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【EDIX2021】授業での機器活用と先生方の負担軽減が焦点

 GIGAスクール構想により小学校・中学校をはじめとして1人1台端末の環境が整備されつつある。今回のEDIXでは子どもたちの学ぶ環境と先生方の働き方がいかに改革されるかに焦点が移ったと感じられた。注目の出展製品を紹介する。

ICT機器 授業
「ワイードプラス」は2画面並列表示で教室の板書も生きる(サカワ)
  • 「ワイードプラス」は2画面並列表示で教室の板書も生きる(サカワ)
  • RM6502Kは教育委員会向け限定モデル(BenQ)
  • 「dynaSchool Account Manager」でアカウント管理(Dynabook)
  • 堅牢設計のデタッチャブルな2in1タブレット「K60」(Dynabook)
  • Chromebook 3100 2-in-1(デル・テクノロジーズ)
  • インタラクティブスタディ(シャープ)
 コロナ禍によりGIGAスクール構想も前倒しになり、全国的に小学校・中学校をはじめとして1人1台端末の環境が整備されつつある。その中にあって、今回のEDIXでは、授業やオンライン学習で必要なさまざまな機器を利用することで、いかに子どもたちの学ぶ環境と先生方の働き方が改革されるかに焦点が移ったと感じられた。以下に注目の出展製品を紹介する。

創業100周年「サカワ」による黒板革命



 電子黒板は、板書と投影スライド、児童・生徒の1人1台端末をどのように組み合わせて授業を展開するかのイメージがつかないという先生方の声を少なからず聞くことがある。また投影するスライドと板書を両立させる場合、国語は右から、英語や数学は左からの板書で、中央に固定されたプロジェクターでは非常に使い勝手が悪くなり、大きなスライドレールが必要になるケースもあるという。

 創業100周年を迎えた黒板メーカー「サカワ」のウルトラワイドプロジェクター「ワイードプラス」は1台で2台分の大画面が表示できる。この「ワイードプラス」ならば、投影画面を左・中央・右とリモコンでスライドでき、スライドと先生の板書がバランスよく配置できる。また映写に対応した「サンヤクブルーグレー黒板」は、プロジェクターが直接映写できる。ブルーグレーの黒板ではチョークの使用感もそのままに、映写とチョーク両方の見やすさが追求されていた。

 ハイブリッド黒板アプリ「Kocri for Cloud」はネット環境とブラウザ(Google Chrome推奨)があれば、児童・生徒の端末との連携や問題の配布・集計などが可能になる。黒板を中心にデジタルとアナログを融合することで、さまざまな授業アイデアが実現できるのではないだろうか。

「ワイードプラス」は2画面並列表示で教室の板書も生きる(サカワ)
「ワイードプラス」は2画面並列表示で教室の板書も生きる(サカワ)

機能を厳選して低価格を実現した「BenQ」の電子黒板



 電子黒板を変えると言っても、高機能のものは高額で、なかなか予算の確保が難しい場合があるだろう。特に教育委員会で地域一括導入するとなると台数も多くなるだけに、そのハードルはさらに高くなる。こうした相談や要望を受けて「BenQ」では、教育委員会向け限定モデル「65インチ電子黒板RM6502K」をリリース。従来製品の機能を厳選して低価格を実現した。コラボレーションの機能を使えば、リモート環境における双方からの書き込みもほぼ遅滞なくリアルタイムで共有でき、同じ場所にいなくとも協働学習が実現できるため関心が高まっているという。抗菌ガラスの採用は教室の安全安心にも心強い。

RM6502Kは教育委員会向け限定モデル(BenQ)
RM6502Kは教育委員会向け限定モデル(BenQ)

GIGAスクール構想による教育現場の負担を軽減する「Dynabook」



 GIGAスクール構想による1人1台端末の導入では、教育現場のニーズに合わせる形で導入と運用・管理のパッケージが求められている。この新年度は、入学・卒業生といった児童・生徒の出入りがあり、アカウント管理に頭が痛いという先生方の声も多かった。「Dynabook」はこうした先生方の負荷をいかに低減できるかに注力。Dynabook独自に開発した「dynaSchool Account Manager」では学校単位でのMicrosoft 365 Educationのアカウント登録・管理・削除が使い慣れたExcelベースのツールで可能になり、「Job Canvas」では児童・生徒の端末にある学習ツールすべての学習状況を可視化。長期の休みや持ち帰りでの端末利用の管理にも役立つ。

「dynaSchool Account Manager」でアカウント管理(Dynabook)
「dynaSchool Account Manager」でアカウント管理(Dynabook)

高校や大学、教員用の端末には高いスペックが求められる傾向も



 Google for Educationやクラウド環境の利便性などもあって、小学校や中学校におけるGIGAスクール端末にChromebookが採用された教育現場も多い。「デル・テクノロジーズ」では「Chromebook 3100 2-in-1」を主力商品とする一方で、高校や大学への端末整備や教員用の端末整備に、さらにスペックの高い、モニターを重視した端末やWindows搭載モデルが求められる傾向も出てきたという。背景にはオンラインでのストリーミング配信や教材作成など、先生方の実現したいことのためには相応のスペックが必要になり、利用するアプリがいかに対応しているかも重視されてきているためとのことだった。「デル・テクノロジーズ」のブースではリモート環境を重視するビジネス向けの端末も展示された。

Chromebook 3100 2-in-1(デル・テクノロジーズ)
Chromebook 3100 2-in-1(デル・テクノロジーズ)

クラウド型学習支援システムでGIGAスクール構想を支える「シャープ」



 1人1台端末が整備される中、子どもたちの学習環境ではさまざまな取組みが始まっている。「シャープ」は個別最適な学びを実現するクラウド型の学習支援システム「インタラクティブスタディ」で、ひとりひとりの子どもの理解状況に応じた学習を支援。岐阜県教育委員会では県内約100,000人の小学生が算数の学習を進めているという。独自のクラウド環境を構築し、いつでもどこでも児童は自分のペースで学ぶことが可能で、先生はリアルタイムに理解度を確認できるため、きめ細かい個別指導を実施。サーバの維持管理も不要なため先生の負担も少ない。シャープのブースでは、電子黒板の「BIG PAD Campus」や辞書アプリの「Brain+」、輪番タイマー搭載充電保管庫など、学習を支える環境と先生の負荷を軽減するためのさまざまなソリューションが展示された。

インタラクティブスタディ(シャープ)
インタラクティブスタディ(シャープ)

 コロナ禍によるGIGAスクール構想の前倒しによって、小学校・中学校、さらには高校への1人1台端末の整備が進みつつあるが、さらに活用した学びが実現できているかという点では、地域や学校単位での差異が生まれている。学校と家庭でのICTを活用した学習環境の実現には、先生方の負担がいかに軽減できるかが重要だろう。継続したサポートを期待したい。
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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