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デジタルで就活支援「ビズリーチ・キャンパス」初の公認化は津田塾大学

 大学のキャリアセンターのデジタル化も急務となる中、津田塾大学が「ビズリーチ・キャンパス」を公認のOG訪問プラットフォームに認定。津田塾大学 学生生活課 課長の斉藤治人氏とビズリーチ執行役員の小出毅氏に「公認化」の背景などについて聞いた。

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大学のキャリアセンター利用に関するアンケート結果
  • 大学のキャリアセンター利用に関するアンケート結果
  • ビズリーチ 執行役員 新卒事業部 事業部長の小出毅氏(左)と津田塾大学 学生生活課 課長 斉藤治人氏(右)
  • ビズリーチ・キャンパスに込めた思い
  • ビズリーチ・キャンパスの特徴
  • ビズリーチ・キャンパスの特徴
  • ビズリーチ・キャンパスの特徴
  • 就職活動におけるOB/OGの位置づけ
  • 累計OB/OG訪問マッチング数の伸び
 今年の就職活動はコロナ禍の影響を強く受け、オンライン面接が導入されるなど、就職活動に臨む学生のとまどいも伝えられている。学生の就職活動を支援するキャリアセンターのデジタル化も急務となる中、創立120周年を迎えた津田塾大学が「ビズリーチ・キャンパス」を公認のOG訪問プラットフォームに認定。同サービスを利用すると、大学に足を運ばずにオンラインでOG訪問の依頼から訪問の実施が可能になる。

 ビズリーチ・キャンパスの公認化は、大学では津田塾大学が初となる試みだ。津田塾大学の学生生活課 課長の斉藤治人氏と、ビズリーチの執行役員で新卒事業部 事業部長の小出毅氏に、ビズリーチ・キャンパスの概要と津田塾大学による「公認化」の背景などについて聞いた。

ビズリーチ・キャンパスで「良質なお節介」



ビズリーチ 執行役員 新卒事業部 事業部長の小出毅氏(左)と津田塾大学 学生生活課 課長 斉藤治人氏(右)
ビズリーチ 執行役員 新卒事業部 事業部長の小出毅氏(左)と津田塾大学 学生生活課 課長斉藤治人氏(右)

 冒頭のサービス概要の説明で、小出氏はビズリーチ・キャンパスの特徴を「良質なお節介のサービス」とした。ビズリーチ・キャンパスを中心に、学生とOB/OG、大学の三者がつながることで、学生が自分の将来に希望がもてる、より納得感のあるキャリア選択ができるよう支援していくとした。「さまざまな価値観に触れながら、自分はどういう風に生きていきたいのかを考える。学業を続けながら少しずつキャリアについて考えていくことは、より良いキャリア選択につながる」と小出氏は話した。先輩や大学が、より良い可能性があることを学生に伝え続ける「お節介」。それがこのサービスの根幹となっている。

 現在のビズリーチ・キャンパスは、大学別のOB/OG訪問ネットワークといえるだろう。自分のキャリアを考えるうえで早い遅いはないという考えに基づき、学年を問わず通年で利用できる。開校している国内大学は、4年前のリリース当初の12から、現在は40大学。約6.3万人の学生、約3.8万人のOB/OGが登録する規模にまで拡大した。

 機能はシンプルで、学生が企業情報の検索からOB/OGひとりひとりのプロフィールを閲覧し、アポイントメントを取ることができる。登録しているOB/OGは、企業の人事部公認のOB/OGと、母校や学生の支援をしたいボランティアの2パターン。現在、商社やデベロッパーなどの企業でよく利用されているとのことで、たとえば三井物産では35歳以下の全社員をビズリーチ・キャンパスに掲載し、OB/OG訪問の際はビズリーチ・キャンパスから依頼しているという。

 OB/OGの登録内容は、必須の基本項目だけではなく、高校名やサークルなどのさまざまな項目をOB/OG側で登録可能。学生の中には、大学も高校も一緒という先輩により親近感をもって、話を聞きに行くケースがあるという。企業情報のマッチングだけではなく、学生が自身との接点からOB/OGを探すことができるのは大きな特徴といえよう。なお転職などの経歴も閲覧可能となっており、OB/OGのライフイベントを見ることができるのも学生のキャリア教育として有益といえよう。

 オンラインによるOB/OG訪問は、アプリ上でそのままビデオ通話が可能で、地方の学生や海外赴任している社会人でもつなぐことができる。安全・安心に利用できる対策も考えられており、ビデオ通話を発信できるのは学生からのみとなっている。また、何かあったときのためにビデオ通話は録音・録画。OB/OG側は原則、企業のルール内で対面面談が可能だが、現在はコロナ禍でほぼ対面はないという。またボランティア登録のOB/OGは、原則としてオンライン面談のみとなっている。

 ビズリーチ・キャンパスが調査したところ「キャリア形成にOB/OG訪問は役立つ」と回答した学生は9割以上。またビズリーチ・キャンパスの累計OB/OG訪問マッチング数は、去年から今年にかけて倍近くとなり、コロナ禍によって外出ができない中でのオンライン訪問も増加。4年前に比べると就職活動を通じて社会人に会うという選択をする学生は、増える傾向にあると考えられるという。

