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9月入学、日本教育学会「拙速な決定避けて」声明発表

 日本教育学会は2020年5月11日、「9月入学・始業」について拙速な決定を避け、慎重な社会的論議を求める声明を発表した。「コロナ禍で生じている問題」の解決策として性急に実施することに疑問を呈し、「拙速な導入はかえって問題を深刻化する」と危惧している。

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 日本教育学会は2020年5月11日、「9月入学・始業」について拙速な決定を避け、慎重な社会的論議を求める声明を発表した。「コロナ禍で生じている問題」の解決策として性急に実施することに疑問を呈し、「拙速な導入はかえって問題を深刻化する」と危惧している。

 日本教育学会は、教育学に関する学識経験を有する研究者が組織する団体。1941年に創立された教育関連でもっとも歴史のある学会で、現在約3,000人の個人会員が所属している。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のための休校が長期化する中、全国知事会が政府に9月入学導入を検討するよう要請し、安倍晋三首相が国会で「選択肢のひとつとして検討する」と答弁するなど、9月入学問題が急浮上。日本教育学会は「9月入学・始業」について、時間をかけた丁寧な社会的論議が必要との考えから、政府に対して拙速な導入を決定しないよう求める声明を発表した。

 声明では、「勉強の遅れと受験への不安や部活動や行事などの貴重な学校生活の時間を削減しないでほしい」という子どもたちの声、保護者や教師が抱く心配などに「真摯に耳を傾けることが求められる」と理解を示した。そのうえで、9月入学が問題解決にどれほど有効なのかと疑問を投げかけ、「それどころか、9月入学・始業の導入は、状況をさらに混乱させ、悪化させかねない」と指摘している。

 9月入学・始業については、これまでも検討され、メリット・デメリットなどが指摘されているとし、「問題は、これを『コロナウイルス禍で生じている問題』の解決策として性急に実施するということ」と強調。9月入学・始業への変更による影響として、「義務教育開始は一番高い年齢で7歳5か月と世界でも異例の高年齢になる」「4月から8月までの5か月間の学費分の空白は、私立大学だけでも1兆円近くになる」などをあげた。

 さらに「そもそも、コロナウイルス禍で学校でも社会でもさまざまな支援が緊急に求められているときに、教育の実質的保障に使うべき、限られた財源と人員を割いてでも9月入学・始業を直ちに実施することが果たして必要か。9月入学に議論を集中させることで、いま対応すべき重要な他の諸問題を見過ごすことも危惧する」と述べている。

 日本教育学会ではあわせて、休校による子ども、保護者、教職員の不安や心配の声に応える実効性ある対策を大至急検討し講じていくことも要求。日本教育学会内に特別委員会を設置し、検討すべき課題の洗い出しを行っており、近日中に緊急提言を公表する予定としている。
《奥山直美》

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