで、使われているアプリなどに違いがあり、転校の時と同じようにデータの引き継ぎができないということも出てきます。
先ほども書いたように個別最適な学びにおいては、個々の学習データはとても重要な情報です。そういったものをスムーズに引き継いでいくことができるよう、アプリの開発会社などと、国、都道府県が協力し、良い仕組みができていくことが望まれます。
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