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【教師への扉】教員採用試験はどう変わるのか? 一般教養縮小とSPI導入、面接重視の時代

 「教師への扉」は、中学校・高等学校での教員経験を経て、現在は大学で教員養成に携わる渡辺朗生氏による寄稿。今回のテーマは、「教員採用試験はどう変わるのか? 一般教養縮小とSPI導入、面接重視の時代」。

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 教育に関わるすべての人の視点や問いを広く取りあげ、これからの学びをともに考えていく。リシードでは、寄稿連載を通じて、教育実践や研究に根ざした知見を紹介する。

 「教師への扉」は、中学校・高等学校での教員経験を経て、現在は大学で教員養成に携わる渡辺朗生(ときなり)先生による寄稿。現場と研究を往還する視点から、実践に根ざした示唆と理論的な裏付けをあわせて提示していく。

 今回のテーマは、「教員採用試験はどう変わるのか? 一般教養縮小とSPI導入、面接重視の時代」。


 大学教員として教員養成に携わっていると、学生から教員採用試験について「筆記試験はどこまで勉強すれば良いか」「面接では何がみられるのか」と尋ねられることが少なくありません。かつては教職教養、一般教養、教科専門科目等の試験に向けて知識を積み上げることが対策の中心でした。

 しかし最近では、自治体によって一般教養や教職教養を縮小・廃止したり、SPIなどの外部試験を取り入れたりする一方で、面接や模擬授業、場面指導を重視する動きがみられます。教員採用試験は、知識の量だけでなく、その知識を学校現場でどのように生かせるかを多面的に確かめる選考へと変わりつつあります。

筆記試験中心の構成から選考方法の組合せへ

 先述のとおり、従来の教員採用試験では一般教養、教職教養、教科等の専門知識を問う筆記試験が大きな比重を占めてきました。一般教養では国語、数学、理科、社会、英語、時事問題などが扱われ、教職教養では教育原理、教育心理、教育法規、教育史などが出題されます。これらは、教師として働くうえで必要となる基礎的な知識や幅広い教養を確認する役割を果たしてきました。

 現在も筆記試験を重視する自治体は多く、専門知識の必要性が低下したわけではありません。しかし、教員採用試験の内容や選考方法は全国一律ではなく、自治体が求める人材像や選考方針に応じて、試験科目を組み替える傾向が強まっています(2027年度に実施する教員採用の1次試験で共通問題の導入を開始する自治体もありますが、このことは別稿でご紹介しようと思います)。文部科学省も、教養・専門の筆記試験だけでなく、面接、実技、作文・小論文、模擬授業などを組みあわせ、受験者の資質・能力や適性を多面的に評価する選考の実施状況について示しています。つまり、現在の変化は筆記試験を一律に軽くするものではなく、「何を筆記で確認し、何を面接や実技で確かめるのか」を再整理する動きと捉える必要があるでしょう。

一般教養・教職教養の縮小が意味するもの

 その一例が、一般教養や教職教養の見直しです。たとえば茨城県では、2022年度採用の教員選考試験から第1次試験の一般教養試験を廃止しています。さらに、2026年度採用の選考では教職教養試験も廃止し、第1次試験を専門教科・科目、第2次試験を個人面接や模擬授業等とする構成へ改めています。このように、従来は独立した試験科目として実施されてきた内容を整理し、専門性や実践的な対応力の評価へ重点を移す自治体も現れています。

 もっとも、一般教養や教職教養が縮小・廃止されたからといって、教員に一般的な知識や教育法規の理解が不要になるわけではありません。学校では教科指導だけでなく、安全管理、人権、個人情報、特別支援教育、いじめや不登校への対応など、幅広い判断が求められます。教員採用試験においても、筆記試験の科目として課されていない内容であっても、面接や場面指導の前提知識として必要になる場合があります。受験者にとっては、「出題されないから学ばなくて良い」と考えるのではなく、試験で直接問われる知識と、教員として備えておくべき基礎知識とを分けて捉えることが大切です。

SPI導入は教員採用試験をどう変えるか

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 新しい動きとして注目されるのが、SPIなどの外部試験の活用です。茨城県では、2026年度採用の選考において、全国のテストセンターやオンライン会場でSPI3を受検できる特別選考を新設しました。同様の取組みは東京都や埼玉県、岡山県などでも進められています。SPIは民間企業の採用で広く活用されており、能力検査と性格検査によって、職種を問わず求められる基礎的な能力や行動の特徴を把握するものです。そのため、教員採用試験のためだけに作られた問題とは異なり、民間企業との併願者や社会人経験者にも受検しやすい方式といえます。

