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インターネット回線速度計測は、血圧計測のようなもの

 小中学校の各教室での授業づくりをはじめとして、職員室での校務DX化などに取り組む、Canva for Educationの認定教育アンバサダー(Teacher Canvassador)、一般社団法人エンターキーに所属の清水智氏が、学校の回線速度計測の重要性についてわかりやすく解説する。

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 みなさんはご勤務されている学校における学校インターネット回線速度、どの程度の速さか把握されていますか?

 え? 回線速度って? 速度っていうくらいだから早ければいいの? 低いとどうなるの? 不安…。といった声が聞こえてきそうです。

 この記事では、小中学校の各教室での授業づくりをはじめとして、職員室での校務DX化のお手伝いなどを行う、Canva for Educationの認定教育アンバサダー(Teacher Canvassador)でもある一般社団法人エンターキーに所属する清水が、学校の回線速度を計測するメリットについて理由とともに3つお伝えします。以下、概要です。

◇概要◇
(1)回線速度の計測は血圧計測のようなもの
(2)トラブル発生時の解決のヒントが回線速度の計測
(3)今後に備えて校内ネットワークの環境改善へ

(1)回線速度の計測は血圧計測のようなもの

 筆者は、学校インターネット回線速度の計測は、血圧の計測と似ていると感じています。一般的に、血圧を計測することは、健康をチェックするために大切なことです。血圧を測ることで、自分の健康状態を知り、医者と相談して予防や治療の方法を考えることができます。

 これを学校におけるインターネット回線速度に置き換えてみます。GIGAスクール構想以降、日常活用が一般的になってきているこの数年においては、インターネット回線が安定的に運用されていることはもはや最低限ラインとも言えます。少しでも不安があれば、校内・行政・民間事業者などの専門家に相談して、予防や対策を考えることが重要です。

 端末の見た目をチェックするだけではなく、見えない回線速度を数値化することで、健康的な回線を維持することが可能になるのです。

(2)トラブル発生時の解決のヒントが回線速度の計測

 そうはいってもトラブルは突然やってくるものです。そして、そのトラブルはここぞという大事な場面に限ってやってくることも…。そんなことにはならないように、日常生活の中で「障害の切り分け」という考え方が大事になってきます。

 この「障害の切り分け」という考え方において、「Type_TのTT(とにかくやってみたトーク)| 第169回」での津下哲也先生(姫路大学 教育学部こども未来学科)のお言葉をお借りすると、教員がICT活用授業をするのに必要な3つの力(ICT活用における授業力)は以下のとおりです。

  1. ICTを活用した授業を構想する力

  2. ICTを活用した授業を遂行する力

  3. ICTに関する基礎的なリテラシー

 1と2はいわゆる授業をする力であり、これまでの授業力とも関係が深い部分ではありますが、3に関してはGIGAスクール構想時代の「新教師力」ともいえるかもしれません。これはこの数年における教室内での日常的な運用における「初期対応」ともいえます。

 何か障害が起きたときに、再起動をしたりログアウトをしたりする「対応力」。その判断の基準となるのが「障害の切り分け」であり、回線速度の計測はその判断をする際のひとつの指針にもなります。

 回線速度の数値がいつもと違うとなれば、ネットワーク回線の障害と判断することにつながるのではないでしょうか。

 回線速度の計測方法を「知っている」「できる」ことで、担任は初期対応が可能となり、授業時間内での端末の回復ができるかもしれません。

(3)今後に備えて校内ネットワークの環境改善へ

 文部科学省は2023年2月3日、「通信ネットワーク環境の評価(アセスメント)の実施について(依頼)」を発表しました。これは、校内のどこにどの程度の不具合があるのかを確認することで、行政や事業者などのサポートを受け、校内の環境改善につなげやすくするためです。


 また、今後MEXCBT(メクビット)による全国学力・学習状況調査、デジタル教科書の本格的導入、AIツールの利用拡大など、多くの児童生徒が一斉に回線に接続する場面が増えることが予測されます。

 この記事をお読みの「今」は不具合がなくとも、明日には予想しない障害が発生するかもしれません。中長期的に安定的なGIGAスクール構想の推進のためにも、日常的な回線速度計測を強くお勧めします。

 最後に、

 文部科学省の仕様書では、「拠点と学校間回線は最大1Gbps以上のベストエフォート回線(※)もしくはギャランティ回線(※)」と記載されています。動画視聴などでは1人あたり2Mbpsが必要であるとしています。

学校の回線速度を計測する

 まずは、学校に最適化された「リシード 学校インターネット回線速度計測」で計測をしてみてはいかがでしょうか。このサービスででは、実際の測定結果が示され、計測している学校(教室・施設)における回線速度が数値化されます。

 肌で感じていた速度ではなく「数字」で表されることにによって、より具体性が出ます。校内のいろいろな箇所で測定し、校内での速度ランキングを作成するのも面白そうです。意外なところの増強が必要だったりするかもしれません。

※用語説明
ベストエフォート回線:ベストエフォート(best effort)とは、日本語でいうと「最大限の努力」といった意味。
ギャランティ回線:ギャランティとは「保証」という意味。
《清水智》

清水智

Canva認定教育アンバサダー。元東京都公立小学校主幹教諭。多摩地域と小笠原諸島父島の小学校で勤務。主幹教諭として学校DX化やユネスコスクールとしてのESDを推進。小笠原という知名度を生かし衛星回線やSkypeなどで遠隔授業などに取り組む。その後、長野県へ移住しエンターキーの教育ICTアドバイザーとして長野県池田町を中心に活動。白馬村の小学校で高学年理科専科も行っている。

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