科学技術振興機構(JST)と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2025年8月21日、「大学発ベンチャー表彰2025~Award for Academic Startups~」の受賞者を発表した。大学発ベンチャー6社とその支援大学・支援企業が選出された。
「大学発ベンチャー表彰」は、2014年度に開始した表彰制度。大学等の研究開発成果を活用して起業したベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーと、特にその成長に寄与した大学や企業等を表彰する。2017年度からは、若手経営者の挑戦を支援しようと、経営者が40歳未満かつ設立後3年以内の企業を対象とした「アーリーエッジ賞」を設けている。
2025年度は、4月1日から5月12日に募集し、41件の応募があった。外部有識者で組織する「大学発ベンチャー表彰2025」選考委員会による応募書類審査と面接審査を経て、大学発ベンチャー6社とその支援大学・支援企業の受賞を決定した。
このうち、文部科学大臣賞は、AI管理アプリによる重症患者を中心とした遠隔ICUを提供する、横浜市立大学発医療TechベンチャーのCROSS SYNC(支援大学は横浜市立大学附属病院 集中治療部、支援企業は日本政策投資銀行)が受賞。生体データと画像解析を活用した独自の遠隔ICUは、医療現場の人手不足緩和が期待されており、今後他社との連携を通じた社会実装へと拡大が進む可能性が評価された。
経済産業大臣賞は、DX支援によるAI構築・導入およびAISaaSプロダクトを提供する、東京大学発のAIスタートアップ燈(支援大学は東京大学 大学院工学系研究科)が受賞。製造・建設・物流業に特化したDXプロダクトは、日本の現場業務や商習慣にマッチした柔軟な設計で、即戦力となるサービスを提供。人手不足や業務の属人化といった構造的課題に対応し、業界全体の効率化と働き方改革に貢献する現場密着型のプロダクト開発と実践的経営が評価された。
科学技術振興機構理事長賞には、東京大学発の宇宙スタートアップ、アークエッジ・スペース(支援大学は東京大学 大学院工学系研究科)が選出。リモートセンシング、IoT通信、月面インフラ・深宇宙探査など、幅広い用途に対応可能な衛星を開発しており、今後、次世代衛星ネットワークの構築や途上国における通信サポートなど、グローバルに寄与する可能性が期待されている。
そのほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構理事長賞に、IMRTに対応したAI放射線治療計画ソフトウェアの開発を行う東北大学発のスタートアップ、アイラト(支援大学は東北大学 産学連携機構 スタートアップ事業化センター、支援企業は地域と人と未来)、日本ベンチャー学会会長賞に東京科学大学発のJij(支援大学は東京科学大学 イノベーションデザイン機構)、大学発ベンチャー表彰特別賞に東京科学大学発のLogomix(支援大学は東京科学大学 生命理工学院、支援企業はStartX)が選出された。なお、アーリーエッジ賞の受賞はなかった。
「大学発ベンチャー表彰2025」の受賞者一覧は、JSTやNEDO、文部科学省、経済産業省のWebサイトに掲載。JSTの公式Webサイト「大学発ベンチャー表彰」では、受賞企業の会社概要や受賞理由なども紹介している。