小中学校への1人1台端末の整備が全国で進み、GIGA端末導入元年となった2021年。端末導入による困りごととして、教育現場全体は「環境」、児童生徒は「学習効率」、先生は「授業方法」について課題を抱えているケースが多いことが、教育ネット総合研究所の分析によりみえてきた。 教育ネット総合研究所は、2021年5月下旬に実施したICT教育の勉強会において意見交換がなされた「GIGA端末導入での困りごと」についてのデータを集計・分析し、「GIGA端末導入元年、見えてきた課題」として発表した。勉強会に参加した教職員や教育委員会、ICT教育関連企業等の、現時点でのGIGA端末導入による困りごとを知ることができる。 GIGA端末導入によるICT教育全体の困りごとについては、「環境」が23%ともっとも多く、ついで「学習効率」12%、「授業方法」11%、「機能周知」11%、「セキュリティ」8%と続いた。環境についての具体的な困りごととしては、「WiFiルーターが混むと動きが遅い」「YouTubeで優良なビデオ教材があるが、フィルタリングですべて見られない」「先生側と生徒の権限が違い、生徒が見られないサイトがある」等、通信環境や利用制限に関する意見があがった。 児童生徒・先生それぞれのGIGA端末導入による困りごとについて、児童生徒は、「環境」24%に続いて「学習効率」21%、「授業外利用」17%、「モラル」9%という結果に。先生は、「環境」22%に続き「授業方法」16%、「機能周知」15%、「セキュリティ」13%となった。 児童生徒の「学習効率」に関する意見では、「授業中に関係のないことを調べる子が出てくる」「導入アプリやサービスの機能を駆使して児童間でチャットを行ってしまう」等の意見があがった。「授業外利用」については、「夜、保護者が寝た後、GIGA端末でずっとYoutubeを見ている」「持ち帰った端末を時間制限なく使っている」「ドリル等の学習コンテンツを用意していないので、自宅で活用できない」といった意見がでた。先生の「授業方法」の困りごとは、「ツールだけあっても活用が難しい」「わかりやすいマニュアルがない」「教師のスキルに差があり、授業での活用方法に差がある」等の声があがっており、急速な環境整備に戸惑う現場のようすがうかがえる。 また、学校・家の困りごとについても意見を分析。学校ではやはり「環境」についてが多く、「クラス数に対して電子黒板が少ない」「大型テレビに接続しても音声が出ない」等ハード面で問題を抱えているケースがみられた。「モラル」に関する困りごとでは深刻な面もあり、「生徒が他の生徒になりすましてログインし、いたずらをする」「活用することばかりが優先になって、情報モラルの指導がなかなか進んでいない」といった意見があげられた。家の困りごとでは、「環境」に続いて「学習効率」「授業外利用」が多く、「サボっていても気付かれないので遊んでしまう」等の意見があった。 これから懸念される心配事としては、「著作権や個人情報に関する問題」「長時間利用による健康被害」「AIがもたらす人間的思考の欠如」「デジタルタトゥーについての理解」「性犯罪に繋がるような事例の撲滅」「依存にならないための使い方について」「禁止ではなく教育が必要」等、さまざまな意見が提示された。調査結果は、教育ネット総合研究所のWebサイト内プレスリリースに掲載されている。