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学校のインターネット回線、もっとつながりやすくなるのでは?

 小中学校の各教室での授業づくりをはじめとして、職員室での校務DX化などに取り組む、Canva for Educationの認定教育アンバサダー(Teacher Canvassador)、一般社団法人エンターキーに所属の清水智氏が、学校の回線速度計測の重要性についてわかりやすく解説する。

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学校における児童生徒用端末からのインターネット接続速度の実測結果(令和3年5月時点)学校から直接インターネット接続の場合(平均値)
  • 学校における児童生徒用端末からのインターネット接続速度の実測結果(令和3年5月時点)学校から直接インターネット接続の場合(平均値)
  • 学校における児童生徒用端末からのインターネット接続速度の実測結果(令和3年5月時点)学校の回線を集約してインターネット接続する場合(平均値)
  • GIGAスクール構想に関する各種調査の結果について

解決できたがそれでいいのか?

「清水さん、最近うちの学校の子供から、授業中検索したり動画を見ていると画面がフリーズするって言われることが増えてさ、何が原因だと思う?」

「そうですね、現場で見て見ないと何とも言えないのですが、原因としては…」


 この会話、先日とある小学校で実際にあった会話です。GIGAスクール構想が本格的に始まり、まさに文字どおりにGIGA端末を文房具のように使っている学校なのですが、学習で使うサイトやアプリケーションによって画面がフリーズしてしまうことが頻発するということでした。

 このときは先生自身の判断で、児童端末が操作中にフリーズしないように同様の別サービスを利用したり、授業設計自体を変えたりすることで改善し、解決しました。

 しかしながら、今思うと本当にそれで良かったのかと清水は考えています。その訳は…。

1)授業に直結するデジタル教科書の利用が今後見込まれる

 2024年から始まるデジタル教科書の本格活用は、目の前に迫っている「課題」のひとつだと言えます。数年後にやってくる「デジタル教科書がある教室の光景」を思い浮かべながらお読みください。


 以下、リシード記事「2022年第二次補正予算…『デジタル教科書活用のための通信環境調査研究』とは?(2022年12月7日)」より引用。

文部科学省「学習系ネットワークにおける通信環境最適化ガイドブック」によれば、見開きデータ容量を2MB、ダウンロードに要する許容時間を3秒と仮定し、児童・生徒が一斉に閲覧する(ページをめくる)ことを想定した場合、学習者用端末で必要となる通信帯域(回線速度)は、1台あたり5.33Mbps、40人1クラスあたり213.2Mbpsだ。


 ここで注目したいのが、最後の40人1クラスあたり213.2Mbpsという数字です。普段から教室での回線速度を計測している方なら、この数値がいかに「高い」ものかおわかりいただけると思います(ぜひ、教室での回線速度を計測してみてください!)。

学校における児童生徒用端末からのインターネット接続速度の実測結果(令和3年5月時点) 出典:文部科学省「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果(令和3年8月)」

 私が注目したのは、上記のデータが学校規模に関わらず、 8時~9時に比べて11時~12時で速度が低下する傾向がみられたことです。

 これは、11時~12時は学校の授業時間帯であり、インターネットの利用者が多くなっているためと考えられます。

 また、デジタル教科書を利用するのに必要とされる2Mbpsを確保する場合の同時利用率を8時~9時の実測数から算出すると、50%以上の同時利用率を達成できた学校は35.8%にとどまりました。これは、学校のインターネット接続環境が十分に整備されていないことを示しています。

 そして、学校の回線を集約してインターネット接続する場合において同時利用率が50%以上を超えた学校は27.2%と、さらに少なくなりました。これは、集約接続では回線帯域が限られているため、同時に多くの端末がインターネットに接続すると速度が低下するからです。

 これらの結果から、2022年7月~9月時期においては学校のインターネット接続環境は十分に整備されていないことがわかります。特に、集約接続を行っている学校では、同時利用率が低く、インターネットの利用に支障をきたす可能性があります(この1年間で回線増強をどのくらいの自治体・学校で行ったのかによって数値が変わる可能性があります)。



 今後はデジタル教科書の利活用の促進だけではなく、動画コンテンツの視聴(ダウンロード)や作成(アップロード)なども多く見込まれます。大容量コンテンツが授業内でデフォルトになっていく中で、「どの時間帯でも」安定した通信回線環境というのは、学習する教室環境としては必須なのかもしれません。

2)インターネット回線の見直しが必要なケースも

校内通信ネットワーク環境等の状況 インターネット環境の現状(令和3年5月末時点) 出典:文部科学省「GIGAスクール構想に関する各種調査の結果(令和3年8月)」

 令和3年5月末時点での調査結果ではあるが、インターネットへの接続方式については、依然として3割を越える自治体などでは「学校回線を集約接続」となっています(学校数ベースに置き換えると4割を越える)。

 いずれの方法においてもメリット・デメリットは存在しますが、1人1台端末のGIGAスクール構想下の学校現場においては、端末のスペックや機能が上がったところで、接続方式がスムーズでなければ、授業時における快適性は確保できないかもしれません。

 そこで検討したいのが地区・学校全体で回線を分け合う方式(集約接続)からネットワーク帯域を増やす(直接接続)ローカルブレイクアウトへの移行です。

 これまでが、学校からのサイトへの道(回線)が1本しかなく(時間帯によっては)「渋滞」していた接続状況ですが、最新のセキュリティ方式を導入しているローカルブレイクアウトが実現できれば、サイトへの道が複数になり、かつユーザーや端末のセキュリティチェックを複数回行うため、前述したような時間帯による接続不安定などの障害を避けられると思われます。

おわりに

 今回はデジタル教科書の導入における回線速度の必要性と端末からWebサイトまでの「道」に関する話題でした。いざ回線工事をするとなると、莫大な予算と一定数の期間が必要されますのですぐに実行というわけにはいきませんが、今後の動画コンテンツ需要の増加や生成AIなど利活用の増加が見込まれる学校現場ですから、GIGAスクール構想初期に設計していた学校における通信環境に関しては見直しが必要かもしれません。

 見直しのきっかけのひとつとなるのが、インターネット回線速度の計測です。下記のボタンから回線速度計測が可能です。この機会にぜひお試しください。

リシード 学校インターネット回線速度計測
《清水智》

清水智

Canva認定教育アンバサダー。元東京都公立小学校主幹教諭。多摩地域と小笠原諸島父島の小学校で勤務。主幹教諭として学校DX化やユネスコスクールとしてのESDを推進。小笠原という知名度を生かし衛星回線やSkypeなどで遠隔授業などに取り組む。その後、長野県へ移住しエンターキーの教育ICTアドバイザーとして長野県池田町を中心に活動。白馬村の小学校で高学年理科専科も行っている。

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