大日本印刷(DNP)は2025年11月、学校のテスト分析を中心に紙とデジタルの学習データを統合・可視化する新たな「教育データ活用サービス」の提供を開始する。同サービスは、自治体の教育データ基盤などと連携し、教師の学習指導と児童・生徒の主体的な学びを支援することで、ひとりひとりに合わせた多様な学びの提供につなげる。
文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」により、全国の学校で1人1台の端末環境が整備され、教育データを活用した個別最適な学びへの期待が高まっている。一方で、2025年6月公表の「教育DXロードマップ」では、児童・生徒の6割以上が自律的な学びに自信がないと回答しており、課題が浮き彫りになった。また、教師の業務効率化とデータ利活用による業務の質的向上も求められている。
こうした背景のもと、DNPはこれまで文部科学省などの実証事業や複数の自治体との教育データ利活用研究に参画し、延べ10万人以上のテスト結果を分析してきた。その中で、テストデータの分析が児童・生徒の自律的な学びを促すうえで効果的であることや、テストを軸にデジタル教材や紙のワークシートなどを統合的に可視化したいという現場の教師からのニーズを受け、新サービスの開発に至った。
同サービスの特長の1つ目は、テスト結果分析を軸に紙とデジタルの学習記録を統合・可視化できる点だ。教師が作成した定期テストの設問属性を解析し、項目反応理論(IRT)などの手法を用いて、児童・生徒の強み・弱みの領域を分析する。さらに、デジタルドリルのデータや、紙のノート、ワークシート、成果物の画像といった日常の学習データも取り込み、一元的に可視化する。
2つ目は、児童・生徒の振り返りと学習計画づくりを支援し、自律的な学びを促す機能だ。児童・生徒は、サービスを通じて「どの分野をどの程度理解しているか」「優先的に見直すべき問題はどれか」などをデータで確認できる。日々の学習も振り返ることで、自発的な復習や次の学習計画づくりに生かすことが可能だ。また、「どこでつまずいたか」「次にどう取り組むか」を記録し、教師に提出すると、教師はコメントやスタンプでフィードバックを返すことができ、児童・生徒の自律的な学びを後押しする。今後は教材会社とも連携し、ひとりひとりの強み・弱みに基づいた復習問題なども提供する予定だ。
3つ目は、教師の学習指導を支える分析ツールとしての側面だ。教師は、児童・生徒ごとのテスト分析結果と日常の学びとの関係性、理解度の推移、振り返りの内容など、個別指導や面談で活用できる具体的なデータを確認できる。これにより、時間的な制約などから難しかった、個々の児童・生徒の変化に寄り添った声掛けなどがしやすくなる。
同サービスは、DNPが提供するデジタル採点システム「DNP学びのプラットフォーム リアテンダント」とも接続する。同システムは全国で累計約4,200校に採用されている。
また、DNPはレノボ・ジャパンやパートナー企業と連携し、レノボのGIGAスクール端末にさまざまな学習コンテンツを提供している。今後は、同サービスと連携し、テスト結果の分析を軸に各種学習履歴も可視化することで、指導への活用を促す。連携する学習コンテンツの例としては、新学社の「単元まとめチェック」や、ポプラ社の電子図書館「Yomokka! Lenovo GIGA School Edition」、DNPの「Lenovo Metaverse School(学級閉鎖パッケージ)」などがある。
同サービスはすでに、神奈川県相模原市の一部学校など、政令・中核市を含む全国12自治体で、児童・生徒約5万5,000人を対象に実証を開始している。今後、対象を順次拡大していく予定で、すでに複数の自治体で導入が決定している。
DNPは、文部科学省が推進する「教育データ標準」ワーキンググループにも参加しており、今後も学習eポータルや教材会社などのパートナーと共創し、データの相互運用を通じて国・自治体・学校の教育DXに貢献していくとしている。







