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【特別支援学級】話を聞くのが苦手な子供への寄り添い方

 特別支援学級の子供たちに寄り添うためには、どんなことが大切なのか? 長年小学校の特別支援学級で支援員として勤務してきた ももあいり氏に接し方の工夫等を聞いた。今回は、子供が座って話を聞き、課題を理解して取り組むためのポイントを紹介する。

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 特別支援学級の子供たちに寄り添うためには、どんなことが大切なのか? 長年小学校の特別支援学級で支援員として勤務してきた ももあいり氏に日々子供たちと接する中で心がけていること、接し方の工夫等を聞いた。今回は、子供が座って話を聞き、課題を理解して取り組むためのポイントを紹介する。

待つこと、じっと座っていること、静かに話を聞くのは苦手



 特別支援学級で過ごす子供たちの中には、集中できる時間が短い子も多くいます。初めて支援級を担当される先生は、「えっ、こんなに短いの?」と驚くかもしれませんが、子供たちに集中力がないわけではありません。もちろん飽きっぽい子や、日によって集中が続かないこともありますが、好きなことに対しては時間いっぱい取り組めますし、「もうおしまい? もっとやりたい!」という子もいます。しかし、じっと待つことや座っていることが苦手な子も多いので、「座っていること+静かに話を聞くこと」は、子供によってはかなりハードルが高いことになります。

 朝の会での1日の予定や連絡事項、学校生活のルール等、子供たちに伝えなければならないことは、日々たくさんあります。図工や生活、理科や家庭科等、教科によっては手順の説明が必要な場面も多いです。どうすれば子供たちが気をそらさずに静かに話を聞き、理解して取り組めるようになるのか。そのための配慮として、いくつかのコツがあります。

席につかない子を無理に座らせない



 チャイムが鳴ってもウロウロしている子がいたとします。その子はウロウロすることで気持ちを落ち着かせているかもしれないので、無理に座らせようとせず、見守りながらようすを見て、その子のタイミングで座るのを待つ、というのも配慮のひとつです。

 机に突っ伏していたり、ぐずぐずしていたりする子には、まず体調を確認して理由を探ります。たとえば眠さから背筋を伸ばせないのなら、寝た時間を確認して「夜は9時には布団に入ろうね」等と声を掛けます。「先生のお話を聞こう、朝の会始まるよ」と言っても反応が薄い場合は、「今日の給食何かな、3時間目に体育あるよ」等、その子が好きそうなことで気を引き、少しでもやる気になれそうな声かけをします。

 ひとりひとり状況が違うので、全員が着席できるようになるには時間がかかるかもしれませんが、座り方と先生のお話を聞くときの姿勢について、丁寧に説明を続けていくと、少しずつできるようになるでしょう。

情報量が多いと混乱する子には、刺激の少ない環境を



 支援級の子供たちの中には、耳からの情報が入りやすい子や、目からの情報が入りやすい子がいます。情報量が多いと混乱してしまいがちな子には、できるだけ刺激が少ない環境のほうが落ち着きやすいです。何かと刺激になりやすく、気になることが多く落ち着かない子への配慮としては、教室内の色の数を少なくする、モノを減らす、整理整頓する、リモコンやDVD等は引き出しにしまう、棚にカーテンをつける等、その子が気になりそうなことを覆う、隠すという工夫ができます。

 モノだけではなく、ヒトが刺激になる場合もあります。相性の合わない子、機嫌の悪い子や声の大きい子が苦手なときは、座席を離す、机を壁に向けて視界に入らないようにする、パーテーションを使う等の配慮をします。

子供たちに話すときの4つのポイント



 他のことをしながら子供たちと目を合わせず、一度に多くのことを早口で話すのは、子供たちの負担になりやすいためNGです。たとえば体育の授業前に、「縄跳びをするから筆箱と縄跳びと水筒を持って、○分になったら鉄棒の前に集合、水筒は日陰にまとめて置いて、背の順で並んでね」というように、いくつもの情報を一度に話しても、正確に聞き取って行動できる子は、ほんの数人でしょう。複数の指示を言葉だけで出されても、「今、先生なんて言ったの?」と困ってしまう子が多いです。

 子供たちに伝わりやすく話すには、まず先生とひとりひとりの目が合っているかを確認します。話すポイントは、ひとつずつ・ゆっくりと・説明は短めに・はっきりと聞き取りやすい声のトーンで話すこと、この4つです。言葉だけではなく、縄跳びの場合は縄跳びのジェスチャーをする、縄跳びの絵を黒板に描く、縄跳びのイラストカードを黒板に貼りながら説明すると、より子供たちに伝わりやすくなります。待つことが苦手な子が多いので、お話は短めなほうが飽きずに聞くことができるでしょう。

「ちゃんと」「きちんと」は人によって受け取り方がさまざま



 人によって、言葉への感覚とイメージは異なります。特に抽象的な表現は、人によって受け取り方が大きく違うでしょう。大人が使いがちな「ちゃんと」「きちんと」という言葉は、支援級の子供に限らず、子供たちには伝わりにくく、イメージしにくい言葉です。おうちの人が子供に「ちゃんとできた?」と聞いて、子供が「やったよ!」と答えるので確認すると全然できていない。「できていないじゃないの、ちゃんとやりなさいよ」「え~、やったのに」というようなやり取りはありがちですが、これは抽象的表現である「ちゃんと」という言葉へのイメージが異なるためだと思います。

 子供たちの経験値に合うような、伝わりやすく、そのものをイメージしやすい具体的な言葉を選ぶこと、言葉だけではなくジェスチャーやイラストを使うことで、子供たちはより理解しやすくなるでしょう。

少しずつ、一歩ずつ



 子供たちは産まれてから育つまでの環境がひとりひとり違い、個人差はとても大きいです。学校は社会性を育むところなので、ひとりひとりにゆっくり合わせてばかりもいられないですが、子供たちが少しずつ自信をつけて、ゆっくりで良いから一歩ずつ進める、居心地よく過ごせるような場所であってほしいと願っています。先生方もどうか頑張りすぎず、気分転換しながら学校生活を楽しめますように。応援しています。

もも あいり


 大学卒業後、教育系出版社で約5年間勤務し、進路指導教材や心理学に関する書籍の企画編集を担当。小学校の特別支援学級で支援者として複数の学校に計12年間勤務。保育園、子育てひろばでの勤務経験も含めると、約30年間教育に携わっている。子育て支援員、子育てアドバイザー資格取得。著書は、「魔法のことばかけで子供がゴキゲン!~子育てを楽しむための悩むママへおくる本~(Kindle)」等。
《もも あいり》

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