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LGBTQへの差別的言動6割が見聞き…多様な性の授業で変容

 小学校高学年児童の6割が、日常生活でLGBTQへの差別的言動を見聞きしていることが2021年10月21日、ReBitの調査結果から明らかになった。その一方、多様な性に関する授業後は、9割が「今後は言わない」と回答する等、知識的側面や価値的・態度的側面に変容がみられた。

教材・サービス 授業
今までに家や学校、テレビやマンガ等で、オカマ・ホモ・オネエ等と言ってバカにしたり笑ったりしているところを見たり聞いたりしたことがあるか
  • 今までに家や学校、テレビやマンガ等で、オカマ・ホモ・オネエ等と言ってバカにしたり笑ったりしているところを見たり聞いたりしたことがあるか
  • 今までに家や学校で、誰かに対してオカマ・ホモ・オネエ等と言って笑ったことがあるか
  • これからは、誰かに対してオカマ・ホモ・オネエ等と言わないようにしたい
  • 授業前後の回答比較「性別は男か女の2つしかない」
  • 授業前後の回答比較「男の子は女の子を好きになり、女の子は男の子を好きになるのがあたりまえだ」
  • 授業前後の回答比較「男の子のからだで生まれた人はみんな自分のことを男の子だと思っていて、女の子のからだで生まれた人はみんな自分のことを女の子だと思っている」
  • 「いろいろな違いを大事にするために、あなたができる工夫はどんなことか」自由記述を5つに大別し分析
  • 授業概要
 小学校高学年児童の6割が、日常生活でLGBTQへの差別的言動を見聞きしていることが2021年10月21日、ReBitの調査結果から明らかになった。その一方、多様な性に関する授業後は、9割が「今後は言わない」と回答する等、知識的側面や価値的・態度的側面に変容がみられた。

 「小学校高学年における多様な性に関する授業がもたらす教育効果調査」は、多様な性に関する授業を教員が実施することで小学5~6年生の知識的側面、価値観・態度的側面にどのような効果をもたらすかを調べることが目的。ReBitが制作した多様な性に関する教材キット「小学校高学年版Ally Teacher’s Tool Kit」を用いて、小学校教員が授業を実施し、授業前後で児童が回答したアンケート(選択式)とワークシート(記述式)を分析した。調査期間は2018年9月~2021年5月。有効回答数は849部。

 授業は、小学校教員がおよそ45分で実施。道徳の時間で実施する可能性を考慮して、文部科学省が2016年に作成した「小学校学習指導要領 解説 特別の教科道徳編」における内容のうち、「2-11 相互理解・寛容」「3-13 公正・公平・社会正義」を単元として設定した。

 授業前に「今までに家や学校、テレビやマンガ等で、オカマ・ホモ・オネエ等と言ってバカにしたり笑ったりしているところを見たり聞いたりしたことがあるか」と聞いたところ、「ない」と回答したのは19.1%。59.2%が「ある」、21.5%が「わからない」と回答し、小学校高学年の約6割が、日常生活の中で差別的な言葉に接していることがわかった。

 授業前に「今までに家や学校で、誰かに対してオカマ・ホモ・オネエ等と言って笑ったことがあるか」との質問には、19.9%が「ある」、20.2%が「わからない」、59.8%が「ない」と回答。約2割の子供が自身でも差別的な言葉を発した経験があった。

 一方、授業後は「これからは、誰かに対してオカマ・ホモ・オネエ等と言わないようにしたい」との設問に91.8%が「はい」と回答。約9割の子供が、オカマ・ホモ・オネエ等が差別的な言葉であることを学習し、使わないようにしたいと考えていた。

 授業前後の回答を具体的に比較すると、性別二元論に関する設問「性別は男か女の2つしかない」は、授業前に34.3%だった「正解」が、授業後には91.7%へ57.4ポイント上昇。性的指向に関する設問「男の子は女の子を好きになり、女の子は男の子を好きになるのがあたりまえだ」は、授業前に49.3%だった「正解」が、授業後には92.6%と43.3ポイント上昇した。

 また、性自認に関する設問「男の子のからだで生まれた人はみんな自分のことを男の子だと思っていて、女の子のからだで生まれた人はみんな自分のことを女の子だと思っている」は、授業前に43.2%だった「正解」が授業後には90.8%と、47.6ポイント上昇。多様な性の授業は、多様な性に関する知識的側面において教育効果を発揮することが明らかなった。

 「いろいろな違いを大事にするために、あなたができる工夫はどんなことか」という設問に対する授業後の自由記述について5つに大別し分析した結果は、「自分らしさを大切にする、自分の『すき』や『得意』を大切にする」89%、「その人らしさを大切にする、尊重する」88%、「『普通』や『あたりまえ』を決め付けない、押し付けない」80%の順に多かった。

 ReBitは調査結果から「多様な性に関する授業は、知識的側面だけでなく価値的・態度的側面についても変容が見られることから、授業後の行動変容につながり、子供たちがアライ(LGBTQの理解者)となっていくことが期待できる。また、セクシュアリティの違いのみならず、全般的な『ふつう』『あたりまえ』等に言及していることから、『多様な性』はもちろんのこと、『多様性』に対する意識を高める教育効果があると考えられる」と考察している。

 ReBitでは、LGBTQを含めたすべての子供がありのままで大人になれる社会を目指し、「学校で多様な性について教えたい」教職員を応援するため、小中学校版「Ally Teacher's Tool Kit」、教職員研修版「Ally Teacher's Tool Kit」、教職員向けLGBTオンライン情報センター「Ally Teacher's School」、児童向け出張授業・教職員向け研修(有料)等を提供している。
《奥山直美》

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