文部科学省は2025年6月11日、自殺対策基本法の一部を改正する法律の公布について、全国の学校設置者に通知した。小中高生の自殺者数が増加傾向にあることを受け、基本理念に子供の自殺対策は社会全体で取り組むことと明記し、学校の責務も明らかにしており、2026年4月1日に施行される。
自殺対策基本法の一部を改正する法律は、第217回国会で成立し、6月11日に公布。一部を除き、2026年4月1日に施行されることになった。
2006年に自殺対策基本法が施行されて以降、日本の自殺者の総数は減少傾向にあるものの、依然として年間の自殺者数は2万人を超えており、特に子供の自殺者数が増え続けている。改正の背景には、2024年の小中高生の年間の自殺者数が過去最多の529人になるなど、極めて憂慮すべき状況がある。
今回の改正では、子供に係る自殺対策について「社会全体で取り組むことを基本として、行われなければならない」と明記。「学校は、基本理念にのっとり、関係者との連携を図りつつ、子供の自殺の防止等に取り組むよう努めるものとする」と、学校の責務を明らかにしている。また、基本的施策を拡充し、地方公共団体が子供の自殺防止等のための協議会を設置できると盛り込んでいる。
このほか、基本理念には、自殺対策についてデジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術、人工知能関連技術等の適切な活用を図りながら展開されるようにすると追加。自殺の防止においては、インターネット等を通じて流通する自殺に関連する情報が及ぼす影響に関する配慮のための取組みの促進に特に留意することも明記している。
文部科学省が6月11日に全国の教育委員会などに出した通知では、基本理念の追加など、法律の概要をあらためて解説。所管の学校や域内の教育委員会、関係機関・団体などに対し、周知を図るよう求めている。