文部科学省は2025年11月18日、主要国の教育施策や制度改革をまとめた報告書「諸外国の教育動向2024年度版」(教育調査第163集)をWebサイトに公表した。対象国はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、韓国の6か国、およびそのほかの国・地域で、2024年度における教育政策・行財政、生涯学習、初等中等教育、高等教育、教師に関する主要な動きを体系的に整理している。教育関係者や政策担当者が各国の教育改革の方向性を把握するための基礎資料として位置付けられている。
「諸外国の教育動向2024年度版」は、文部科学省総合教育政策局が毎年取りまとめる「教育調査」シリーズの最新刊で、1947年から続く第163集にあたる。各国政府の公式資料や報告書、新聞・専門誌などをもとに、教育分野の最新動向を分野別に解説している。特に2024年度は、AI(人工知能)の教育活用、デジタル教育の推進、教員確保といった共通課題への取組みが各国で進んでいることが特徴として示された。
アメリカでは、バイデン政権下で教育省予算が前年比4%増となり、就学前教育の拡充や個別指導の普及、AIを利用した教育支援ツールの開発が進展した。一方、2024年11月の大統領選挙では共和党のトランプ氏が再選し、教育省の解体や学校選択制度の推進など、教育政策の方向転換が注目されている。イギリスでは労働党政権が14年ぶりに発足し、教育省がより高い水準の教育などを提供するべく、同省初の「科学諮問委員会」を設立。AIやEdTechの活用を軸に「教育のデジタル革命」が掲げられ、教師不足対策として新たな奨励金制度を打ち出したほか、6,500人の教師を新たに採用する拡充策が打ち出された。
フランスでは、政治的混乱の中で国民教育省と高等教育・研究省の再編が行われた。初等中等教育分野では、児童生徒を1人も取り残さないことが優先事項としてあげられ、基礎的知識の習得や格差解消を図るための施策に取り組んでいく方針が示された。ドイツでは、社会経済的に不利な状況におかれた児童生徒を重点的に支援する「スタートチャンス・プログラム」が始動。10年間で総額200億ユーロ(約3兆2,000億円)を投じ、教育格差の是正と学校環境の改善を図る取組みが進められている。
このほか、中国ではAI教育や職業教育の拡充、韓国では少子化対応や学校教育の質向上策などが紹介されている。文部科学省は、同報告書について「諸外国の教育動向を理解し、今後の政策立案に資する基礎資料として活用してほしい」としている。詳細は文部科学省Webサイトで閲覧できる。







