ベネッセコーポレーションは2026年8月20日、運営するフリースクール「ベネッセ高等学院 中等部」において、ベネッセ教育総合研究所と連携して実施した、生成AIを活用した不登校生徒の主体的な学びを支援する実践研究の成果を公表した。AIからのフィードバックによって、生徒が日々の計画や振り返りを記述することを後押しできる可能性が示された。
小・中学校における不登校児童生徒数が増加する中、多様な学びの充実や、ひとりひとりに応じた学習支援の重要性が高まっている。一方、個々の生徒にきめ細かな支援を継続して行うには、時間や体制面での課題もある。
こうした背景から、ベネッセ高等学院 中等部では、個別最適な支援を補完する手段として生成AIに着目。AIを、生徒が自分で考え始めるための「伴走者」と位置づけ、日々の計画や振り返りを支援する実践研究に取り組んだ。
研究は2026年6月22日から7月3日まで、ベネッセ高等学院 中等部の生徒92人を対象に実施した。生徒が日々の心のようすや計画、振り返りを記録する「Be ログ」に生成AIを組み込み、AIの応答内容によって3つのグループに分けて、記述内容の違いを検証した。
グループは、AIが定型の挨拶のみを返す「挨拶のみ群」、生徒の記述内容に応じたヒントを示す「ヒント提示群」、生徒の記述内容に応じた例文を示す「例文提示群」の3つ。
研究の結果、AIがヒントや例文を提示したグループでは、計画や振り返りを記述できた日の割合が高くなった。特に夕方の振り返りでは、「挨拶のみ群」が64.6%だったのに対し、「ヒント提示群」は94.3%、「例文提示群」は94.6%となった。
振り返りの具体性にも違いがみられた。「その日に何をしたか」を具体的に記述できた日の割合は、「挨拶のみ群」が53.7%だったのに対し、「ヒント提示群」は76.8%、「例文提示群」は84.2%だった。
さらに、「集中できた」「途中で疲れてしまった」など、自身の状態や取組み方を振り返る「自己モニタリング」を記述できた日の割合も、「挨拶のみ群」の54.0%に対し、「ヒント提示群」は74.8%、「例文提示群」は76.5%となった。
これらの結果から、記述内容に応じたAIのフィードバックが、生徒自身の出来事や状態を言葉にするきっかけとなった可能性が示された。
今回の実践は、不登校を経験した生徒が自ら目標を立て、行動を調整し、振り返りながら次の行動につなげる「自己調整」の力を育むうえで、生成AIが計画や振り返りを支援できる可能性を示唆するものとなった。
一方で、ベネッセでは生徒支援をAIだけに任せるのではなく、教職員が生徒の取組みや状態を見取り、必要に応じて人による支援につなげることが重要だとしている。
ベネッセ高等学院 中等部の学院長を務める上木原孝伸氏は、「何から始めればいいかわからない」「振り返ろうと思っても言葉にならない」という生徒の姿を日々目にするとしたうえで、「子供たちが自分の気持ちや行動を少しずつ言葉にし、『今日はこれをやってみよう』『次はこうしてみよう』と、自分で次の一歩を考えられるようになることが大切」と指摘。生成AIについて、「その最初の一歩を後押しできる可能性を感じました」とコメントしている。
また、「子供たちの小さな変化に気付き、不安や迷いに寄り添いながら励ますことは、私たち教職員の役割」とし、「AIが担えること、人だからこそ担えること」の双方を生かしながら、ひとりひとりが自分のペースで学び、自ら未来を選べる力を育む支援のあり方を追求していくとしている。
ベネッセ高等学院 中等部では、今回の実践を通じて、人とAIがそれぞれの強みを生かしながら、生徒ひとりひとりの主体的な学びを支える新たな支援のあり方を検証し、今後の運営に生かしていく。
なお、ベネッセは2026年8月30日、ICT CONNECT21が主催する「多様な学びカンファレンス 2026」に参画する。同カンファレンスでは、今回の実践研究をもとにパネルディスカッションを実施し、不登校児童生徒の主体的な学びを支えるAI活用の可能性について議論する。研究に参加した生徒も登壇する予定。














