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【クレーム対応Q&A】学校でケガ、慰謝料を払ってほしい

 クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第231回のテーマは「学校でケガ、慰謝料を払ってほしい」。

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 学校に寄せられるさまざまな相談やクレーム。保護者や地域からのクレームに先生はどのように対応するのが良いだろうか?クラス担任として豊富な経験がある鈴木邦明氏に、学校へ寄せられるさまざまな相談に対応する際のポイントを聞いた。第231回のテーマは「学校でケガをしたので、慰謝料を払ってほしい」。

損害賠償請求などの裁判を
起こされる可能性

 学校教育活動では、安全への配慮をしていても事故などが発生してしまうことがあります。そういった際の治療費や見舞金に関しては、独立行政法人日本スポーツ振興センターが「災害共済給付」という形で医療費、障害見舞金または死亡見舞金の支給を行なっています。そういったこともあり、学校(自治体)が治療費を負担することはないのですが、監督責任などと関連して、損害賠償請求などの裁判を起こされる可能性はあります。私は8年前まで公立小学校の教員をしていたのですが、小学校教員を辞める数年前から、教員向けの保険に入っていました。自分自身に対して損害賠償請求などが起こされた時に補償する保険です。私の周りの教員でもそういった保険に加入している人は少なくなかったです。

 学校(教員)に対する訴訟が増えた背景には、社会の変化が関係しています。2001年に「消費者契約法」というものが施行されました。これは、企業などに対し、何か問題などがあった際、消費者が訴えることができるという法律です。消費者の利益の擁護を図り、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目指したものです。社会において、こういった法律などが人々の暮らしを良い方向へ影響を及ぼすことがあります。この法律は、一般的に弱い立場である消費者を守ることにつながっています。ただ、逆にそれまでは問題となっていなかったことが問題となってしまうような場合もあります。自分の要求が常識の範囲を超えてしまうケースなどです。学校へのクレーム、理不尽な要求などが増えたことなどはそういった社会の流れと関係しています。

 サービス業では「お客様は神様です」という理念を掲げている企業もあります。一般の企業では、商品を購入してくれる人は重要で「お客様」として丁寧に扱います。学校の場合、子供や保護者は一般企業での「お客様」とは少し違いがあります。ただ保護者は税金を払っています。税金を払った対価として、学校サービスを受けているという考えをする人もいます。そういった考えでは、一般の商品などと同じように、支払った金額分のサービスを受け取ることが当然だということにもなります。そういった考え方で、学校で自分の子供が何らかの不利益(いじめ、低学力、ケガなど)を被った際に、学校に対して損害賠償などを求めてくることがあります。

学校として備えておくべきこと

 そういった状況に備え、学校として事前にできることがあります。当たり前なこととしては、安全点検などを行い、子供がケガなどをしそうな可能性を減らすことです。日常から安全への感度を高めることも必要でしょう。また、保護者と良好な関係を築くことも重要です。学校(教員)と保護者の関係が良好であれば、大きな問題とならないような出来事も、関係が悪い場合は、クレーム案件となってしまうこともあります。さらには、自治体として弁護士などの専門家を雇うこともこれからの時代は必要でしょう。線引きが難しい案件において、法的な専門知識のある弁護士にきちんと間に入ってもらうようなやり方がこれからの時代は必要なのでしょう。

 本企画では、読者の皆さまからの質問を受け付けています。下記のボタンをクリックして表示されるフォームより送信ください。実際に学校へ寄せられた相談のほか、保護者が学校へ伝えた相談など、鈴木先生に対応方法を聞いてみたい相談事例を募集します。

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《鈴木邦明》

鈴木邦明

帝京平成大学 人文社会学部児童学科 准教授。1971年神奈川県平塚市生まれ。1995年東京学芸大学教育学部卒業。2017年放送大学大学院文化科学研究科修了。神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に計22年間勤務。2018年からは帝京平成大学において教員養成に携わっている。「学校と家庭をつなぐ」をテーマに保護者向けにも積極的に情報を発信している。

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