「ビズリーチ・キャンパス」公認化の背景



 小出氏によると、今年の11月、ビズリーチ・キャンパスに登録している2022年卒業予定の学生にコロナ禍での通学状況を聞いたところ、およそ7割の学生が週1回未満の通学にとどまっていることがわかったという。また所属している大学のキャリアセンターがOB/OG訪問のオンライン対応を実施しているかという質問に対しては、20%弱しか対応していないことが判明した。その一方で、「OB/OG訪問のオンライン化が進めば活用したい」と答えた学生は7割強。コロナ禍の続く中でOB/OGと学生をつなぐためには、オンライン化は急務と考えられる。

 今回の津田塾大学によるビズリーチ・キャンパスの公認化は、こうした学生の要望にマッチしたものだ。キャリアセンターに登録されているOG情報が「大学公認」としてビズリーチ・キャンパスに登録されるため、学生は大学公認という安心感を得られるとともに、キャリアセンターでの相談や情報閲覧の使い勝手も高まる。またキャリアセンターからのイベント情報なども届けられるという。

 小出氏は「自分自身で人生をこう生きたいという強い意志をもって社会に出て行ったOGが、社会人になって在学生の支援をするという好循環を作りたい。その中で1年生や2年生という早い段階でもキャリアを考えるきっかけを、学生に届けたい」と、1・2年生向けのイベント実施も視野にあると話した。

対面によるメリットをオンラインでも提供



 コロナ禍の影響拡大から、津田塾大学も学生が大学構内に入ることができない期間が長く続き、いまもなお、以前と同じ状況には戻れていないという。「学生にとって就職活動は必須です。そのためコロナ禍の始まった3月来、学生生活課ではどうオンライン化できるかに取り組んできました」と津田塾大学の斉藤氏は話す。津田塾大学の学生数は約3,200名で、そのうち就職活動をする学生は約700名。今あるツールをできるだけ組み合わせて学生に今までと同じレベルのサービスを提供できるように検討を重ねたという。

 キャリアセンターでのこれまでの就職支援では、Face to Faceによるきめの細かいサポートや、窓口や対面での対応を重視してきたという。ところがなかなか通学がかなわない中での最大の問題は、「OG訪問のための卒業生の個人情報の開示も対面でないとできないことだった」と斉藤氏。

 個人情報の開示については、それまでは学生が窓口で申請書に記入し、学生証で本人確認を行っていた。しかし大学構内へ入ることが制限されている中では、そうしたこともままならない。就職活動も佳境に入り、さらに学生からのOG訪問の要望が増える中、津田塾大ではビズリーチ・キャンパスに相談する機会を得た。

 斉藤氏は「企業にしても学生に会うことでコロナに感染することはリスクが高い。学生との面談を禁じている企業もあると聞いています。そうした状況でビズリーチ・キャンパスならば、オンラインで面談ができるうえ、ビデオ通話を録画するなど安全に安心して使える対策がある。ビズリーチそのものの知名度も高く、OGや在学生にも受け入れられやすいのもポイントで、今まで解決できなかったものがすべて解決できると判断しました」とビズリーチ・キャンパスを選定した理由を語った。

キャリアセンターのデジタル化は次のステージへ



 津田塾大のキャリアセンターでは、今後さらにデジタル化を進めていくという。キャリアセンターには企業の資料を含め大量の紙媒体があるため、これらがデジタル化されることも大きなメリットだ。また、今後も対面でのサービス提供が難しい局面が想定されるほか、留学中で日本にいない学生などの利用も考えられる。OG訪問の窓口をビズリーチ・キャンパスに1本化することを視野に入れ、今後は学生生活課が管理しているOGのデータベースを反映し、大学広報で卒業生を紹介したい場合の協力依頼における利用も検討しているという。

 学生の声を反映させた新たな取組みも始まっている。

 通学がままならず、学生同士でも情報交換できるつながりがなくなっているという声から、キャリアコンサルタントが中心となり、少人数の集まりで就職活動の状況や企業の情報をまったりと話ができる「オンラインカフェ」を提供。セミナーの告知や資料の共有のための、キャリアセンターのWebサイトも開設した。

 なお、ビズリーチ・キャンパスと2020年12月11日に共催予定のオンラインセミナーでは、OGを複数名招く。学生自身が働くことについて、これから先どのように考えて行けば良いかを考える機会にするのみならず、セミナー参加後にも、ビズリーチ・キャンパスを経由することで学生がOGとのコンタクトを取りやすくなるという。斉藤氏は「学生がOGとの繋がりをもてることは、学生自身がキャリア検討する中でとても大きなメリット」と語る。

 また斉藤氏は「来年も対面によるサービスには不確定要素が非常に大きいと思います。仮に対面でのサービスが再開した場合でも、オンラインの利便性を継続しつつ、対面のきめ細やかさを加えて、新たな就職支援の形ができればと考えています」と話した。

 キャリアセンターのデジタル化の端緒として、大きな期待が寄せられるビズリーチ・キャンパス。小出氏は「今、開校している40の大学とともに、より良いキャリアを考える機会を得て社会に出る人を増やしていきたい。教育や就職活動に対する考えも、各校少しずつ異なるので、ひとつひとつの大学に合った形での“公認化”を広げたいと考えています」と今後の展望を語った。

 津田塾大学とビズリーチ・キャンパスのコラボからは、コロナ禍で顕在化した課題に対して、どうしたらできるかを模索して解決策に動き、その先を見据えて進むことの大切さを痛感する。大学だけでなく、デジタル化を進める組織の多くに、事例として共有してほしいと感じた。
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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