文部科学省は2021年11月22日、学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル「学校の新しい生活様式」を改訂した。学校関係者の感染状況データや分析結果を更新するとともに、子供の感染に関する最新知見、抗原簡易キットや透明マスクの活用、ワクチン接種に係る留意点等を追記している。 「学校の新しい生活様式」は、「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン」の考え方に基づき、学校の衛生管理に関する具体的な事項について、学校の参考となるよう作成したマニュアル。今回、2021年11月時点での最新の知見に基づき、一部の内容を見直した。 改訂版のマニュアルでは、学校の感染状況について文部科学省や厚生労働省等から公表の最新データや分析に更新している。2020年6月1日から2021年10月31日までの間の感染報告は、児童生徒等8万4,211人、教職員7,843人。2021年7月からの感染拡大期においては、児童生徒等の感染者数も増加した。 感染経路は、「家庭内感染」が小学校70%、幼稚園66%、中学校57%、特別支援学校42%でもっとも多い一方、学校段階が上がるほど「感染経路不明」の割合が増加。高校は「感染経路不明」が40%、「学校内感染」が19%と、他の学校種と比較して高い割合を示している。教職員の感染経路は、「感染経路不明」が58%、「学校内感染」は10%であった。 「学校内感染」および「感染経路不明」を含め、同一の学校で複数の感染者が確認された事例は9,813件。このうち、5人以上確認された事例は3,300件(小学校1,047件、中学校801件、高校1,382件、特別支援学校70件)。「最近では小中学校においても件数が増えていることに留意が必要」と記している。また、10人以上の感染事例を分析すると、高校の部活動や寮の他、放課後児童クラブ・デイサービス等関係の事例が多くなっている。 子供への感染に関する特徴については「小児例は無症状者/軽症者が多い」「若者の重症化、死亡の割合は低い傾向」と、最新の知見に更新。従来株より感染性が高いことが示唆されているデルタ株については「デルタ株が子供に感染した場合も従来株より重症化する可能性を示す証拠はなく、多くが無症状から軽症で経過している」と説明している。 抗原簡易キットについては、教職員や児童生徒等の有症状者が直ちに医療機関を受診できない場合の活用を追記。表情や口の動きが見えつつ鼻や口元が覆われる「透明マスク」の活用、マスクの素材等によって効果に違いがあり不織布マスクがもっとも高い効果をもつこと等も追記している。 新型コロナワクチンと学校教育活動に関しては、「希望する教職員が接種を受けることは重要」「ワクチン接種の有無によって学校教育活動に差を設けることは想定されていない」「接種を受ける、受けないによって差別やいじめなどが起きることのないように指導、保護者に対しても理解を求める」「何らかの理由で生徒等の予防接種歴を把握する場合には個人情報としての取扱いに留意」を追記した。 また、保健所の業務がひっ迫している場合の対応では、濃厚接触者等の候補者リスト作成、臨時休業の要否の検討等を追記。新型コロナウイルス感染症対策分科会提言の「新たなレベル分類の考え方」を踏まえ、マニュアルにおける地域ごとの行動基準の設定の考え方をレベル1~3に更新している。