教育業界ニュース

IGS、非認知能力白書を発行…51万件のデータから学校教育の実態を分析

 Institution for a Global Society(IGS)は2026年3月、生徒ひとりひとりの強みを可視化・育成するための非認知能力測定ツール「Ai GROW(アイ・グロー)」を通じて蓄積した大規模データの分析報告書「非認知能力白書 2025年度版」を発行した。

教材・サービス その他
非認知能力白書 2025年度版
  • 非認知能力白書 2025年度版
  • 他者評価 学年別平均スコアの推移(9項目)IGS作成
  • 自己評価 学年別平均スコアの推移(9項目)IGS作成
  • 海外比較 他者評価スコア(評価基準差を含むため参考値)IGS作成
  • 自己評価過小評価の割合(左:全体、右:項目別)IGS作成

 Institution for a Global Society(IGS)は2026年3月、生徒ひとりひとりの強みを可視化・育成するための非認知能力測定ツール「Ai GROW(アイ・グロー)」を通じて蓄積した大規模データの分析報告書「非認知能力白書 2025年度版」を発行した。全国532校20万4,190名から収集した51万1,122件のデータを分析し、日本の学校教育における非認知能力の実態を体系的に明らかにした。

 分析期間は2020年4月から2025年11月まで。受検件数は51万1,122件、対象人数は20万4,190名、対象校数は532校(全国47都道府県)。「Ai GROW」は2019年よりサービス提供を開始しており、その蓄積データの一部を分析対象としている。

 協調性・自己制御・コミュニケーション力・リーダーシップなど、テストでは測りにくい「非認知能力」が、学業・就労・健康・社会参加といった長期的な人生の成果に深く関わることは、国際的な研究によって示されている。しかしその一方で、数値として捉えたり、複数の視点から比較・分析したりすることが難しい領域であるため、測定・可視化の手段が十分に整備されていない状況にある。「どのようなデータが、どの程度、どのような形で得られるのか」について、共有された参照情報はまだ十分とはいえないという。

 非認知能力白書は、「実際にこのようなデータが取得できる」という事実を整理し、測定・活用を検討する教育関係者が参照できる実践的な資料として発行した。IGSは、この白書が学校・教育行政・研究機関との新たな連携へとつながることを願っているとしている。

 白書では、25コンピテンシーのうち自己評価・他者評価の双方で有効回答率が特に高い9項目(課題設定、創造性、論理的思考、個人的実行力、自己効力、決断力、表現力、共感・傾聴力、影響力の行使)に絞って分析している。信頼性の高いデータがそろう項目に集中することで、学校・学年間の比較や経年トレンドをより精度高く分析している。

 分析の結果、3つの重要な発見が明らかになった。1つ目は、中学3年から高校1年への移行期に「見逃せない転換点」があること。他者評価は中学1年から高校3年にかけて全9項目で緩やかに上昇するが、自己評価では、高校入学時に広範な低下が観察される。これは能力の低下ではなく、新しい参照集団の中で自己認識が揺らぐことによるものと考えられる。この時期を放置すると萎縮や意欲低下につながるリスクがある一方、適切な支援設計により回復を早めることができる。高校入学直後は、非認知能力育成において介入効果が高い「タイミング」だといえるという。

 2つ目は、「影響力の行使」は国際比較でもっとも低い水準にあるが、環境設計によって変化し得る領域であること。継続受検者がもっとも成長した項目は「影響力の行使」だが、国際比較ではインドより5から7ポイント低く、日本がもっとも低い水準にある領域である。一方で学校間の差が存在し、環境設計によって変化し得ることがデータで示されている。発言・主導・リーダーシップの機会を意図的に組み込むことで、さらなる成長が期待できる。

 3つ目は、自己評価と他者評価は「別の情報」であり、目的に応じた使い分けが重要であること。83%の生徒が自己評価を他者からの評価より低く見積もっており、その差は平均約10ポイントにのぼる。これは謙遜文化の影響も考えられるが、それだけでは説明できない。2つの評価がそもそも異なる側面を測っているためである。他者評価は「実際にどう見られているか(発揮された能力)」を、自己評価は「自分をどう認識しているか(内省)」を示す。両者の特性を踏まえて使い分けることで、生徒の実態をより正確に把握することができる。目的に応じた使い分けを設計に組み込むことが重要だという。

 監修者の早稲田大学文学学術院・小塩真司教授は「非認知能力には、非認知性・測定可能性・予測可能性・介入可能性という4つの条件があります。白書で報告される内容は、我々が非認知能力をどのように考えていくべきかについて、多くの示唆を含んでいます。この観点を通じて、子供たちの世界がより豊かに、そして社会全体がより多様で豊かな社会になることを期待しています」とコメントしている。

 「Ai GROW」は、IGSが2019年4月にリリースした、生徒ひとりひとりの強みを可視化・育成するための非認知能力測定ツール。「考える力」「自分自身との向き合い方」「他者との関わり」「社会や集団との関わり」の4領域・25コンピテンシーを、生徒の自己評価と他者評価によって可視化する。

 知識を問う従来のテストでは捉えにくい非認知能力の測定には、多面的な視点が不可欠。「Ai GROW」では自己評価に加えてクラスメイトによる他者評価を実施し、評価者ごとの傾向を独自のアルゴリズムで補正することで、より公平で信頼性の高いスコアを算出する。国内では47都道府県、国内外の小学校・中学校・高等学校540校で有償導入されており、文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校230校のうち63校でも活用されている(2025年11月時点の実績)。

《吹野准》

この記事はいかがでしたか?

  • いいね
  • 大好き
  • 驚いた
  • つまらない
  • かなしい

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top