全国の小中学校で指導要録や通知表に記載される「行動の記録」について、全国の小~高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員を対象に調査した結果、「明快な評価ができていない」の回答が96%にのぼることが、School Voice Projectが2024年12月10日に発表した調査結果より明らかになった。
全国の小中学校で指導要録や通知表に記載される「行動の記録」について、文部科学省が定めた10の評価項目に基づき、児童生徒が「各項目ごとにその趣旨に照らして十分満足できる状況にあると判断される場合」に「◯」を付けるとされている。しかし、評価にまつわる関心事の1つとして、入試への影響度があげられる。「行動の記録」が審議の対象となることを明文化している学校も存在し、たとえば千葉県では「〇が1つもない場合は、審議の対象とする」といった文言が公立学校の一般入学者選抜に関する資料に記載されている。
「行動の記録」は通知表に記載されることも多く、入試にも影響するが、「児童生徒の行動内容と項目の関連が明確でない」「各学校により運用ルールが異なっている」といった疑問の声もあがっている。そこで、全国の教職員を対象に「行動の記録」の評価の実態についてアンケート調査を実施した。調査は、全国の小~高校年齢の児童生徒が通う一条校に勤務する教職員を対象に、2024年9月27日から11月5日までの期間にインターネットで行われ、54件の回答が集まった。
アンケートの結果、「行動の記録」に関して「明快な評価ができている」と答えたのは、回答者54名中2名のみで、全体の4%にとどまった。その他の回答者は「明快な評価ができていない」と答え、その状況についてさまざまな報告や意見が寄せられた。「主観的にしか評価できないため」「人によって判断基準が違うから」「クラスの中での相対的な評価になってしまっている」といった意見が多く見られた。
また、「行動の記録」の評価にあたって、「◯をつける数は1人4~6個」というような運用ルールが学校等で定められているかどうかについては、「定められている」「定められていない」の回答がちょうど同数となった。校種別の傾向として、小学校で「運用ルールが定められている」が47%だったのに対し、中学校では73%となり、小学校より厳密にルールを定めている状況がうかがえた。
さらに、「行動の記録」は不要であるという意見も多く寄せられた。「行動の記録は、誰が得をするのかわからない」「通知票は必ず作成しなければならないものではない」といった意見があり、評価の仕方の見直しが必要であるとする声も多く聞かれた。「多様性を尊重する時代に、評価の意味合いが薄れているにもかかわらず、大きな労力を注いでいる状況は続いている」といった意見もあった。
「行動の記録」は、文科省資料に「十分満足できる状況にあると判断される場合」と書かれているように、絶対評価として○を付けることが念頭に置かれているが、実際の運用にあたっては「クラスの中での相対的な評価になってしまっている」といった声や、「最低でも1つ」「進級とともに○の数を増やす」といったルールを設けているという声が上がるなど、絶対評価としての運用に難しさがあることがうかがえた。
そのような評価の難しさの解消に向けて、いくつかの自治体では「行動の記録」における「十分満足できる」状況や、校種・学年ごとの評価表を例示している。地域内や学校内で評価方法や基準を揃える際には、このような資料を参考にするのもよいという。
ただ、アンケートには「行動の記録」のあり方そのものについての否定的な意見も多く、「道徳では行動を評価しないということに決まったはずなのに、これで評価するというように一貫していない」といった意見や「多様性を尊重する時代に、評価の意味合いが薄れているにもかかわらず、大きな労力を注いでいる」という意見のように、他の教育活動・理念との一貫性の観点からそもそもの必要性を疑う声も多くあがった。
School Voice Projectでは、今後も引き続き、適切な評価のあり方について考えていくとしている。