学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまなクレームに対応する際のポイントを聞いた。第159回のテーマは「先生に年賀状を送りたいので住所を教えてほしい」。
年賀状が葉書を書く練習になる
私は大学を卒業してすぐに公立小学校の教員になりました。約30年前のことです。その当時の子供(今はもう子供ではありませんが…)と今でも年賀状を通じてずっとつながっている人がいます。小学校卒業後に会ったことはないので、年賀状だけのつながりです。電子メールやSNSなどもある時代において、20年以上も年賀状だけでつながっているということは何だか不思議なつながりです。
「年賀状」は上で書いたような微笑ましいエピソードもありますが、現状としてはその発行枚数は減少傾向にあります。「年賀状」は1949年に発売が開始され、1964年には10億枚、1973年には20億枚に達し、ピークの2003年には約44億枚が発行されていました。現在(2022年)は約16億枚の発行となっています。
ところで、小学校では葉書や封筒の書き方について学びます。現代社会においては、電子メールなどが普及しているのですが、今の時代でも葉書や封筒を使うことはそれなりにあります。年賀状は子供が葉書を書く良い練習になっているのではと私は思っています。年賀状を書く習慣というものは大事にしていきたいものです。
個人情報の扱いが時代とともに変化
ただ、その際、個人情報の扱いについては注意が必要でしょう。特に「住所」は個人情報の中でも重要度の高いものです。住所などの扱いは注意深くすべきものです。学校における個人情報の扱いについては、私が子供のころ(40年前)、住所や電話番号などが入ったクラス名簿が配られていました。私が働き出したころ(30年前)から、そういったものの扱い方に変化が生じてきました。途中からはクラス名簿や連絡網などが配られないようになりました。
学校において、子供(家庭)の個人情報について扱い方が変わったことと同様に教師の個人情報の扱い方も変わっていきました。現在は、教師の自宅の住所や電話番号、電子メールアドレスなどを伝えることはなくなっています。学校として外部とのつながりにおいて緊急の連絡が必要となるような場合は、公費で携帯電話を確保し、それを活用することが一般的となっています。
今回のテーマのように年賀状を送るために教師の住所を知りたいということに関しては少し難しさがあります。具体的な解決策としては、学校の住所を伝え、学校宛に送ってもらうということが良いでしょう。こういった形にすることで、年賀状を教師に送りたいという子供の気持ちを尊重しながら、教師のプライバシーを守ることができます。
その後、教師の判断で、自宅の住所を記入して年賀状を送るという形にしていっても良いでしょう。私が25年以上も前に担任した子供と今でも関わりを持つことができているのは、私の住所を伝えたことで年賀状のやり取りが始まったからです。今の時代ですと、年賀状という形だけでなく、電子メールやSNSなどでのつながりも可能です。こういった関わりの中で人とのつながりの大切さのようなものを学んでいくことができるのではと思います。
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