文部科学省は2024年9月2日、いじめの重大事態の調査に関するガイドラインの改訂について公表した。改訂により、重大事態調査への学校や関係者の対応をより明確化。各自治体教育委員会や学校設置者に対し、改訂内容を踏まえて円滑かつ適切な調査の実施と、いじめを受けた児童生徒に寄り添った対応を行うよう通知した。
文部科学省は、2017年3月にいじめにより児童生徒が生命・心身または財産に重大な被害が生じた疑いがある「重大事態」の調査を適切に実施するため「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(以下、重大事態ガイドライン)を策定。
しかしながら、重大事態の発生件数は増加傾向にあり、2022年度には過去最多の発生件数に。2013年のいじめ防止対策推進法の施行から10年が経過していることに加え、平時からの学校と設置者の連携不足による対応の遅れ、事前説明不足による調査開始後の保護者とのトラブル、重大事態調査報告書から事実関係の認定や再発防止策が読み取れない、といった事例が存在していることから、重大事態ガイドラインの改訂に踏み切った。
今回の改訂では、「重大事態の発生を防ぐための未然防止・平時からの備え」「学校等のいじめにおける基本的姿勢」「児童生徒・保護者からの申立てがあった際の学校の対応」「第三者が調査すべきケースの具体化と、第三者と言える者の例示」「(加害児童生徒を含む)児童生徒等への事前説明の手順、説明事項を詳細に説明」「重大事態調査で調査すべき調査項目を明確化」の大きく6つの事項について、追記などを行った。
たとえば、「学校等のいじめにおける基本的姿勢」については、重大事態の調査の際は、詳細な事実関係の確認、実効性のある再発防止策の検討等の視点が重要であること。犯罪行為として取り扱われるべきいじめ等であることが明らかであり、学校だけでは対応しきれない場合は直ちに警察への援助を求め、連携して対応することが必要であること、などが明記された。
また、「児童生徒・保護者からの申立てがあった際の学校の対応」については、児童生徒・保護者からの申立てがあったときは、重大事態が発生したものとして報告・調査等にあたること。学校がいじめの事実などを確認できていない場合には、早期支援として必要に応じて事実関係の確認を行うこと。いじめが起こり得ない状況が明確であるなど、重大事態にあたらないことが明らかである場合を除いては、重大事態調査を実施すること、といった内容が追記されている。
文部科学省は、各教育委員会や都道府県知事、学校設置者に対して、所管の学校へ十分に周知するとともに、いじめ問題への取組みを一層強化するよう求めた。重大事態ガイドラインの改訂については、文部科学省のWebサイトで確認できる。