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小学校の教科担任制で学力はどう変わる?…エビデンス公開

 経済産業研究所(RIETI)は2025年12月3日、日本の教育現場において教科担任制の因果効果を検証した初の研究となる「専科教員配置が学力に与える効果」を公表した。

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専科教員配置が学力に与える効果
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 経済産業研究所(RIETI)は2025年12月3日、日本の教育現場において教科担任制の因果効果を検証した初の研究となる「専科教員配置が学力に与える効果」を公表した。

 この研究は、従来の学級担任制を維持しつつ、特に高い専門性が求められる教科(算数・理科)に追加的に非常勤教員を配置することで学級担任制と教科担任制の良さを両立させることを目的としたもの。専科教員には定年退職した元教員を中心に豊富な経験のある教員を採用している。

 調査対象は、千葉県の小学校60校。対象校を理科専科教員の配置校、算数専科教員の配置校、専科教員配置なしの学校の3グループに分け、専科教員を配置した場合の学力への影響を、クラスターランダム比較試験(RCT)によって分析。学力や非認知能力の変化を比較している。

 調査の結果、理科の専科教員を配置した学校では、理科の学力が統計的に有意に向上したほか、算数の学力や非認知能力にも正の影響が確認された。一方、算数専科教員の配置については、算数、理科ともに明確な学力向上効果は見られなかった。さらに国語の学力にも影響を与えなかったという。

 一方、担任教員の勤務時間を減らすといった効果は、専科教員の配置では認められなかったが、担任教員の成長マインドセットが高まる傾向は見られたとしている。

 研究グループは、理科のように専門性が高く、多くの教員が指導に不安を抱えやすい教科では、経験豊富な専科教員の活用が特に有効だと指摘。教科担任制の導入にあたっては、教科の特性を踏まえた制度設計が重要になるとしている。また、理科専科教員の配置による学力向上効果は、少人数学級政策と比べて同等の成果を約12分の1の費用で達成でき、費用対効果の高い教育施策であることが示された。今後は、専科教員と担任教員の協働や教科横断的な学習とのバランスを踏まえ、教科担任制のより実効的な運用モデルを検討する必要があるとしている。

 教科担任制は、2022年度より全国の小学校高学年で本格的に導入され始め、文部科学省は小学校中学年への制度拡大も視野に入れている。しかし、教科担任制に関する日本国内の実証研究はほとんどなく、政策的な意思決定を支えるエビデンスは限られてきた。さらに、海外で行われた実証研究では、教科担任制の導入が児童の学力や行動に負の影響を与えるという結果も報告されており、その有効性については議論が続いている。

《川端珠紀》

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