 一方で、SPIだけで教科の専門性や授業づくりの力、子供への理解、教育法規の知識まで十分に評価できるわけではありません。そのため、SPIの導入は従来の教職教養試験を単純に置き換えるものというより、基礎的な能力を共通の方法で確認し、教員としての専門性や適性は別の選考方法で評価するという役割分担と捉えることができます。今後、SPIを採用する自治体が増えていくのであれば、何をSPIで測定し、何を専門試験や面接で評価するのかを明確にすることが重要になるでしょう。

面接・模擬授業で何が評価されるのか

 筆記試験の見直しと並行して、選考の中心的な位置を占めているのが人物評価です。文部科学省の2023年度調査では、調査対象となった68の都道府県・指定都市等のすべてが個人面接を実施していました。また、模擬授業は41自治体、場面指導は30自治体で実施されており、知識だけでは測りにくい実践的な指導力や対人対応力を確認する選考が広く行われています。

 背景には、教員に求められる資質・能力の広がりがあります。文部科学省は、教員に共通して求められる資質・能力を、「教職に必要な素養」「学習指導」「生徒指導」「特別な配慮や支援を必要とする子供への対応」「ICTや情報・教育データの利活用」の5つに整理しています。さらに、コミュニケーション、連携・協働、マネジメントは、これらを横断的に支える要素とされています。こうした力は択一式の筆記試験だけでは把握しにくいため、面接や模擬授業、場面指導などを通して評価する必要があります。

 大学で学生の面接指導に携わっていると、教育に関する知識をもっていても、「なぜそのように対応するのか」「子供のどのような姿を想定しているのか」を具体的に説明するのに苦労する学生が少なくありません。また、模範的な回答を準備していても、自身の教育実習や学校ボランティアでの経験と結び付いておらず、質問の切り口が少し変わるだけで答えに詰まってしまう場合もあります。人物重視とは、明るさや話し方だけを評価することではありません。経験を踏まえて根拠をもって判断できるか、自分の考えを相手にわかりやすく伝えられるかが問われています

選考方法改革の課題

 選考方法の多様化には、受験者ひとりひとりの強みを捉えやすくなるという利点があります。一方で、いくつかの課題もあります。まず、自治体によって試験科目や配点が大きく異なり、同じ面接や模擬授業といった名称であっても、評価の観点や方法が同じとは限りません。また、面接では評価者の主観が入りやすいため、評価基準を明確にするとともに、複数の選考方法を組みあわせて公平性を確保する必要があります。さらに、筆記試験の比重を下げすぎると、教科の専門性や教育制度に関する基礎知識をどのように保証するのかという課題も生じます。

 したがって、冒頭で示した「知識重視から人物重視へ」という変化は、知識か人物評価かという二者択一で捉えるべきではありません。知識は授業や生徒指導を支える土台であり、人物評価は、その知識を子供の状況に応じて適切に活用できるかを確かめるものです。採用する側には、多面的な評価を行うと同時に、選考基準や求める教員像を受験者へわかりやすく示すことが求められています。

受験者はどのように備えるべきか

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 選考内容が多様化する中で、まず必要なのは、志望する自治体の最新の実施要項を確認することです。教職教養や一般教養の有無、専門試験の範囲、SPIの活用状況、面接や模擬授業の方法、配点などを整理することで、準備の優先順位が明確になります。複数の自治体を受験する場合は、共通する内容と自治体ごとに異なる内容を分けて整理しておくと効率的です。

 筆記試験対策では、専門教科を中心に過去問題に取り組み、出題分野と自分の弱点を把握することが重要です。誤答した問題は、正解を確認するだけでなく、関連する学習指導要領や教育法規まで振り返ることが大切です。一般教養や教職教養が縮小・廃止された自治体であっても、生徒指導や特別支援教育、教育課程に関する基礎知識は、面接や場面指導で判断の根拠を説明する際に役立ちます。

 SPIが課される場合には、言語分野・非言語分野の出題形式を把握したうえで、時間を計りながら練習することが有効です。特に非言語分野は、1問に時間をかけすぎないよう、基本的な解法に慣れておく必要があります。また、テストセンターやオンラインなどの受験方法、予約期間、受験期限も早めに確認しておくことが大切です。

 模擬授業では話し方だけでなく、授業のねらいや発問、予想される児童生徒の反応、つまずきへの支援、学習成果の確認方法までを準備します。実際に声に出して練習し、録画によって視線、話す速さ、板書、発問を確認したり、他者から助言を受けたりすることが改善につながります。

 このように、これからの教員採用試験では、知識を身に付けるだけでなく、それを教育場面でどのように生かすかを示すことが求められています。試験内容を把握したうえで、知識の習得、経験の振り返り、教育課題への理解、実践的な練習を計画的に積み重ねることが重要です。

《渡辺朗生》

渡辺朗生

 宇都宮大学共同教育学部助教。山口県中学校・高等学校教諭などを経て現職。博士(教育学)。研究分野は教科教育学、初等中等教育学、生活科学など。

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